俺不思 ショートストーリー過去編 癒菜と子犬の過去
今更ですが、俺と不思議少女の一年間。
では長いので、略称として『俺不思』にしました。
他には『俺少』とかもありますが、何か良い案があれば、教えていただきたいです。
※冒頭部分が抜けていたので修正しました。
では、どぞ(/・▿・)/
俺がこの高校に入ってすぐのことだった。
――その日は雨が降っていた。
俺はいつも通り、校舎裏にある部室で、保護した子犬と子猫の看病や餌やりをしていた時のことだった。
この日の部活の当番は、冬と俺だけだった。
しかし、急に勢いよく部室のドアが開かれた。
「風夜、この子どうしよう!」
顔を真っ青にして、息を切らたずぶ濡れの癒菜が荷室に入ってきた。
その腕には、黒い毛並みの、人の赤子の大きさの子犬を抱えていた。
「お、おい、濡れてるじゃないか、風邪ひいたら――」
「そんなこといいから、この子どうしよう!」
癒菜は自分のことよりも、子犬が心配でたまらないらしい。
「落ち着けよ、まずどうしたか教えてくれよ、な?」
「癒菜、深呼吸深呼吸!」
このときはまだ、冬は癒菜のことを『先輩』と付けてなかった。
慌てている癒菜に、深呼吸するように言っている。
「・・・はぁ・・・えっと、まず、帰りの途中に、雨の中道に捨てられてるこの子がいて、子供たちにいじめられてて、助けてあげたんだけど、全然動かなくて、それで私、無我夢中で走って・・・」
俺は聞きながら子犬の様子を見た。
見たところ外傷といえば擦り傷くらいだ。
あとは・・・。
「軽い脱水症状だな、あとは同じく軽い低体温症、しっかりと面倒見てれば、明日には良くなるさ」
「本当!?」
落ち着いていた癒菜が、今度は嬉しさのあまり声をあげた。
「でも誰かが面倒を見てないとダメだ、暖かい環境で、つきっきりで面倒みないと」
「なら私がやるわ!」
すぐに癒菜が手を挙げて答えた。
「そのかわりしっかり面倒見てくれよ?」
「もちろんよ、それじゃあ帰るわね!」
癒菜はまるで我が子のようにを大切に、毛布にくるまれた子犬を抱き抱え、部室を出て行った。
「・・・ただいま」
そういっても、私の家には誰もいない。
返事は当然帰って来ない。
「でも、今日はあなたがいるわね」
そういって私は子犬の頭を頬で撫でた。
この子を何があっても守ってあげたい、そんな気持ちが込み上げてくる。
・・・子供を持つと、こんな感じなのかな。
「ここで待っててね」
私は今だ眠る子犬をソファーに寝かせ、台所に立った。
帰りに買った哺乳瓶と粉ミルクを作るためんだ。
一緒に子犬の育て方と言う本も買った。
ミルクの作り方も、飲ませ方もばっちり。
「・・・よし、できたわ」
私はしっかりと冷まし、適度にぬるくしたミルクを持って、子犬の元に行った。
「さぁ、飲んで、ミルクよ?」
私は子犬を抱き抱え、本の通りにミルクを与えていく。
すると子犬は、今だ目は覚まさないものの、反射ゴクゴクと飲んでいく。
「可愛いなぁ」
飲ませた後はしっかりとげっぷをさせて、ソファーに寝かせてあげた。
この子の寝顔を見てるだけで、癒される。
そのあとはお風呂にはいり、自分もしっかりと体を温めてから眠る準備に入った。
私はお風呂から出たあと、子犬を連れて部屋に行き、ベットに横になる。
そして横に子犬を下ろした。
「明日には・・・目が覚めるかな?」
誰かに言うように、言った。
すると、今日は走ったし、体が温まった為だろうか、急に眠気が襲ってきた。
私はそのまま子犬をとなりに寝かしたまま眠った。
次の朝、私はいつもよりも騒がしい朝を迎えた。
「ぅ・・・ん、なに?」
眠い目をこすりながら体を起こした。
いや起こそうとした。
でも、お腹のあたりに暖かく、重い感じがして、私は思い出した。
「あの子はっ!」
私はお腹にある重いそれを手に取り、起き上がった。
それは昨日の子犬で、その子は私を見るなり、高い声で『ワン』と一回鳴いた。
「よかった・・・」
無事子犬が目を覚めたことに、私は感動し、自然と涙が頬を伝う。
放課後、私は軽快な足取りで子犬と共に部室へと足を運んだ。
「風夜、見てみて!」
私は抱き抱えていた子犬を机に下ろした。
すると部室にいた風夜と冬、幸也はみんな嬉しそうにして、喜んでくれた。
そして私は、喜ぶみんなに一つお願いを聞いてもらった。
「聞いて欲しいことがあるわ、この子の名前なんだけど・・・」
すると、みんなが私の方を見た。
みんなの視線の中には、子犬も入っている。
「クロなんて、どうかしら・・・」
この名前はありきたりだけど、メスにつけてもなんの問題もない名前だ。
私の提案を、みんなが快く賛成してくれた。
これからこの子の名前はクロになった。
