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30代ニートが就職先を斡旋されたら異世界だった件。  作者: りんご
第一章 気がつけば森の中
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ニートは少女と初めての夜を迎える。①


     ◇◇◇


 閑散とした木造の家がぱらぱらと見えてくる。想像以上に自然が多い、のどかな村だ。

 こんなときでなければ、いつかゆっくり観光したいな。

 早く歩いたせいか、足が棒のようだ。どこかで休みたい。

 女性は入り口についたところで、


「…それじゃあ」


 俺を置いてどこかに行こうとする。

 ちょっと待って、という意思を暗に態度で訴えてみた。


「まだ、なにかあるの」


 うっ。なんか、ちょっと視線が冷たい?

 気のせいだ、気のせい。


「あの、これからどこに行けばいいですかね」

「…家に、帰らないの?」

「いや、交通手段が欲しいんですけど。最寄の駅とか、できれば都市部に出られるルート、夜間運行のバスなんて、ありませんかね?」

「? よくわからないけど…ギルドに行きたかったの?」


 またギルドか。ファンタジーっぽく徹底してるなぁ。

 トラブルがあったときのために本部を置いてるんだろう。


「ギルドって、総合受付みたいなものですか? このツアーの」

「…そんな感じ、たぶん」

「なら、そのギルドに連れて行ってください」

「今日はもう遅いから宿を取って休んだほうがいいよ。宿は、あっちにあるから」


 あっちか。明かりを頼りに歩いていけば、迷う事も無いだろうな。


「ありがとうございます」

「ねぇ。お金は、ある?」


 宿の料金か。そりゃそうだ何をするにしても、お金がいる。

 少しヒヤッとしたが、ポケットを探ると、くしゃりと曲がった紙幣。1万円。

 両親がエサ代として俺にくれたものだ。

 サンキュー、オカン! 


「これで足りますかね」

「…なに、それ」


 1万円札を見た女性は怪訝な表情をした。


「宿に泊まるなら銀貨じゃないと、だめだよ。ほら、これ」


 ちゃりちゃり。女性は懐から数枚の硬貨を取り出して見せてくれた。

 夜の月に銀貨が光る。

 あんな硬貨、見たことが無い。


「…」

「……」


 嫌な沈黙が続いた。そして、


「お金、持ってない、の?」

「……」

「うそ、銅貨くらいは」


 俺は力なく首を振った。身体の震えが止まらない。

 足元がぐらつく。俺はなにか決定的な思い違いをしているんじゃ、

 いや待て。そうか。換金所だ。換金所があるんだ。


「銀貨は、どこで手に入るんですか」

「どこって…働いたり、ギルドで貰ったり、いろいろ…」

「つまり、ギルドで交換してもらえるんですね」

「うん…そう、なのかな…」

「だったらなおさら明日ギルドに行く必要がありますね」


 さすがはファンタジーツアー。よく考えられている。

 考えてみれば、ファンタジー世界で日本円を使って取引してたら、雰囲気ブチ壊しだ。

 専用のメダルなり、コインなりと交換できる換金所があって当然だ。

 ちょっとゾッとしてしまった。


 俺がひとり納得する中、女性は妙に難しい顔をしていた。



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