光る石
鈍足で すいません。
◇◇◇
広間の、左の通路を奥へと進む。
通路自体が狭くなっていて、線路が敷かれている。鉄や木の混じった独特の匂いがする。
俺たちはどんどん暗がりのダンジョンを歩いていく。すぐに目的地についた。
「ね、おとーさん、おかーさん! すごくキレイ!」
ダンジョンの一角で鉱石が輝いている。妖しい幻想的な空間がそこにあった。
ワンピース状態のマアトが無邪気に喜んでいる。
足元には壊れたつるはし。無造作にいくつも捨てられていた。採掘場かな。
サーシャさんが、石をかんっ、と少しだけ削って、破片を手にして戻ってくる。
「これが【光ゴケ】。この、石の、端っこにくっついてるやつ」
輝いているのは鉱石だと思ったけど、良く見てみれば、輝いているのは石ではなく、石についている綿のようなものだ。
さっさっ、と彼女はそれを手早く払って、革の袋に集めた。袋がうっすらと輝く。
「手伝ってくれる?」
「ええ」
革袋を渡された俺も、綿を集めていく。
石についた綿に触れると、ぐにょっと柔らかい感じ。光ってるのに熱くはない。コケをこすると、さらさらと細かくなって光の粒子が舞う。雲みたいなイメージだな。
「おとーさん!」
「んー?」
「ふよふよしてる!」
「そうだねー」
マアトも駆け回りながら、懸命に集めている。ああ、そんな風に屈むと、見えちゃうぞ。穿いてないんだから。
「どれくらい集めるんですかー?」
「袋にいっぱいあれば へいきー」
コケを集めながら、サーシャさんが答えた。
もうすこしで俺も終わりそうだ。ササッと済ませてしまおう。
3人で分担したおかげで、さほど時間もかからず集め終えることができた。
……そのとき、ソレが起こった。気づいた、というべきなのだろうか。
☆ ダンジョン内での一コマ① ☆
どこまで続くんだろうか、この通路。
あのスライム以降、魔物は出てきていないが、ダンジョンは油断できない。
「まだ上層だから、そんなにあぶない子はいないよ。でも、下のほうに行くと、すごく強いのがいるんだ。だから、下には行かないでね。ぜったいだよ。ぜったいに行っちゃダメだからね?」
サーシャさんが口をすっぱくして言う。マアトが震えながら聞いていた。
俺は『あれ、それって絶対フラグだよね?』と思ってしまったけど。
押すなよ、押すなよ! あぶないんだからな! 的な。
「そんなに強いんですか、下の方のやつは」
「うん。中でも、一番下にいる【ゲートガーディアン】と【地獄騎士】が、すごく強い。動く生き物はぜんぶ敵だと思って攻撃してくる。ぐっちゃぐちゃになるまで攻撃をやめないんだ。前に一度だけ、仕方なく戦ったけど、あまり加減できなかった」
サーシャさんは何ともなさそうに言っていた。
加減できなかった。……ということは。
「勝ったんですか?」
「負けてたら、わたし、ここにいない」
「ですよねー」
もう何があっても、驚かない。そんな一コマ。




