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30代ニートが就職先を斡旋されたら異世界だった件。  作者: りんご
第三章 影に射さぐ。
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ブレークファストは謎掛けの後で


  ◇◇◇


 怖い。痛い。苦しい。熱い。

 火照る身体を風が突き抜ける。寒い。手には燃えるような光がある。けれど心は冷え切っている。……寂しい。

 誰からも理解されないことが、たまらなく寂しい---



 ・・・

 ・・・・

 ・・・・・



 嫌な夢から目を覚ます。光が部屋を照らし親切なゴースト達は眠りについて、誰にも等しく訪れる朝が来ていた。

 開いた窓から風が吹き込んでくる。二度目の、知らない天井。なに言ってんだか。


(ふぁあぁぁ、ぁ?)


 あくびを噛み殺すと、くすぶる煙の残り香がした。気のせいかな?

 サーシャさんは先に起きていたようだ。


 俺も起きよう。

 すると、ズキリ、と筋肉が痛みを訴えた。筋肉痛だろうか。昨日、一昨日と、いろいろあったからかなぁ。でも、我慢できないほどじゃない。


「だいじょうぶ?」

「ええ大丈夫です。おはようございます、サーシャさん」

「……うん、おはよう」


 ホッとする笑顔がそこにあった。あまり心配かけないようにしないと。

 しばらくサーシャさんと話していたら、宿のおばさんが料理を持って部屋を訪れた。いい匂いがする。


「昨夜、変なことはしてないね?」

「してません」

「……」

 

 俺はきっぱりとおばさんに言い切った。なぜそこで顔を赤らめるんだろ、サーシャさん。

 おばさんが食器と料理をテーブルに並べる。果物に、黄金色のスープ。あれは小麦のパイかな? 皿が並べられたところで俺たちは席についた。


「そいつはロタ芋を小麦に混ぜて焼いたものだけど、どうだい。格別にうまいだろ?」


 小麦パイ(仮)を食べた俺に、おばさんが自慢気に話しかける。


「ええ。地方が違うと味も だいぶ違いますね」


 芋と小麦の仄かな甘み。シンプルながら焼き加減が香ばしい。サーシャさんもにこにこしながら食べていた。


「これ、おいしいね」

「……なるほど。サーシャさんの好みが、なんとなくわかってきましたよ」

「え?」

「次はもっと美味しい料理を作れるってことです」


 サーシャさんを眺めながら、スープを啜る。こちらも、あっさりとしているが、ちゃんとダシが効いてる。これは魚介かな?

 自然のものを丁寧にこしらえたのだろう。素材の味が感じられる。


「美味い」

「そうだろうそうだろう。あと昼に1食、残ってるからね。楽しみにしてておくれ。その後も食いたきゃ、銀貨4枚だよ。そしたらまた3食、出してやるから」


 笑っておばさんは去っていった。

 果物もとても甘くおいしかった。俺もサーシャさんも大満足の朝食だった。


 黒衣の男はどうしたのだろうか。おばさんは穴の開いた温泉を見て怒ったのかな。怒られながら土下座で必死に謝っている男。その様子を想像して愉快になった。



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