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30代ニートが就職先を斡旋されたら異世界だった件。  作者: りんご
第三章 影に射さぐ。
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ダンジョンからの帰還



 ◇◇◇


 強い光が射す。

 手で目を覆っても、暗闇に慣れた目には刺されたように感じる。

 長い長い通路を抜けて、ようやく出口に戻ってきた。

 鮮やかな緑と土の色が、俺たちを現実に戻してくれる。

 

「やっと出られたぁー!」


 待ちわびた外の景色に、マアトが、歓声を上げた。

 太陽がこんなに恋しいと思ったことはなかったなぁ。

 ついででいいから俺の服も、早く乾かして欲しい。


「よくがんばったね」

「うん、がんばったよ! ほめて!」

「えらいえらい」


 頭を撫でまわしてあげると、嬉しそうにきゃっきゃっと喜んだ。

 サーシャさんは、うんっ、と伸びをしている。


「な、なに?」


 目が合うと、彼女は俺のことを、ちらちらと頼りない瞳で見てくる。

 例のアレを気にしてるのかな。


「いえ。これからどうするのか、聞いておこうかと」


 俺は気にしてるから、しばらくまともに顔を見れないけどね!


「あ、そうだね。うん。えと、まず街に戻って、ギルドに行こうと思う。

クエストの報告と……あの【ウェアウルフ】の報告。ちょっと気になるの」


 狼男のことか。

 広間からダンジョンの出口までは一本道だった。

 つまり、帰り道で出遭わなかったということは、ダンジョンから出ていったということだ。

 街に向かったのだろうか? まさかね。


「気になる、というのは?」


「見たことがないから、変異種かもしれない。

魔物が変異すると、並外れた力があったり、変わった能力を持ってたりする。

もし、あの子が街の方に出て行ったなら、絶対トラブルになると思う」


「フランさん大丈夫でしょうか」

「わからない」


 うつむいたサーシャさんは、多分わかってるのだろう。

 もう、生きている彼女の姿を見られることはないだろうと。

 いかん。話題を変えよう。


「そのあとは、どうします?」

「今日の宿で、いいと思うよ。おかみさんはいい人だったし、ご飯はおいしかったし、温泉も良かった」

「そうですね」


 温泉か。

 眠るだけになって、早くさっぱりしたいな。

 マアトが、きゅっ、と俺の指を握った。

 俺にできることは限られている。彼女の手を、俺もそっと握り返した。



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