俺不思 ショートストーリー過去編 癒菜と子犬の過去2
お待たせしました!
癒菜と子犬のショートストーリーは、今回でラストです。
それでは、どぞっ(/・▿・)/
幸也と帰った日の次の日の放課後、私はクロを連れて学校から少し離れた小山に来ていた。
もちろん部員のみんなも一緒に来ている。
裏山は自然が多く、人の手がいっさい加えられていない唯一の場所。
人の手が入ってないとはいえ、さすがに道は舗装されていて、春はお花見、夏は水泳、秋は紅葉、冬は凍った湖と、季節によって様々な景色になる。
しかし残念なことに、夜は人がほとんど歩かないため、動物を捨てる人が多い。
うちの部活にいる動物の半分がここの山で拾われた子たちだ。
そのため、今日は捨てられた動物探しと共に、クロの散歩に来た。
「いつもの場所にはいないわね」
「いいことね」
捨てられる場所一番になっている、洞穴に来たが、今日は一匹もいない。
いつもは捨てられて間もなかったりする子がいたりする。
でもここの場所に捨てられる子の一割しか私達のところには来ない。
ほとんどの子は後に飼い主が見つかって引き取られる。
「今日はいい風ね」
「・・・もうすぐ秋だな」
夏休みが終わって、自然は秋になる準備を始めている。
紅葉が出始め、風は少し肌寒いが、太陽の光が心地よく辺る。
「さ、着いたよ、クロ」
山の上まで来ると、木々が晴れ、一本のとてつもなく大きな木が立っていて、周りは草原になっている。
私たちの部活は、季節の変わり目にここに来て、動物たちとのんびりとした一日を過ごす。
木の下でクロを下ろし、歩かせてあげた。
「気持ちいいねえ、クロ~」
「何か、いつものキャラ壊れてないか?」
「ゴ、ゴホン! それより、幸也遅いわね?」
風夜に「あ、逃げた」というような目線を受けた。
「そろそろだと思うわよ?」
隣でたくさんのドッグフードをお椀に用意している冬が返事を返してくれた。
「・・・ほら、噂をすればなんとかね」
冬の目線の先に、丘を半分引きずられながら駆け上がってくる幸也の姿が見えた。
「さあさみんな! 早くおいで! たくさん用意したわよ!」
私が大声で言うと、幸也を引っ張っていた子たちが、さらにスピードを上げた。
「え!? ちょ、とと、まてえええ!!」
「あ・・・まずかったわね」
動物たちに引っ張られた幸也は、私達のもとに来る頃には、もうただ引きずられるだけの状態になっていて、ボロボロだった。
「せ、先輩・・・・」
「ご、ごめんなさい、まさかそんなになるとは思わなかったわ」
私は倒れている幸也の隣に座る。
木の下では、幸也が連れてきてくれた動物たちが、嬉しそうに冬の用意したドッグフードを食べている。
「あ、クロ、あなたも寝る?」
私と幸也の間に、クロが来て伏せをした。
「こいつ、いつも寝てますね」
「子供は寝るのが仕事よ」
私はクロを膝の上に乗せる。
すると幸也がその光景を羨ましそうに見ていた。
「・・・なんとなく想像できるけど・・・どうしたのよ」
「いやあ、俺にも膝枕を・・・ですね?」
「却下」
私が一言返すと、「・・・はい」といって引き下がった。
「いつかして下さい!」
「いつかねえ」
私は受け流すように返した。
私は冬達の方を見た。
もう動物たちは食べ終えて、昼寝していた。
二人も、動物たちに囲まれる形になって眠っていた。
横を見ると、幸也も寝息を立てて眠っていた。
「私も、少し寝とこうかしら・・・・・・」
私とクロの生活は、秋の終わりまで続いた、いや、までしか続くことはなかった。
その日はいつもと違い、部室を冬に備え、暖房を出したり、逆に夏物をしまったりと、大忙しだった。
この時にはもうクロは私なしでも鳴くことはなく、今は週末に連れて帰るだけになっていた。
クロの可愛さは部員のいるクラスでも人気がそこそこあり、動物好きの女子の間では、部室にクロ目当てで来る子いた。
「もうこんな時間か・・・そろそろ片づけられそうか?」
風夜が部室にいるみんなに尋ねると、すぐに「大丈夫」とみんなから返事が返ってきた。
部屋の片付けも大方終わって、ゴミなどを捨てるのは、明日と言っている。
自分の方は片づけを終えたみたく、みんなのところを順番に回ってきている。
「・・・癒菜も、しっかり片づけ頼むぞ、俺はちょっと先生に報告に行ってくるから」
「ええ、わかったわ」
風夜に言われて通り、ゴミ一つ間違えないように、私担当のゴミ分別をした。
