ダンジョンからの帰還
◇◇◇
強い光が射す。
手で目を覆っても、暗闇に慣れた目には刺されたように感じる。
長い長い通路を抜けて、ようやく出口に戻ってきた。
鮮やかな緑と土の色が、俺たちを現実に戻してくれる。
「やっと出られたぁー!」
待ちわびた外の景色に、マアトが、歓声を上げた。
太陽がこんなに恋しいと思ったことはなかったなぁ。
ついででいいから俺の服も、早く乾かして欲しい。
「よくがんばったね」
「うん、がんばったよ! ほめて!」
「えらいえらい」
頭を撫でまわしてあげると、嬉しそうにきゃっきゃっと喜んだ。
サーシャさんは、うんっ、と伸びをしている。
「な、なに?」
目が合うと、彼女は俺のことを、ちらちらと頼りない瞳で見てくる。
例のアレを気にしてるのかな。
「いえ。これからどうするのか、聞いておこうかと」
俺は気にしてるから、しばらくまともに顔を見れないけどね!
「あ、そうだね。うん。えと、まず街に戻って、ギルドに行こうと思う。
クエストの報告と……あの【狼獣】の報告。ちょっと気になるの」
狼男のことか。
広間からダンジョンの出口までは一本道だった。
つまり、帰り道で出遭わなかったということは、ダンジョンから出ていったということだ。
街に向かったのだろうか? まさかね。
「気になる、というのは?」
「見たことがないから、変異種かもしれない。
魔物が変異すると、並外れた力があったり、変わった能力を持ってたりする。
もし、あの子が街の方に出て行ったなら、絶対トラブルになると思う」
「フランさん大丈夫でしょうか」
「わからない」
うつむいたサーシャさんは、多分わかってるのだろう。
もう、生きている彼女の姿を見られることはないだろうと。
いかん。話題を変えよう。
「そのあとは、どうします?」
「今日の宿で、いいと思うよ。おかみさんはいい人だったし、ご飯はおいしかったし、温泉も良かった」
「そうですね」
温泉か。
眠るだけになって、早くさっぱりしたいな。
マアトが、きゅっ、と俺の指を握った。
俺にできることは限られている。彼女の手を、俺もそっと握り返した。




