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クレイジー・マジシャンズ  作者: 鈴木那由多
◆2話 変態達は最後に何を見る
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変態達は最後に何を見る エピソード2

「康太の馬鹿野郎……」

 佐竹紀明が橋の上で嘆いていた。友情がとある理由により引き裂かれてしまうということは往々にしてよくあることである。

 佐竹の下で大きな川がゆったりと流れていた。川には意志こそはないがそれでも少しずつ前に向かって流れ続けている。

「俺は、俺の信念を貫くだけだ!」

 壮大な川の流れを見つめて再度決心をするのだった。ただしこれから為そうとしていることはとてつもなくくだらないことではあるが。

「よくぞ、言った」

「む、誰だ!」

 佐竹は辺りを見渡すが人の存在を確認できなかった。ただ橋を車が過ぎ去っていくばかりである。

「私は今とある人物のスカートめくりを企てている者だ。もしこれから私が話す内容に君が協力関係を築いてくれるというのなら、私はこの姿を晒すつもりでいる」

「なんだと……」

 これが康太の言っていた、もうひとりのスカートめくりの犯人かもしれない。と佐竹は思った。透明人間? 信じられないがそういうことなのだろうか。

「……まずは話を聞こう」

「話が分かる奴で助かる。私が狙っている人物というのは、私や君の学校の生徒会副会長である宮川秋穂という女子だ。彼女は偶然とはいえ、この私に蹴りを入れてきたのだ。しかも、私は気が動転してしまい、パンツを見損ねてしまったのだ。だから、その報復も兼ねてスカートをめくらなければならないという宿命を感じざるを得なくなってしまったというわけだ」

「ふむふむ、で、その透明なあなたがどうして俺に協力を」

「これまた、察しがいい。実は私が確認した情報によると、どうやら生徒会は我々スカートめくりする者を確保するべく、彼女を囮にした捕獲作戦を決行することにしたようなのだ。そこで一つ問題が生じてしまったのだよ」

「……問題とは?」

「うむ、どうやら囮のまわりには、スカートをめくろうとする者を捕獲しようとする者がまとわりついているらしいのだ。しかも、奴らは目に見えない者までも捉えるべく、ありとあらゆる手段を講じてくるものと思われる」

「なるほど、しかしそしたら勝算はこちらにあるのか……?」

 ククク、と笑うその見えざる者はさらに言葉を続ける。

「貴殿はとても足が速いと聞く。そこで……ごにょごにょ」

「俺にそんな事をしろと言うのか! 報酬がなければとてもじゃないがやってられないな!」

「本来私は生で見る事にしか興味がないのだが……ごにょごにょ」

「何!? 我が学校Sランクの宮川秋穂のパンチラ写真……よし、その話乗った!」

「交渉成立だな、お互い頑張るとしよう」

「そうだな、ククク……」

 こうして悪のスカートめくり団は結成した。




 次の日。

 康太はすっかり元気になった愛理と、犯人探しに狂気さえ感じる秋穂と登校するのだった。

「へえ、私が休んでいる間にそんな間抜けな事する奴が現れるとはねえ。懲らしめるしかないわね!」

「早く現れなさい、ギッタギタにしてあげるわ!」

「まあまあ、抑えて抑えて……」

 と言いつつ、康太は自分の過去の罪がこの二人に露見しないか、気が気ではなかった。

 学校へと続く細い路地。この3人以外にもふつうに生徒が登校してくる中、そいつは現れた。

「きゃー!」

 黒いローブに身を包んだその男は、人に認識されるよりも早く、女子のスカートを無差別にめくっていく! その速さといったら神業という他ない。

 1人、2人とどんどん少女のスカートはめくられていく! その速さに反応すらできない無抵抗な少女のパンツが露わになっていく!

「とうとう現れたわね、変態野郎! 私が相手になったげるわ!」

 と、戦闘態勢になり構えをとる愛理。ついでに、

「あんたはじっくり鑑賞してるんじゃないわよ!」

 康太は愛理にげんこつパンチをくらい、ノックダウン。

「あらら、私はてっきり見えない何かだと思っていたのだけれど……」

 と不思議がる秋穂。

 黒いローブの男はその場をある程度かき乱すと、颯爽と撤退を始める。男が登場してから1分も経ってないだろう。

「ちょっと、逃げるんじゃないわよ!」

 愛理は追いかけようとしたが、男はたちまち姿が見えなくなってしまう。

「ものすごく速いのね〜」

 と黒いローブの男を褒め、感心したように喋る秋穂。

「秋穂ねえも暢気なんだから……」

 愛理も追いかけるのを止め、ため息をつくのだった。



「新手の出現か……気になるな」

 生徒会長の斉藤が顎に手をかけて思案する。

 放課後の生徒会室。話題はやはり例の事件の話だった。

 今朝、康太達が遭遇した謎の黒いローブの男の話をして、情報を整理しているところだった。

「それに過去の犯行とは大きく異なる点があります。今までの犯行は純粋にパンツを見たいという衝動によるものと思われますが、今回の犯行ではむしろパンツを見るというより、スカートをめくるという行為に意義があったものと思われます」

 と、机にぽつんと座って資料を眺めていた小さな女子が言った。

「ん……この子は?」

「2年の生徒会書記の黒岩梓だ。小さいと言ってもお前より年上だから失礼な事はするんじゃないぞ」

 と、斉藤が説明する。確かに言われた通り、かなり小さな体躯をしている。身長は平均的な女子よりも一回りくらい小さいかもしれない。ショートカットの綺麗な黒髪でよく似合っている。

「失礼ですね、俺がどれだけダメな奴だと思ってるんですか、会長は!」

 とはいえ、思わず頭をナデナデしたくなる、と康太は思った。

「このバカはさておき、パンツをめくる行為に意義があるという理論に基づくとなると、目的は自己顕示、あるいは自分という存在を周囲に知らせる必要があったということか」

 こくり、と黒岩がうなずく。康太はその小さな挙動に、小動物的な愛らしさを感じるのだった。

「でも、それってどういうこと? パンツには興味ないのにめくったってこと? 意味分かんなくない?」

 と疑問を投げかける康太。パンツを見るためにめくってきた康太としては理解できない行動基盤だと思った。

「そんなことも分からないなんて、やっぱりバカね。これからそれを必要とする何かが起こるってことでしょ」

「バカバカってそんな言うことないじゃないか! もう!」

「まあ、どっちみち私達は地道にそれを追ってくしかなさそうね。さ、今日もボディガード頼むわよ、バカ! ……じゃなくて康ちゃん?」

「わざと間違えてない秋姉……?」

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