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30代ニートが就職先を斡旋されたら異世界だった件。  作者: りんご
第三章 影に射さぐ。
37/96

疲れた身体に今後のことを。

街 → ギルド → 宿 → 温泉 → 就寝・回想


 の5場面を1つにまとめてあります。


 ◇◇◇

 

 暗い洞窟から街に戻り、多くの人で賑わう明るい市場を見るとホッとする。

 石造りの建物に今度は3人で寄った。


 用事を済ませてギルドを出ると、もう夕焼けが街を染めていた。

 話し合った結果、数日くらいは あの宿に泊まっても良いんじゃない、という話になった。

 帰る家があるはずのサーシャさんも、その間、俺と一緒にいてくれるようだ。

 なんだか嬉しい。マアトも喜んでいた。


 宿についた俺たちを、というより俺を嗅ぎ分けたおばさんは眉をひそめて、鼻をつまんだ。

 おばさんに「しばらくお世話になりたい」と伝えると、笑顔で銀貨の話をしてきた。

 話している俺たちの側を、くたびれた冒険者がひとり、通り過ぎていく。

 俺たちも、そんな中のひとりなのだろうか。


 さっさと部屋に向かった。

 相変わらず、年季の入った部屋が、歴史を感じさせる。

 街の景色を眺めてみると、いろいろな生活をしている人がいることに気づいた。


「温泉に行くかな」

「おんせん? おふろのこと?」


 マアトが興味深そうに尋ねたので、そうだよと答えた。


「一緒に入るか?」

「うん!」 


 冗談半分だったのに、嬉しそうにマアトが頷いたのが意外だった。

 サーシャさんも気にしていなそうに「わたしも」と続いた。

 ……彼女らが恥ずかしいと感じる線引きが全くわからないぞ。

 単純に、脱ぐところが恥ずかしいだけなのか?


 準備をしてから、仲良く温泉に入った。

 夜の月が出ている。

 お客さんは誰もいなかった。

 素晴らしい眺めだった。

 今日は黒衣の男は、こなかった。


 火照った身体を冷ましながら部屋に戻って、遅い夕食を食べる。

 夕食は魚とパイだった。ムニエルのようものだが、味付けが変わっていた。

 調味料をバターと塩以外は使って無いんだろうな。

 俺は少し物足りなさを感じたが、サーシャさんとマアトはおいしいと言って、もくもく食べていた。


 食べ終われば、後は眠るだけ。

 ベッドに入ると「おとーさんと寝たい」とマアトが言ってきた。

 一緒に寝ることになった。おかーさんも一緒に、と駄々をこねたが、真っ赤になったサーシャさんがやんわりと拒否したので、それは実現しなかった。残念だ。

 マアトの温かいふわふわの身体が押し付けられる。

 彼女は安心したのか、すぐに眠ってしまった。

 サーシャさんも眠ったのだろう。 


 静かな室内。

 虫の声と木の匂いが緩やかに眠気を誘った。

 今日のことを、ぼんやりと思い出しながら、まぶたを閉じる。

 

 狼について。

 念のため、よくしてくれた受付のおねえさんに報告しておいた。

 なにかあればギルドが対策してくれるらしい。

 フランさんはどうなったか。

 未だ知る由は無い。


 それから、もうひとつ。

 マアトのことは、やはり誰も知らないようだった。

 改めて考える。あの子をどうするのか。

 しばらくは面倒を見ながら、両親を探してあげればいいか。


 とにかく明日も、働かないとお金が無くなりそうだ。

 朝一番で、ギルドに行って仕事を貰ってこよう。

 薬草のクエスト報告をしてないから、すこしは余裕があるといえばあるが。

  

 なんだか、この場所に来てから、やることが沢山あって、ひどく充実しているな。

 ニートをしていたころとは大違いだ。なんだか、なつかしい。


 誘拐。

 黒衣の男。

 くすぶる炎。


 ふいに背筋が寒くなる。

 なにか、自分のあずかり知らないところでおそろしいことが着々と進んでいるような気がした。

 気のせいだ、と思い込ませて俺は、また。


(おやすみなさい) 

 

 泥のように眠りこけた。



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