プロローグ
“私になんて価値はない”
そう、最初に思ったのはいつ頃だっただろうか?
酒乱の父と、その父に悩まされながら精神的疲労を抱えている母。
4つ離れた私とは違い、空気の読める妹。
この3人と私を合わせた4人で、名前だけの“家族”が成り立っている。
私はこの「家族」が嫌いだ。
早く家を出て自由になりたくて、色んな男と関わりを持ち、必要以上の愛情を求めた。
自分を見て愛してくれるのであれば、誰でもよかった。
しかし、春に咲き誇り散っていく桜の花びらの如く、半年特定の関係を持ち続けることですら困難であった。
……いつからだろうか。
嘘で埋め尽くされた世界の中で「快楽」だけを求めるようになったのは。
決して戻ることのない「過去」を、ただ悔やんですがるようになったのは。
笑顔に誘われて来たものは、1つ1つと消えていき、残るのは偽りの「幸」と虚無な抜け殻。
寂しいよ、ねえ。
どうして戻ってきてくれないの?
利用したの?
用済みだから捨てられたの?
手を伸ばしてもかすりもせずに通り抜ける。
嗚呼、また独りぼっちになるんだね。
空っぽだったんだね。
別にいいよ、代わりならいくらでも―……。
「偽物」に構成されて生きてきた。
ただ、それだけ。
ずっとそうして生きてきた。
その場しのぎで十分。
好きで選んできたの、選ばれし存在なんだよ。
―そうやって、笑って生きてきたの。
気付いた時から、ずーっと。