青い影
◇◇◇
暗い穴の奥から、肌を撫でるじとっとした風が吹く。
石で造られた壁には点々と灯りが灯っている。寂れた夜道のような、ぼんやりとした灯りが仄めいて、洞窟内を頼りなく映し出す。
サーシャさんを先頭に、マアト、俺と続いてダンジョン内を歩いていく。俺たちが歩くと、こつんこつん、という音が反響した。
「探すモノは【光ゴケ】ですよね」
「うん」
「光ってるんですか」
「ぴかぴか光ってるよ」
改めて特徴を聞く必要もなさそうだった。見ればわかるってことだよね。
「くらい! こわい! せまい! もうダンジョン、やだぁ!」
数分歩いたところで、マアトがとうとう悲鳴を上げて、俺にぎゅっとしがみついてきた。
ダンジョンの入り口を見た瞬間に、彼女の顔からは、さっと表情が消えた。代わりに浮かんだのは不安の色だ。
灯り、床、天井、風、などなど、ダンジョンの中で感じるもの全てにびくびくしていたものの、ここまで、声をあげず、騒ぎはしなかった。
だが、ここに来て、堪えられなくなったのだろう。
ふんわりと暖かいマアトの体温を感じる。びゅぅっと薄寒い風が吹きつけた。
「どうします」
「ん」
サーシャさんが「わたしにまかせて」と、マアトの前に屈んだ。なにをする気だろう?
「マアト。ほら、これ、見て?」
彼女がなにかをつぶやいた。
光が、ぱっと弾ける。
目の前に、いくつもの光が現れる。
赤、青、黄色、緑、オレンジ。
色とりどりの光が、宙を踊って、くるくると回り、ぱんと弾けては元に戻って、現れては消えていく。
「わぁ」
ダンジョンが七色に染まる。光のアートはしばらく続いて、マアトを楽しませた。
ショーが終わる頃には、もうマアトから怯えた様子は感じられなかった。
「便利ですね、【手品】」
「……こういうときくらいにしか役に立たないけどね」
サーシャさんが苦笑した。
ご機嫌になったマアトと、サーシャさんの3人でダンジョンを、進んでいく。
時折聞こえてくる、ぴちょん、という水音も、何も恐れることはなかった。
「おとーさん、おかーさん。あれ、なーに?」
マアトが闇の影に、なにかを見つけた。
何だろう、と目を凝らしてみると、何かがある。
ぷつぷつと斑点があり、青、というより、蒼い塊が、ぷよぷよと、そこに蠢いていた。




