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30代ニートが就職先を斡旋されたら異世界だった件。  作者: りんご
第四章 戦いは唐突に
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じゃがいものG


 ◇◇◇


「そっちに行ったよ!」


 草の匂いが香り、走り抜けていく風が気持ちいい。

 はぁはぁ、とすぐに息が上がる。

 駆け足なんて、普段まったくしていないから、すごい苦しい。


 サーシャさんの声が遠くからする。

 ターゲットの近くには、フランさん。


「もらった! ……はにゃ?」


 ダイブして飛びかかったようだけど、逃げられた模様。

 そのフランさんのいる方向から、草むらをがさがさと揺らして、小さい気配が走ってくる。

 ……こっちに、きた!


「今だ!」 


 タイミングよく飛び出してきたウサギを、捕まえる。

 やったぞ! 


 ぐさり。


 いてぇっ!?

 こいつ、突付いてきたぞ!

 じたばたじたばたと、ウサギがさらに足掻きまくる。

 鍛え上げられた両足でキックを連発。俺はサンドバックになった。

 

「ああっ」


 つい手を離してしまった。

 ぴょん、と俺をバカにするように着地し、逃げ出そうとする。


「あんまり暴れないの」 


 サーシャさんが、すくい上げるように、ウサギを抱き上げた。

 ウサギは、そこが自分の居場所だったみたいに、まったく抵抗しない。

 あのやろう、くつろいでいやがる。ぜったい、オスだな。


「いやー見事見事。さっすがだね」


 ぱちぱち、とフランさんが拍手した。 

 俺の受けた仕事。

 いなくなったペットを捜す、という簡単そうな仕事だと思ったが、これが大変だった。

 飼い主さんの家の周りは、草原やら畑やらの密集地帯。

 捜索範囲が異常に広くて、もうリタイアしてもいいよね、と思っていたところでフランさんが、くんくんと鼻を鳴らして。


「……んー、あっちのほう?」


 あさっての方向を指差した。

 めちゃくちゃテキトーぽかったので、まったく信じていなかったけど、見事、ターゲットを見つけてくれた。


「フランさんが居場所を見つけてくれたお陰で助かりましたよ」

「にゃはは。いいってことよー」


 さすがは人間の嗅覚100倍のと言ったところか。

 彼女が首に下げているギルド証が、首輪みたいにきらりと自慢気に光った。

 ネコって、ああいうの良くしてるよね。


「フランさん、冒険者だったんですね」

「そだよー。Eランク冒険者」

「E? ランク?? なんですかそれ」

「知らんの? サっちんは?」


 サっちんってのは何だ。

 サーシャさんのことか?

 マアトお嬢に、サっちんに、変態と書いておにいさん。

 どんな面白メンツだ。


「興味ない」

「自分のランクくらいは知ってるっしょ?」

「たぶん、G」

「初期じゃん……」


 まるで成長していない……とでも言いそうだった。


「ランクは、ギルドでクエストをこなしていくと、上がっていく。

危険度の高い討伐クエストを達成すると、ランクがひとつ上がるんだ。

Sが一番高いけど、こうなると、もう、伝説の英雄クラスだね。

ちなみに、あたしの『竜喰らい』様は、Aランクの冒険者だと思われる。

名前を聞いたことはあったけど……あんな格好いい人だったなんて知らなかったなぁ」


 またフランさんが、妄想に走り始めた。いかん、止めないと。


「ランクが低いと何か、問題があるんですか?」

「大有りだよ、冒険者の沽券に係わるからね。できるだけ高い方がいいんさ」

「そうなんだ」


 サーシャさんは気にして無さそうだったが、フランさんは気にしてるのかな。


「え、じゃあ、このなかだと、あたしが一番ランク高いの? あたし、リーダー?」

「そうですかね」

「うん、リーダーだと思うよ」

「リーダー……えへへ……やろうどもぉ、あたしについてくるにゃー!」


 張り切ったが浮ついて、スッ転んだ。

 心配して駆け寄ると、膝から血が出ていた。

 

「いたた」

「だいじょうぶですか」

「うー、すりむいたー」


 フランさんが涙目になっている。


「ケガしたの?! マアトがたすける!!」


 マアト、嬉しそうだな。

 魔法が使えるのがそんなに嬉しいのかな。嬉しいんでしょうね。あの極上の笑顔を見ればわかるよ。


……」

「こーら。擦りキズに、そんなの使わないの」


 呪文詠唱をサーシャさんに遮られて、ふくれていた。

 サーシャさんが手当てをしていた。

 フランさんはそれにいたく感激したようだ。


「魔術は、真似するだけでできるんだ。マアト嬢にもできたんだ。あたしにもできる! むーん、ファイヤー」


 フランさんが、破ァーとか言って、妙なポーズを取っていた。

 構えだけはしっかりして見える。

 当たり前だが、なにも起こらなかった。


「……MP切れかにゃ?」


 首を傾げていた。

 それは、ない。




ランクについてですか?

こんな感じですよ。


G:じゃがいも

F:じゃがいもに芽がでた程度

E:育ってきたんじゃない?

D:土に埋めよう

C:立派に根を張った

B:収穫!

A:すごいじゃがいも

S:まぼろしのじゃがいも


わからない?

そうですか、そうですよね……。

ときに、牛肉と馬鈴薯って話、ご存知?


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