大きく分けて、ペットのおトイレマット、餌の袋、ホコリやちりなどのゴミの三種類。
家具の裏やケージ一つ一つを持ち運んで行う作業などは幸也と風夜がやってくれて、私と冬は部屋中や出たゴミの分別担当になってる。
掃除中はケージに入れっぱなしも可愛そうだから、いつもの放し飼いのコートに放し、三、四人の女生徒に見てもらってる。
「あの、癒菜先輩いますか?」
「癒菜なら中にいるわよ」
外に来た女生徒が、私を探しに来たそうで、部屋の中に入ってきた。
「お掃除中すいません! 今度の生徒会の事についてなんですが・・・」
どうやら、新しく生徒会に入った女生徒が、生徒会のことについて話があるらしい。
この学校の生徒会に新しく入った生徒は、夏休みを終えたあとからの活動になり、それまでは生徒会のシステム、一年の活動について覚える時期になっている。
「・・・・・・そうね、わかったわ、それはみんなに伝えておくわ、他のことはまたあとで、それじゃあ、ありがとう」
「い、いえっ! それじゃあ待ってますね」
話を終えて、女生徒は一例し、部屋から出ていった。
自分で言うのもあれだけど、私は女子ウケがいいらしく、私に憧れる女生徒は、先輩や後輩、同学年にも多いと聞いたことがある。
・・・私ってそんなに人当たりいいのかしら。
「さっきの子、何だって?」
入り口の方から、冬が訪ねてきた。
「ん? 生徒会のことでわからないことがあるから、後で来て教えてほしいんだって」
「ふ~ん、癒菜って本当優しいよね」
「そんなことないわ、困ってる子を助けてあげてるだけよ」
前に聞いたことがあった。
冬も、私に憧れてるらしい。
でも私から見れば、十分冬も人当たりはいいと思う。
「あともう少しだから冬、頑張りましょう」
「ええ、お互いにね」
それから三十分くらいたって、やっと片づけが終わった。
見ると、ごみ袋が六袋もゴミが出ていた。
「すごいゴミね・・・」
「癒菜、みんな連れてきたわよ」
入り口の方を見ると、冬がクロ達を連れてきてくれた。
クロは私を見ると、すぐに私の足元に駆け寄ってきて、甘えるように顔をこすりつける。
「さーて、クロ、お腹空いた? 食べる?」
私はクロを抱き上げ、机にあった好物のサラミをあげた。
クロは私のあげたサラミを、少しづつ、その小さな口で食べていく。
「もう、本当にかわいいなあ!」
「もしもーし、こっちを手伝って欲しいのだけれど?」
「・・・あ、ごめん」
冬の方を見ると、ケージに動物たちを一匹一匹抱き上げていれていた。
これは掃除のときに一番骨の折れる作業。
「じゃあクロ、ここで待っててね」
私はクロを下ろし、冬の手伝いに行く。
ケージに入れる作業は、冬と手伝い十分ほどで全て終わった。
窓を見ると、もう辺りが夕日で赤く染まっていた。
「私と幸也は帰るわね、今日はお疲れさま」
「ええ、お疲れさま」
冬達と入れ違いで、風夜が入ってきた。
「俺は先に正門にいっるから」
「うん、私もすぐ行く・・・あ、ごめんなさい、後輩の子に呼ばれてて、先帰ってていいわ」
「おっけ。わかった」
私はゴミを部屋の隅に寄せて積む。
そして最後に、ケージを一通りパッと見て、どこも開いてないことを確認する。
「それじゃあクロ、また明日」
入り口のすぐ近くにあるクロにあいさつをして、私は部室にカギを閉めた。
生徒会室に行くと、先ほどの後輩がいて、わからないところを一通り訪ねてきた。
私はそれにいちから答え、説明してあげた。
時間にすると、一時間ほどだ。
もう辺りも真っ暗で、先生が見回りに来て、帰るように言われ、学校を出た。
後輩の子は家が私と近く、よくクロと一緒に登校しているのを見かけ、いつも羨ましかったと言っていた。
せっかくなので、私はその子を家に送って行き、私も家へ帰った。
家に帰ると、いつも通り誰もいない。
でも、なんか落ち着かない。
家の中を一通り見尽くしたが、特に変わったところはない。
一体何がそんなに落ち着かないのか。
「・・・何なのよ、この感じ・・・・・・」
この感情に不安を抱き、私はいつもより早く眠ることにした。
昨夜早く寝たおかげで、次の日の朝は、いつもより早く目が覚めた。
昨日の夜の違和感と不安が、まだ残ってる。
「・・・・・・あっ・・・もしかして」
私は脳裏に昨日の部室の光景が浮かんだ。
クロに上げたサラミを、ラップで包んで机に置きっぱなしだということ。
それと・・・。
