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クレイジー・マジシャンズ  作者: 鈴木那由多
◆3話 ファンタスティックえーじぇんと!
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ファンタスティックえーじぇんと! エピソード3

 昼休み。

 愛理はこれといってすることもなく、生徒会室で机に頬杖をついてぐだっとしていた。

「脱走した生徒探しは順調なんですか?」

 と、椅子に座りながら本を読んでいた黒岩梓が問いかける。今日は特に生徒会の雑務もないようで、梓は昼休みという時間を満喫しているようだ。ちなみに本のタイトルは「どうなる、これからの日本!」である。

「順調だといいんだけどねぇ……。いかんせん相手が透明なんじゃ探しようがないわよ。もういっそのこと放っておこうかしら」

 どうせ、学校の風紀を乱すような、しかもスカートめくり野郎である。そんな生徒を再び見つけ出して拘束したとして、一体どれだけの意味があるだろう。

「いけませんよ、結城さん。私達がその生徒を改心させてあげられなければ、その方は今後一生そのようなつまらない人生を歩むことになってしまいます。そのためにも私たちは、時に厳しく、なおかつ心は優しく接してあげないといけないと思うんです」

「まあ、そのとおりだとは思うけどさ……」

 依然としてイマイチやる気のでない愛理をよそに、勢いよく生徒会室の扉がスライドする。目をぎらつかせた男子生徒たちが室内をキョロキョロと見回した後、

「ここに宇佐美先生は来なかったか!」

 と声をそろえて叫ぶ。とてもうるさい。

「いないわよ」

 と一言愛理が言うと、男子生徒たちは扉も閉めずに慌ただしく廊下を駆け出して行ってしまう。

「なにかしらあの気持ち悪い生物は……」

 愛理はすでにいなくなってしまった男子生徒たちに向けて発する。

「男子の間ではすごい人気ありますからね、宇佐美先生」

 と、梓が補足する。

「高校生にもなってバッカみたい」

「まあまあ……。昼間はああやって男子が宇佐美先生のサインを求めて探しに駆け回っているようです。もはや学校のアイドルって感じですかね」

「うちの学校の男子はバカしかいないのかしら……」

「そうも言ってられませんよ。宇佐美先生のサインを奇跡的に入手した生徒がいるらしいのですが、そのサイン色紙は1万円ほどの値打ちで校内で取引されているようです。学校の風紀的にこれは深刻な……」

「捕まえるしかないわね、宇佐美先生ッ!」

 急に生気を取り戻した愛理がガバッと立ち上がって言った。今愛理はやるときの目をしている。真正の狩人の目である。

「い、いや……。結城さん捕まえる人違う……」

 そこへドカドカと下品な走り方をしてやってくる者がいた。

 その者は開かれたままの生徒会室を覗き込むなり、こう言った。

「ここに宇佐美先生は来なかったか?」

「いえ、来ていませんよ。大谷先生?」

 毛むくじゃら体育教師、大谷はすかさず次の目的地にむけて廊下を走って行った。

「先生ともあろう者が廊下を走るなど許せませんね」

 梓がむすっとして言った。

「ええ、大谷より早く探し出すわよ!」

「だからそれ、なんかちが……」

 ――既に愛理は生徒会室を飛び出していた。




 体育館、理科室、購買部、トイレなどなど……。

 回れるところは全て回ったはずである。

「では、午前の続きからいくわねー」

 目の前の教壇には、さっきまでどこを探しても見つからなかったあの宇佐美先生が平然とした姿で授業をしている。

 てっきり大勢の追ってから逃げ回って息を切らしているかと思ったのだが……。

 授業を受けている男子の半数以上も「これは一体どういうことだ……?」という疑問符を浮かべているようだ。

「むむむ、これはミステリーね……。ますます調査の必要がありそうだわ……」

 ペン回しをしながら愛理は憶測に基づく思考を巡らせていた。

 国語用に用意していたノートには、宇佐美先生捜索のための手がかりとなりそうなキーワードや、自分なりの推理をずらずらと書いていた。が、これといって有力なものはなさそうだ。

 校内の誰かにそっくりの変装、忍者もびっくりするほどの隠れ身の術……。正直言ってあのどんくさそうな先生にそんな高等な技ができるようにも思えない。

 宇佐美先生は相も変わらずゆったりとした口調で授業を進めている。普段の性格も暢気そうな感じで、まさかそんな先生がずば抜けて変装技術やステルス技術に長けているとも思えない。


 パコーン!


 愛理の額にチョークの当たるいい音がした。

「授業はちゃんと聞きましょうね、結城さん?」

 宇佐美先生はにこりとしながら言った。




「た、助けてくれー!」

 体育館の物置。跳び箱の中。

 暗闇に放り込まれた少年は助けを求めるが、その声は誰にも届かない。

 それもそのはずだ。少年の口にはガムテープが貼り付けてあり、まともに喋れてないのだから。

 この孤独な箱の中に押し込められて1日経とうとしているだろうか。

 手足は縄で拘束されており、より一層の恐怖が感じられる。

 ――このまま助けが来なかったらどうなるだろう、と。

 少年は過ちを犯してしまった。

 過ちは過ぎたるもので、それをなかったことにすることは出来ない。

 でも、それを理解し、良い方向へ自分を昇華できたとすれば、その過ちは決してただ悪いものであったという事にはならないだろう。

 詭弁かもしれないけど。

 だが、もし仮に今ここから無事に出られることがあったら、きっと真っ当に生きていくと誓う事が出来るだろう。

 世のため、人のため。善を尽くす。

 そう思えるだけ、反省した。

「こんなところにいたのか……。風呂入ってないだろ、ちょっとにおうぞ」

 上からまばゆい程の光が差し込む。

 跳び箱の上段が取り除かれたのだ。

 少年が上を見上げると、そこには、ある一人の生徒が顔を覗かせている。

「お、お前は……」

「今、貴様の助けを必要としている者たちがいる。行ってくれるな?」

 このやりとりの意味は、次の話で明らかになることだろう……。


 To Be Continued

微妙にタイトルと内容がマッチしてませんが、追々明らかにしていくということでご了承願います^^;

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