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30代ニートが就職先を斡旋されたら異世界だった件。  作者: りんご
第三章 影に射さぐ。
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光る石

鈍足で すいません。



 ◇◇◇


 広間の、左の通路を奥へと進む。

 通路自体が狭くなっていて、線路が敷かれている。鉄や木の混じった独特の匂いがする。

 俺たちはどんどん暗がりのダンジョンを歩いていく。すぐに目的地についた。


「ね、おとーさん、おかーさん! すごくキレイ!」


 ダンジョンの一角で鉱石が輝いている。妖しい幻想的な空間がそこにあった。

 ワンピース状態のマアトが無邪気に喜んでいる。

 足元には壊れたつるはし。無造作にいくつも捨てられていた。採掘場かな。


 サーシャさんが、石をかんっ、と少しだけ削って、破片を手にして戻ってくる。


「これが【光ゴケ】。この、石の、端っこにくっついてるやつ」


 輝いているのは鉱石だと思ったけど、良く見てみれば、輝いているのは石ではなく、石についている綿のようなものだ。

 さっさっ、と彼女はそれを手早く払って、革の袋に集めた。袋がうっすらと輝く。


「手伝ってくれる?」

「ええ」


 革袋を渡された俺も、綿を集めていく。

 石についた綿に触れると、ぐにょっと柔らかい感じ。光ってるのに熱くはない。コケをこすると、さらさらと細かくなって光の粒子が舞う。雲みたいなイメージだな。


「おとーさん!」

「んー?」

「ふよふよしてる!」

「そうだねー」


 マアトも駆け回りながら、懸命に集めている。ああ、そんな風に屈むと、見えちゃうぞ。穿いてないんだから。


「どれくらい集めるんですかー?」

「袋にいっぱいあれば へいきー」


 コケを集めながら、サーシャさんが答えた。

 もうすこしで俺も終わりそうだ。ササッと済ませてしまおう。

 3人で分担したおかげで、さほど時間もかからず集め終えることができた。


 ……そのとき、ソレが起こった。気づいた、というべきなのだろうか。




☆ ダンジョン内での一コマ① ☆


 どこまで続くんだろうか、この通路。

 あのスライム以降、魔物は出てきていないが、ダンジョンは油断できない。


「まだ上層だから、そんなにあぶない子はいないよ。でも、下のほうに行くと、すごく強いのがいるんだ。だから、下には行かないでね。ぜったいだよ。ぜったいに行っちゃダメだからね?」


 サーシャさんが口をすっぱくして言う。マアトが震えながら聞いていた。

 俺は『あれ、それって絶対フラグだよね?』と思ってしまったけど。

 押すなよ、押すなよ! あぶないんだからな! 的な。


「そんなに強いんですか、下の方のやつは」

「うん。中でも、一番下にいる【ゲートガーディアン】と【地獄騎士】が、すごく強い。動く生き物はぜんぶ敵だと思って攻撃してくる。ぐっちゃぐちゃになるまで攻撃をやめないんだ。前に一度だけ、仕方なく戦ったけど、あまり加減できなかった」


 サーシャさんは何ともなさそうに言っていた。

 加減できなかった。……ということは。


「勝ったんですか?」

「負けてたら、わたし、ここにいない」

「ですよねー」


 もう何があっても、驚かない。そんな一コマ。


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