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30代ニートが就職先を斡旋されたら異世界だった件。  作者: りんご
第三章 影に射さぐ。
29/96

おやくそくの展開。


 ◇◇◇


「おとーさん、おかーさん。あれ、なーに?」

「あれは……スライムだよ。水気のある場所によくいるんだ」


 サーシャさんが、塊をちらと見てから答えた。

 スライムって、あの、ゲーム初期に必ず戦うモンスター?

 ダンジョンで、スライム。お約束過ぎないか。


「危険なやつじゃないですよね」


 念のため聞いてみる。蒼い塊はぷるぷると震えるばかりで、何かしてくる気配が一切ない。

 あれ、生き物なのかな? ただの物体な気もする。


「攻撃は してこないよ。でも」

「マアト、すらいむ、触ってみたい!」


 マアトは何か言おうとしたサーシャさんが言い終わる前に、スライムに近寄っていった。

 彼女がその手で、無警戒に塊に触れた。そのとき。


「えっ?? ひぅっ!?」


 うぞっ、うぞぞぞぞぞ。


 蒼塊が大きく波を打つ。

 ずぶずぶ、と揺れながら、触れたマアトの手を、蠢き包み込んでいった。

 腕の中ほどまで覆ったところで、塊の動きが止まる。


「ぬ、抜けないよ! お、お、おとーさん!!」


 彼女は、飲みこまれた手を抜こうと必死で力を込めていた。

 あの塊は何事もないみたいに、ぷるぷると震えている。

 振り返って、俺を見つめる彼女の表情が恐怖で歪んでいた。


「やだぁ! たすけて!」


 べしょべしょに顔を濡らした彼女が助けを求めてくる。俺はあわてて、腰の短剣を引き抜く。

 その様子を見て、サーシャさんが引き止めた。


「あ。待って、だめ」

「だめ、ってなんです! あぶなくないって言ったじゃないですか! 早く助けないと!」

「ち、違うの。そうじゃなくて。その、【ヒドロスライム】は、刃物を使うと……」


 少しだけ慌てるサーシャさんの声を振り払い、マアトに駆け寄った。今助けてやるからな!

 

「おとーさん!」


 マアトの声援を受けて俺は短剣で、蒼の塊を斬り付けた。


 ざしゅっ。


(あれ?)


 俺の力でも易々と切れる。全く硬くない。あっけないほど簡単に、塊は寸断された。豆腐をナイフで切ったようだった。

 だが、次の瞬間。


 ぱぁんっ!


 両断された2つの塊が、同時に弾けた。

 粘性のある蒼い液体が、びちゃびちゃと降り注ぐ。

 二人して呆然となる。


「……ご、ごめんね。刃物を使うと、その、破裂するの……スライム……」


 サーシャさんが、申し訳なさそうに俺に説明してくれた。

 ツン、と鼻をつく匂いが立ち込める。飛沫はだいぶ離れた壁や天井まで飛び散っていた。

 斬り付けた俺も被害に遭ったが、一番、被害に遭ったのは、中心地にいたマアトだ。


 わんわん泣き喚くマアトを慰めるのに、これまた時間がかかった。



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