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クレイジー・マジシャンズ  作者: 鈴木那由多
◆4話 愛しても尚、道は険し
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愛しても尚、道は険し エピソード1

この作品の真のタイトル、「パンツ愛と魔法と、時折ファンタジー」になぞらえパンツ成分をより一層発揮していきます。嫌悪感を抱かれた方は、気分を害される前に読むのを止めるのをおススメ致します。

「どうした。そんなものか〜?」

 雲より高い山の頂上で、修行に明け暮れる者達がいた。

 修行といっても、女もののパンティーを穿いている元気そうなちっこい老人が、周りを取り囲む少年達を挑発して逃げ回っているという奇妙な構図だ。

 余裕そうな老人に対して、少年たちはかなり疲労している。

「く、すばしっこい老人め……」

 少年Aもとい、佐竹なる男は狼狽した。

「怯むな! 俺たちのチームワークを持ってすれば、必ずできる!」

 弱気になりかけた佐竹なる男を励ます少年Bもとい、福島なる男は言った。

「そうだ、ここで諦めたら俺たちには何も残らないんだ。だからやるしかない!」

 一際威厳のあるオーラを放つ男、斉藤なる会長は言った。

「その調子じゃ。だが、ワシのスピードはこんなもんではないぞ?」

 老人は余裕の笑みを浮かべて、お尻ぺんぺんしている。

 どこまでも少年達をコケにしているようだ。




 時は遡る……。




 雲ひとつない快晴。

 福島康太は、晴々とした気分で学校に登校していた。

「平和って素晴らしいなー」

 スカートめくりの犯人は捕まり、心が穏やかではない日々に終止符が付き、康太の心は安堵を取り戻していた。

 ついでに、今日は生徒会が朝から何やら活動をするとかで、愛理は先に学校へ行ってしまっていた。

 奴がいない事の解放感も大きいのかもしれない、と康太は思った。

 学校にたどり着き、校門を通過する。

 すると、この世に絶望し、死にかけたような声が康太に語りかける。

「ハハハ……。自由っていいよな。どこへだって行けるし、何だって出来る。俺はどこで道を間違えちまったのかな……」

「お前、まだここにいたのか……!?」

 康太の振り向いた先には、頑丈な鉄の柵が今も尚健在しており、相棒の佐竹は相変わらずそこに閉じ込められていた。

「ん? 後ろにいるのは……?」

 佐竹の後方にうつ伏せの状態のまま、ピクリとも動かない少年がいた。髪がボサボサでそこはかとなく不潔な感じがする。

「魔法の使い過ぎで透明化できなくなったんだと。気にしないでやってくれ」

 しかし、この鉄の柵の中はまるで、別世界のようにひどい有様だと思った。

「いくらパンツめくりしたからって、ここまでするか、ふつう……」

 もし、俺もあのままこいつとパンツめくりをしていたら、と思うとぞっとした。

「……仕方ないじゃないか、康太。俺は学校の平和を脅かす事をしてしまったんだからな、その罪は自らの身をもって償うしかないのさ……」

 そう真剣に語る佐竹を康太は今まで一度も見たことがなかった。コイツは誰よりもバカで、だれよりも勢いだけで生きる人間で、真面目のまの字も知らないような男だったのだが。

 環境は人を変えるというがここまで変貌させてしまうとは……。

「運命とは悲惨なものだな……」


 


