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クレイジー・マジシャンズ  作者: 鈴木那由多
◆6話 不穏な影、微弱な風
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不穏な影、微弱な風 エピソード3

 男はがくりと膝から崩れ落ち、地面に突っ伏した。


「ま、負けた……! こんなただのガキに!」


「ただのガキで悪かったな」


 勝負は一瞬だった。


 戦いの流れはこうだ。


 黒づくめの男は魔法を発動させた。


 だが、彼の唯一の魔法は攻撃用ではなかった。


 自らを影と名乗ったとおり、自分の存在を影のように不鮮明なものにする魔法なのだが、風の魔法を操る康太の前では無意味だった。


 強めの風を巻き起こし、周囲を片っ端から吹き付けてやると、すぐに男は、

「こ……降参!」

 と言った。


 影の魔法を解いた男が再び姿を表したときには、風に吹き飛ばされまいと必死に木にしがみついていた所だった。


 正直、勝てると思って戦いを挑んできたのか。それが謎に思うほどの圧勝だった。


「おっちゃん、それホンキでやってる?」


「クソ……。少しばかり甘く見すぎていたようだ。……かのお方に報告せねば!」


「あ、待て!」


 そこから男が逃げ去るまでは一瞬だった。


 再び影の魔法を発動させると、姿は見えなくなる。追いかけようにもどっちに逃げたのか、全く見当がつかなかった。


「なんだったんだ……あれ」


 突如として始まった戦闘。康太の操る風の魔法を狙う、ハゲの魔法使い……。


 意味のわからない出来事が、この一瞬には凝縮されていた。


「……帰るか」


 よく分からないことは深く考えない。些細なことは気にしないのが、康太の生まれつきの性分だった。


 だからこそ、勉強もあまり身入りしないのかもしれないが。


「随分とハデにやってくれたわね……」


「お前は……!」


 今日はよく呼び止められる。


 目の前には、キリっとした麗美な瞳をした少女が康太を睨みつけていた。


 ただ、敵ではないだろうと瞬時に思った。


 なにせその少女は……康太と同じ学校の制服を着ていたのだから。


「七瀬泉希!」


「あら、名前を覚えていてくれて光栄ね」


 泉希は怜悧な風貌を崩すことなく言ったが、心なしか少しだけ微笑んだような気がした。


「貴方は自分が今置かれている状況を分かっていない」


「……ん?」


 康太は思った。


 この娘、なんかおかしな事口走ってないか、と。


「ネムネムー、ムネムネー、ネムネムー……」


 泉希が謎のイントネーションで、そのようなことを呟くと、途端に康太を睡魔が襲ってくる!


「あれ……。おれこんなとこで寝るの?」


 睡魔に抗うことができず、康太はたちまちコンクリートの上に崩れ落ちた。


 だんだんと薄れていく意識の中で、


「白……?」


 清潔そうな純白の色を見た……。

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