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クレイジー・マジシャンズ  作者: 鈴木那由多
◆2話 変態達は最後に何を見る
6/21

変態達は最後に何を見る エピソード3

 下校する三人。

 いつスカートめくりの変態が来てもいいように、臨戦態勢はバッチリである。

「スパッツだからいくら蹴っても大丈夫ね!」

 殺る気充分の愛理。

「相手も人なんでお手柔らかにお願いします……。てか、秋姉はやっぱり今日もパンツなの……?」

「ふふ、気になるの?」

「い、いえ……」

「ちなみに中は黒よ」

 自分で言っちゃったこの人!

「あらあら、鼻血なんか出しちゃって。帰ったらしっかり鉄分摂るのよ?」

 はい、と言って康太にポケットティッシュを差し出す秋穂。

「この調子じゃ、康太は使い物にならなそうね……。てか、そうこうしてる内に来たわよ!」

 愛理の指指す方向に変態はいた。黒いローブの男が道の先でおいでおいでと手招きしている。

「今度は逃がさないんだから!」 

 愛理は駆けだす。フック付きのロープを振り回して。

「く、俺も追いかけなくちゃ!」

 出遅れた康太。康太もまた愛理に続いて行こうとすると、それを秋穂が制止する。

「なんか変だわ」

「どうして?」

「スカートをめくる前からあのローブの人は、こっちに対して追いかけるように仕向けてきた。おかしいと思わない?」

「じゃあこれってもしかして、誘導!?」

「少し気付くのが遅かったな!」

 そして、姿の見えない第三者の声。声はかなり近い所で聞こえてきた。とすると、

「きゃ!」

 遅かった! あろうことかボディガードの康太をまんまと出し抜き、秋穂のスカートはめくられてしまった。

「しまった! って……あれ?」

「何!? 黒のスパッツだと!?」

 何を隠そう、露わになった秋穂のスカートの中は黒のスパッツだったのだ。

「それならそうと、最初から言ってくれればよかったのに」

「ふふふ、敵を欺くには、まず味方からって言うでしょ?」

「……良かった、何かホッとしたよ」

「く、撤退だ!」

 失敗を確認すると、声の主はすぐさま逃げ出そうとする。が、

「そう来ると思ったぜ。だが、逃がしはしねーぜ! 福島康太初披露、忍法・葉っぱの舞!」

 康太は風を巻き起こした!

 それにつられ、無数の葉っぱが風とともに流れる。そして、葉っぱは見えない何かに引っ掛かりとどまる。

 葉っぱがどんどんその見えない何かを覆っていく。それはやがて人の形を成すのだった。

「実体が見えればこっちのもんだぜ」

「し、しまった……! お前も魔法使いだったのか!」

 その透明の人間は程なくして、お縄に頂戴することになった。



 一方、黒いローブの男を追いかけていた愛理はというと、

「なんて速い奴! また、見失っちゃった」

 またしても逃げられてしまっていた。愛理は決して足の遅い方ではなかった。むしろ、体力には自信のある方だったのだが……。

「康太のバカがタラタラしてるからだわ! 明日は私と康太で挟み撃ちする計画でも立ててまたチャレンジするしかないわね」

 と言って、今日のところは帰ることにしたのだった。




 黒いローブの男は走っていた。そして、何度か後ろを振り返り、安全なことを確認すると、その速度を緩めた。

「くそ、あのじゃじゃ馬女め、この俺を追い詰めるとはな。……間一髪だった」

 黒いローブの男――佐竹紀明は呼吸を整えながら言った。

「さて、向こうはうまくいっただろうか。俺が囮となり、やつが敵の本陣を攻めるという作戦だったが……。まあ、いい。今日のところは帰るとしよう。……ん?」

 佐竹は何気なく地面を見た瞬間、以降釘づけとなってしまっていた。

 地面には色とりどりのパンティーがこれでもかというくらい落ちていたのだ!

 そしてパンティーは一本の道を作るかのように並べられていた。

 明らかに罠だった。

 だが、そんなことを考える事もなく佐竹はそのパンティーロードを辿っていく。

「いやはや、実にけしからんな! 一体誰がこんなことを……」

 佐竹はつられていくようにどんどん先へと進んでいき、

 ガッシャーーーーン!

 突如、上から四角い鉄柵が落ちてきて、佐竹を捉える。

「キャプチャー成功しました」

 淡々と結果を報告する黒岩梓。

「うむ、面白いくらい簡単に引っかかったな」

 こちらもまた何の感慨もなさげに喋る、生徒会長の斉藤。

「この後、どうしましょう?」

「この事件の経緯を全て吐かせるとともに、自らの罪に相応するだけの罰を受けてもらわねばな」

「なるほど……」

「……ウキ!?」

 佐竹は未だかつてない恐怖を感じた!




 事件解決の翌朝。

 康太、愛理、秋穂の三人はいつものように学校へ登校する。

「あれ、なんか学校がいつもより賑わっているような気が」

 と康太がいち早く気付く。

「なにかしら、随分と楽しそうね」

「うーん、今日は何も学校の行事はなかったはずだけど……?」

 おかしいと思って、首を傾げる秋穂。

「まあ、行ってみれば分かるさ」

 康太を筆頭に3人は学校まで歩いていった。

 すると、学校の門はえらくド派手なデザインのアーチが建造されており、前面には“さるの動物園”と書いてあり、なにやら凝った意匠がこらしてあった。

 校門を抜けると、ド迫力の頑丈な鉄の檻がどっしりとした構えで置いてあり、人だまりはそこにできていた。

 鉄の柵の脇に看板がある。

 動物名“変態猿”

 説明。パンティを与えないでください。

 と書いてある。

 中には、おそらく例の二人が捕えられているのだろうが、一人は実体化していなかった。というわけで、

「出してくれー!」

 という、佐竹の悲痛の叫びと、それを全く意に介さなさい学校の生徒たちが各々の携帯のカメラによってその珍光景を画像に収めているのみだった。

「今日も学校は平和ねー。さあ、さっさと中に入りましょ」

 愛理は少しも興味を示さずに学校の中に入っていく。

「普段はいたずら好きの康ちゃんが、この中に入る事にならなくてホントよかったわ」

 屈託のない笑みを浮かべてニコリと笑う秋穂。

「ははは……」

 素直に笑えない康太がそこにはいた……。

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