「クロのケージ・・・鍵掛けたっけ?」
瞬間、不安になる。
部室を出るときは、確かにしまっているのを確認した・・・と思う。
不安になった私は、少し早めに登校することにした。
「だ、大丈夫・・・よね」
特に危険なものはない部室、クロのケージは下から二番目、落ちても問題はない。
私は少し早く歩いて向かう。
「なんで・・・」
こういう時に限って、バスが遅い。
こう言う不安な時に、こんなことがあると余計に不安になる。
一本分バスは遅れてきて、結果的に学校に着くころには、いつもと同じ時間になってしまった。
私は息を切らせながら、部室に行く。
部室に行くまでの道には、いつもより人が多い。
「はあ、はあ・・・なに、これ・・・・・・」
部室の前には、軽く人だかりができていた。
部室には、冬と風夜、あとは普段もっと遅く来るはず幸也の姿が。
「・・・あ、来るな!」
私に気づいた風夜が、立ち上がって私にそういった。
「ど、どうしてよ・・・」
私がそういうと、風夜は悲しくも、困った顔で私から顔をそむけた。
「答えてよ、何か・・・あ・・・たの・・・」
見てしまった・・・。
風夜の足の隙間から見える。
黒い影を・・・。
「・・・クロ?」
「っ・・・!」
風夜が、明らかに『しまった!』という表情をした。
後ろにいた冬たちも、私の方を見た。
「・・・どいて」
「・・・・・・・・・・・・」
私が言うと、風夜は閑念したように、横にどいった。
その表情は、下を向いていて、わからない。
「・・・あ・・・ああ・・・ああ・・・・・・」
風夜がどいたことで、ほとんどわかっていた。
ああ、そういうことなのね、だから普段遅い幸也もいて・・・でも、何で私を一番に呼んでくれなかったんだろう。
そんなことを心の中で思った、それは違うと思って、私はゆっくりと歩み寄ったが・・・。
結果、それは確かにクロだった。
倒れたまま、ピクリとも動かない、クロだった。
「・・・あ・・・え?」
目を当てられず、背くと、机が目に入った。
そして机の上にある物の状態が変わっていたことを知った。
昨日机に上に置いたサラミが、なぜか敗れて半分ほどかじられていた。
「・・・たぶんだけど・・・サラミを食べたときに、ラップとかも食べて・・・喉に詰まらせたんだと思う」
風夜が隣に来て、解説された。
「・・・ケージは・・・開いてらしい」
それ以上は、聞いてなかった。
というより、自分の犯したミスによって、最愛の家族が死んでしまったことで、頭が真っ白なっていた。
冬を見ると、ただ静かに泣いていた。
「ごめん、これは部長の・・・俺のミスだ」
「ちがう・・・よ」
そういうと、何かを悟ったのか、風夜がこっちを見たのがわかった。
愛犬を失った風夜だからこそわかる、私の考えていること、『ちがう』といった私の心境。
「私の、せい」
そういって、気づいたら、学校を出て、駆け出し、家に帰っていた。
その時の現場を目撃した時の癒菜は、震えていた。
でも俺は、かける言葉もなかった。
あの時の癒菜は、まるで数年前の自分を見ているようで、言葉が出なかった・・・。
その日から二日、俺たちはクロの葬儀で忙しかった。
それから癒菜は学校に来ては、すぐに体調を崩し、早退したり休んでたりした。
クロの死の原因は、やっぱり喉に美にビニール繊維のものを詰まらせた、窒息死。
でもこれは、誰のせいでもない。
偶然と偶然の重なりによって引き起こされた事故。
ミーナを失った俺だからわかる、この感情。
『あのときしっかりこうしてれば』という気持ち。
でも、そう思ってももう後の祭り、どうしようもできない。
癒菜はクロの葬儀に来ることはなかった。
今回のことで、癒菜が変な気起こさないか心配だ。
そしてクロの葬儀からさらに数日。
「なあ、風夜・・・癒菜先輩のとこに、行ってやってくれよ」
「いいけど・・・お前が行かなくていいのか?」
「いいんだ、俺は今の先輩の気持ちはわからない・・・確か前に、大切な愛犬を事故で亡くしたんだよな? なら、お前が行くべきだ。お前なら、きっと先輩が感じていることがわかるはずだ」
その時に幸也は、珍しく落ち込んでいた。
恐らくは、何の力にもなれない自分にだろう。
俺は幸也の思いも胸に、先輩の家に行くことにした。
俺はその日の放課後、学校が終わると、一目散に先輩の家に行った。
家のドアを引くと、なぜか鍵は開いていた。
俺は一言言って家に入った。
「癒菜? いるか?」
