訪問と終焉
ブオーン。バババッ。ウィーン。
もう夜の11時だっていうのにしつこく飛行船が巡回してくる。
飛行船のスピーカーから流れる音声の内容は2週間前から全く変わらない。
「魔物の大群が我が国まで近づいております。護衛騎士と契約していない女性は直ちに契約をし、ワーズ大陸へ避難してください。」
もううんざりだ。
私はもう全てが面倒に感じているのに。
魔物なんて見たことがないけど襲ってくるって言うならどうにでもなればいいわ。
どうせいつか地球は破滅するんでしょ。
2週間前から毎日違う男性が私の自宅に訪問してきている。
私だけじゃなく友達の未恵ちゃんのうちにも来ていたらしい。
ニュースは最近見てないのであまり詳しくないが、どうやら訓練を受けた護衛の騎士が各家庭に一人配属され、魔物からご主人を守りつつ遠くにあるワーズ大陸まで連れて行ってくれるらしい。
そしてその護衛騎士達は営業マンよろしく配属者を探しに自ら各家庭に訪問しているみたいだ。
だから今日までに私の家にも13人もの護衛騎士候補が訪れている。
私が家の扉に「勧誘は一日一人までにしてください。」と張り紙をしているので律儀に守っているみたいだ。それで今日がその13日目の夜という事でさっき夕方に13人目の騎士が来たところだ。
だが、私はその全員を断ってきた。こんな状況で正気の沙汰では無いと周りには思われるかも知れないが、みずしらずの男と独り身の私が二人きりで長旅なんて我慢できないからだ。
私は昔から人見知りで男性馴れしていないというのもあるけれど、これまでに来た人達は皆よそよそしくて恥ずかしいのだ。全国にもそんな人はいくらでもいるだろうけど、状況が状況だけに普通の人はそんなことを言ってられないだろう。
私はそれでも割り切れない理由がある。外に出たくないのだ。
軽い引きこもりだ。つい最近まで高校に通っていたのだが、スクールカーストがいつのまにか下の方に属するようになり、それからいろいろあって学校生活がつまらなくしまったのだ。悲しい。
そんな時、魔物が遠くの大陸から飛んでくるニュースが入ってきた。かなり不謹慎ではあるが、これで皆の学校生活もなくなると思えば楽だと思った。ついでに私の人生も終わってしまえば尚楽だと思う。
だから私はこの国に残って魔物が来るのを待つのだ。
ゴンッゴンッ。
えっ、誰?魔物?
「すみませーん。護衛騎士志望の者ですが誰かいますでしょうか?」
嘘でしょ?こんな時間にどんな神経してるの?しかも張り紙を読んでいないの?インターホンも鳴らさないでドアを叩くし最悪ね。居留守決めてやるわ。
ピンポーン。
やっと気づいたの?こいつ馬鹿?仕方ない、出てあげるわ。
スタスタッ。ガチャッ。
「どなたですか?」
「どうも。無所属の騎士。雨宮雷光と申します。」
「ギャアアアァァァァーーーー!!!」
玄関の前に現れたのは魔物のような眼をした上半身裸の血だらけの男だった。