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30代ニートが就職先を斡旋されたら異世界だった件。  作者: りんご
第三章 影に射さぐ。
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青い影


 ◇◇◇


 暗い穴の奥から、肌を撫でるじとっとした風が吹く。

 石で造られた壁には点々と灯りが灯っている。寂れた夜道のような、ぼんやりとした灯りが仄めいて、洞窟内を頼りなく映し出す。

 サーシャさんを先頭に、マアト、俺と続いてダンジョン内を歩いていく。俺たちが歩くと、こつんこつん、という音が反響した。


「探すモノは【光ゴケ】ですよね」

「うん」

「光ってるんですか」

「ぴかぴか光ってるよ」


 改めて特徴を聞く必要もなさそうだった。見ればわかるってことだよね。

 

「くらい! こわい! せまい! もうダンジョン、やだぁ!」


 数分歩いたところで、マアトがとうとう悲鳴を上げて、俺にぎゅっとしがみついてきた。


 ダンジョンの入り口を見た瞬間に、彼女の顔からは、さっと表情が消えた。代わりに浮かんだのは不安の色だ。

 灯り、床、天井、風、などなど、ダンジョンの中で感じるもの全てにびくびくしていたものの、ここまで、声をあげず、騒ぎはしなかった。

 だが、ここに来て、堪えられなくなったのだろう。


 ふんわりと暖かいマアトの体温を感じる。びゅぅっと薄寒い風が吹きつけた。


「どうします」

「ん」


 サーシャさんが「わたしにまかせて」と、マアトの前に屈んだ。なにをする気だろう?


「マアト。ほら、これ、見て?」


 彼女がなにかをつぶやいた。

 光が、ぱっと弾ける。

 目の前に、いくつもの光が現れる。

 赤、青、黄色、緑、オレンジ。

 色とりどりの光が、宙を踊って、くるくると回り、ぱんと弾けては元に戻って、現れては消えていく。

 

「わぁ」


 ダンジョンが七色に染まる。光のアートはしばらく続いて、マアトを楽しませた。

 ショーが終わる頃には、もうマアトから怯えた様子は感じられなかった。 


「便利ですね、【】」

「……こういうときくらいにしか役に立たないけどね」


 サーシャさんが苦笑した。

 ご機嫌になったマアトと、サーシャさんの3人でダンジョンを、進んでいく。

 時折聞こえてくる、ぴちょん、という水音も、何も恐れることはなかった。


「おとーさん、おかーさん。あれ、なーに?」


 マアトが闇の影に、なにかを見つけた。

 何だろう、と目を凝らしてみると、何かがある。

 ぷつぷつと斑点があり、青、というより、蒼い塊が、ぷよぷよと、そこに蠢いていた。



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