不穏な影、微弱な風 エピソード2
「我が校の女子生徒のうち、白パンティー着用者は全体の約10パーセントと見積もられる。この数値は近い将来、我が校にとって深刻な……って、オイ!聞いてんのかよ康太?」
放課後。
佐竹と康太はいつものように下校していた。
昨今のパンティー情勢について熱く語っていた佐竹だったが、一方の康太はというと、何か別の事に気を取られているかのように上の空であった。
「ああ、ごめん。で、白パンダが何だっけ?」
「俺がパンダの話なんかすると思うか? パンティーだよ、パンティー!」
「それもそうだな……」
「どうしたんだよ、全然会話にキレがないぜ?」
「……悪いけど、先帰っててくれないか? 忘れ物しちゃって」
「マジメだねー。俺も宿題のプリント机の中に忘れたけど、ここから引き返す時間の猶予は俺にはないね。じゃ、俺は帰るぜ!」
その刹那、佐竹は音速のごとく帰宅していった。
佐竹がいなくなったのを確信してから、ひと呼吸置き、
「……そこにいるんだろ?」
「ほう、この影の支配者と呼ばれたこの私の気配に気付くとは……」
進行方向の逆、後方の電柱からひょろりとした痩せ細い黒づくめの男が姿を表した。男は不気味な笑みを浮かべて康太を見ている。
「ハゲの支配者?」
「違うわ! 陰影の影の方だ!」
黒づくめと言ったが訂正させていただく。頭頂部以外黒づくめの男が現れた。
「あいにく、耳は良い方なんでね……。ずっとつけられているのが、さっきから我慢ならなかったんだ」
「耳が良いなら、何故さっき聞き間違えたんだ……!」
「お前の目的はなんだ、ハゲ?」
「……わざとだな!」
男は憤慨して地団駄を踏む。その間、わずかに残っている頭頂部の髪がゆらりゆらりと揺らめいた。その光景はわかめが水底で優雅に漂っているかのようであった。
「ふん、まあいい。バカな会話もここまでだ。俺の目的はただ一つ。四大元素の一つである貴様のその風の魔法を頂戴しに来た!」
「へぇー」
「その余裕そうな表情、いつまで続けられるかな?あとで泣きついても知らんぞ?」
「……へっ、望むところだぜ」
康太は敵に攻撃態勢の意を見せると、戦闘に意識を集中させた。
考えてみると、これまでこちらから攻撃を仕掛けに行った事はあったが、こうして敵意むき出しの敵を相手にしたことはなかった。
だからこそ、意識を高め、全意識を相手に向けた。
この戦いは……油断できない。
「ポーズだけは一丁前だが、俺には通用しないぞ!」
まずは長身の黒づくめ男が攻撃を開始した!




