じゃがいも戦士は様子を見る。
◇◇◇
「……スゴい」
1時間後。俺にとっては時間の感覚なんて無かったけど、おねえさんが時間を知らせにきてくれたようだ。なんか洗うのが楽しくなってきたところで、お迎えがきたな。
「全部、終わらせたんですか」
「ええ」
ボウルのジャガイモを無作為に手に取って確認している。驚いているようだった。
「私だって3倍はかかります。どんな魔法使ったんです?」
「一生懸命やっただけですよ」
本当にそうだ。ただ、無心で目の前のことをやっただけ。そうしたら、いつの間にか終わってた。
おねえさんは感心しているようだった。
「この仕事振りなら文句はありません。依頼達成ですね。報酬をお渡ししますので、戻ってください」
「わかりました」
おねえさんに連れられて、受付に戻ってきた。依頼の報酬として、おねえさんが、銀貨50枚をくれる。俺は驚いた。
「多くありませんか? 50枚って、破格すぎるんじゃ」
「まさか、終わらせてもらえるとは思ってませんでしたからね。まったくできていなくても20枚は渡すつもりでした。でも、残りの30枚は、あなたの働きに純粋に敬意を払ったまでのことです」
ありがたく頂戴した。軽いはずの通貨がずしりと重い。
「そうそう。それからもうひとつ。このクエストは私個人の依頼ですので、あまり口外しないようにお願いしますね」
色々とお世話になったおねえさんに、お礼を言って、俺は受付を後にした。
「あなたのことは、ギルドが全力でサポートします。またのお越しを」
◇◇◇
『ギルドダンジョンに挑戦する冒険者はいないかー! きみらの勇気を見せてくれ! 安心安全に経験が積めて、豪華トレジャーも入手可能だ! 新装開店、大盤振る舞い中の今なら、お一人様、銀貨10枚で挑戦できるぞ!』
何かの呼び込みの声がするギルドの入り口のところで数人がその声を熱心に聞いている中、ひとり寂しく佇んでいた少女が、俺の姿を見つけて駆け寄ってくる。
「おかえりなさい」
「……サーシャさん」
嬉しそうに声をかけてくれる。まいったな。またすぐに顔を合わせることになるなんて。あそこでお別れ、って思ってたのに。
何も言ってないから、サーシャさんは気にしてないだろうけど、なんとなく気まずかった。
「どうしたの? ルド、変な顔してる」
思わず笑ってしまう。俺は何を気にしていたんだろう?
嬉しい。この人と、もう少しだけ一緒にいられることが、たまらなく嬉しかった。
「いえ、そうですね。用事は済みました。行きましょうか」
俺たちはギルドを後にした。