癒菜の部屋の前に行き、ドア越しに話しかけた。
すると、小さく、消え入るそうな声で『・・・なに』と返ってきた。
「な、なあ、クロのことだけど・・・メールは見てくれたか?」
俺は、葬儀の日に、癒菜にクロのことに関してメールを送っていた。
本当は、それを癒菜に伝えてはいけない気もしたが、癒菜だからこそ知ってほしくて、死因などを書いたものを送った。
「・・・帰って」
「みんな心配してるんだ、せめて顔を見せてくれ! 開けるぞ?」
そして俺がドアノブに手をかけた瞬間。
「こないで!」
――バンッ
ドアに、何かが強く当たる音と振動がして、俺は反射でドアから一歩引いた。
「わかった、中には入らない」
「私部活やめたはずよ」
そう、クロの事件の次の日に、癒菜は退部届を出していた。
もちろんその紙は俺のもとに届いている。
「クロのことを何も想うなとはいわない、でも、前に進まないと! いままでそれを乗り越えてきただろう!」
俺達の部活は、いくつもの死と生を見てきた、こんなことは言ってはいが、死にはもう慣れていた。
最初は泣いて、次の日はその子に悔いのないような生活を送る。
みんなでそうしてきた、もちろん癒菜も・・・。
でも口でそういっても、実際は、クロに関しては違う。
癒菜はクロに対しては、特別な感情を、家族同然の感情を抱いて、一緒にいた。
それを乗り越えるのは、難しい。
「死んだのは、誰のせいでもない! あれは事故だ!」
「事故? 私のミスじゃない!」
その言葉と共に、またドアに何か飛んで当たった音がした。
「今の私の気持ち、何もわからないのに、知った口聞かないで!!」
「俺が知らないとでも思うか!?」
癒菜も知っている、ミーナの死。
わからないわけない。
わかるからこそ言う。
同じように、追い込まれないように、誰かが手助けしてやらないと、彼女の心は持たない。
「・・・ごめん」
「え?」
その言葉が、俺に向けられたものなのか、それとも、別の何かに向けられたものなのかは分からない。
・・・それから、何度も癒菜の名を呼ぶが、返事がない。
ミーナを失った時、追い込まれた俺が最後に考えた行動。
それが脳裏を過る。
「癒菜、入るぞ!」
俺はドアを蹴破る・・・とまではいかないが、勢いよく開け入った。
「っ・・・癒菜!」
薄暗い部屋のベットの上で、カッターを持って自分の喉元に当てている癒菜が目に入った。
すで刃先が数ミリ入っていて、血が出ていた。
「やめろっ!! このっ!」
俺は癒菜からカッターを取り上げようとすると、彼女は抵抗した。
「いやっ、やめて、離して!!」
「っ・・・ふざけるな!!」
俺は彼女の身勝手な行動に、つい手が出てしまった。
・・・気が付いたら、彼女の頬を、叩いていた。
目の前には、頬を抑えてすすり泣く癒菜。
俺の手には癒菜の持っていたカッター。
「あっと、えと・・・ごめん、いた・・・かったよな?」
しかし彼女から返事はない。
でも頷いてはくれた。
「・・・私こそ・・・ごめんなさい」
「癒菜が死んでも、悲しむ人が増えるだけだ、クロも喜ばない」
俺は隣に座り、癒菜の手を握った。
その手は、震えていた。
「・・・うん」
俺は落ち着いた癒菜から、絆創膏の場所を聞いて、喉元に張った。
幸い、喉の傷は浅く切っただけで、大事に至ることはなかった。
「それじゃ、俺は・・・」
「まってっ・・!」
癒菜に制服の裾をつかまれた。
「今日は・・・帰らないで、一人に・・・しないで」
その弱々しく、今にも消えそうな声は、彼女の今の全力の声だとわかった。
「それはつまり・・・泊まっていけと?」
癒菜は、静かにコクリとうなずいた。
次の日は週末だってこともあり。
結果、泊まってしまった。
人生初の、女の子の家へ泊まるという行為を、こんな状況ですることになるとは、思いもしなかった。
そして、そんなこともあったが、癒菜は来週からは学校に来てくれるように。
しかし・・・。
「本当にやめるのか?」
「ええ、私のしたことは、許されないことだわ・・・たとえみんなが許しても、私が自分を許せない」
説得は試みたが、部活はやめると聞かず、仕方なく退部にした。
それからは、部室にはいっさい足を踏み入れなくなったが、俺や冬達との関係はその後も続いた。
癒菜が部活をやめた理由、今回でやっとわかりましたね!
本編の方では、癒菜を引き戻すのはうまく行くのでしょうか。
それではまた次回の投稿でお会いしましょう!