 今日はやけに空気がざわついているような気がした。

 教室でいつものように、康太は自らの席に座ってぼーっとしていた。

 が、やがていつもとは違う雰囲気を感じ取ったのだった。というか窓に人が張り付いていたので邪魔だったのだ。しかもかなり多数。

 何かを待っているかのように、人は群れを成して待ち構えている。男子も女子もだ。

 どちらかというと、クラスの男どもが落ち着きなさそうにそわそわしている。

 一方の女子は、ざわついた感じはするも、奇妙なくらいひっそりとしているようだ。

「……?」

 別段今日は特別な日という訳でもない。

 超大物の有名人でも来るというのなら、確かに窓に張り付きたくなるくらい待っていたくなるものだが……。

「おはよう康太。……ああもう! 鬱陶しいわね、珍獣が見たいなら他の場所行ってなさいっての」

 教室に入ってくるなり悪態をつきながらやってくる愛理。

 気だるそうに机にカバンをドサっと置いた。

 悪態は康太ではなく、その大勢の人だかりに向けられていた。

「愛理はなんでこんな人だかりが出来てるのか知ってるのか?」

「ああ……。最新の情報とかに疎いあんたは知らないんでしょうね」

「お? もしかして珍獣が来るのか? アルパカとかオカピとか!?」

 康太は目を輝かせて言う。動物は割と何でも好きなのだ。

「フツーに考えて来るわけないでしょ、バカ。アウストラロピテクスなら私の目の前にいるけど」

「おい……、俺の事じゃないだろうな?」

「まあいいわ、そんなことより」

「そんなことよりって……」

 康太の言葉を遮り、愛理はそのまま話を続ける。

「今朝、生徒会で集まって話をしてきたの。で、単刀直入に言うと、“魔法使い特別対策委員”の一員として活動することになったわ」

「はぁ? なんだそれ」

「私も今日初めて会長に聞かされたのよ。で、今後も学校内で悪事を働く魔法使いみたいな存在が現れたら対処するんだって」

「ふ〜ん、そりゃご苦労なこって」

「ふ〜んって、あんたもその一員だから」

「は!?」

 突然聞かされた決定事項に、康太は目を見開く。

「どうもこうも、会長が勝手に決めたのよ。それにあんた……」

 と、愛理は片手を口の側に添えて、ひそひそ話するよう促し、

「魔法使えるんでしょ?」

 確かめるように、小さくだがはっきりと言った。

「ど、どうしてそれを……?」

「あんた、秋穂姉の前で思いっきり使ったらしいじゃない」

 そんなことも分かんないのクズ?、とでも言わんげな、あからさまに見下したような態度で言う。

「あ、そういえばそうか」

「どういう訳か知らないけど、最近そういう能力に目覚める人間が出てきているそうよ。これまでの傾向で言えば、アホっぽい奴ほど目覚めているということかしら」

「いちいち人の癪に障るような事を……」

 愛理の毒舌は止まらない。人を小馬鹿にすることに関しては天性の才能を有しているのだ。

「ま、そういうことよ。どうせアンタは学校終わっても、家に帰って寝るだけなんだから丁度いいでしょ?」

「そうやって、人の人生を勝手に……」

 康太が言い終えないうちに周りが騒ぎだす。

 窓の外に何かが来たようだ。アルパカでもないオカピでもなければ、オッパッピーでもない。

 とすれば……?

「き、きたぁぁぁぁぁぁ! 我が校最大の麗しの美少女、岡野麻由美だーーーーーーー!」

 クラスの男子のうちの一人がそんな歓喜の声をあげると、男たちは揃いもそろって騒ぎ始める。一方の女子はそんな男達の声を聞いて、嫉妬や怒りに満ち溢れているようだった。どうやら、この人だかりが待っていたのは、この女子生徒の事のようだ。

「全く……。うちの学校にはバカしかいないのかしら」

 愛梨は呆れた表情で溜息をつく。

 康太はというと、実の所その“我が校最大の麗しの美少女”岡野麻由美という人物を見たことがなかった。

 一体、どんな人だろうかと、人の垣根を分けて窓際にまで近寄ってみた。

 窓からは校門までが一望でき、ここから登校してくる人が見えるわけだが、今見下ろして見た感じだと、いつもとはかなり様子がおかしい。一人の女子生徒の歩く通り道には、一切の人が居らず、その脇には人の壁ができている。神々しい物にでも遭遇したかのような、そういう近寄りがたさを漂わせているかのようだ。

「ということは、あれが岡野麻由美……?」

 そのアイドル級の扱いを受けて歩いている女子、岡野麻由美を福島康太は、じっと凝視してみた。

「え……?」

 思わず康太は顔を背けた。

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