風夜の話だと、クロの怪我は元々対したことがないから、部室のケージにいれてもいいって言われた。
・・・でもなんだろう。
私がケージに入れようとすると、『クンクーン』て鳴いてずっと鳴きっぱなしだ。
でも授業の時間は仕方なく、私はクロを部室に放し飼いでいいかと、この部活担当の先生に聞いてみたところ、先生も人並み以上に動物が好きで、すぐに私の意見を聞いてくれて許可してくれた。
クロが部活に来てから数日、今日もいつもと同じように部室に足を運んだ。
生徒会長をやっているとあまり時間がなくて相手をできないけど、私が来るとクロは、いつも嬉しそうに私の膝の上に乗ってくる。
部室は畳で、八畳もあって、部屋の壁一面にケージが積んである。
どの子も少し退屈そうではあるけど、週に一度の部室の裏にある今は使われていないコートに放し飼いの時は、みんな楽しそうにして走り回っている。
今まで保護した動物は三十頭、今いるのは十五頭。
捨てられたりしている動物は、みんな老犬だったり、病気だったり、弱った状態で私達の元にやってくる。
そんなことなだけに・・・・・・すぐに命を落とす子もいる。
最初は悲しかったけど、今となっては、あの子たちも分も、あの子たちのような子を増やさないように精一杯頑張ってる。
月に一度は市内の行ける範囲まで、動物たちと歩いて、動物を捨てないようにビラ配りをしているほどに。
「ねえ風夜、この子なんで捨てられたのかな?」
私はクロの身分証のような、この部にいる動物一匹一匹にある詳細が書かれた紙を作っている風夜に話しかけた。
この紙は生徒会がしっかり保管してる。
「そうだなあ、だいたいの理由が欲しくもないのにたまたま子供ができた、多く生みすぎて困った、とかそんなもんだな」
風夜は書きながら私の方を一切見ないで書いていた。
机には、いくつも辞典が置いてある。
「あー! わっかんね!」
「ん・・・どうしたの?」
今の今まで集中していた風夜が、急にがむしゃらに頭をかきながら寝ころんだ。
私はクロを抱いて風夜の書いていた紙と辞典に目を向けた。
紙は誕生日と血統の部分だけ書かれていなかった。
机の上の辞典は、様々な犬が紹介されている辞典ばかり。
「クロの種類がわからないんだよ、何見ても載ってないし・・・どうするかなあ」
「柴犬じゃないの?」
「いやそうだと思うんだけど・・・」
柴犬とは毛並の感触が違うみたい。
試しに私は、保護した同じ黒色の柴犬の毛並と比較してみた。
確かに、似てるようでなんか違う気がする。
「雑種だとして、何と合わせたかわからねえ」
「いいわよ、そこまで詳細に描かなくても、この子がここにいるってことだけで」
「俺が納得いかねえ!」
そして再び机に向かって探し始めた。
私はただその背中を眺めていた。
「・・・終わった!」
そんな言葉に、私は目を覚ました。
いつの間には寝落ちしていたみたい。
隣には、丸くなってクロが眠っている。
「あ、わるい、起こした?」
「ええ、おかげさまでね・・・それで、どうなったの?」
「あきらめた」
そういって私に紙を渡してきた。
結局見つからなかったらしい。
「確かに受け取ったわ・・・ってもう六時じゃない、かなり寝てたのね、私」
「ぐっすりとな」
風夜が笑ってグッドサインをした。
「送ってくか?」
「ううん、大丈夫よ」
私の家はそれなりに遠く、時間もかかる。
だからこの時間から送ってもらうと、風夜の帰りが遅くなってしまうから、私は遠慮した。
風夜が鍵を閉めるため、私はクロを抱いて外に出た。
嬉しいことに今日からクロは、私の家で夜は過ごすこともになった。
どうやら夜鳴いたりするため、苦情ではないものの、鳴いていたと連絡があったと聞いた。
そこで、苦情が来る前に、私が家で預かることにした。
「鍵、私が返しておくわ」
「いいのか?」
「ええ、問題ないわ」
風夜が「なんか悪いんな」といって私に鍵を手渡した。
「それじゃ、明日」
「ええ、また明日」
私は風夜が歩いていった方向とは反対の、職員室の方に歩いていった。
「失礼しまーす」
職員室からは靴を脱がずに裏口から入ることもでき、先生がいたら渡して、しまってもらうこともできる。
私が声を出すと、私の近くにいた先生が私の要件を聞きに来たため、私は鍵を渡して職員室を後にし、正門へと向かった。
正門に向かって歩いている時だった。
「ん・・・幸也?」
正門につくと、見に覚えのある髪型の人物。
「あ、癒菜先輩?」
私が近づいてくるのが分かったのか、後ろを振り返りそう言った。
「何してるのよ」
「冬の奴を待ってるんですよ、あいつ、俺に待ってろって・・・」
私は幸也の言ってることに疑問を感じた。
「冬なら帰ったわよ? 何時間も前に」
「えっ・・・本当ですか?」
「え、ええ、三時くらいに部室に挨拶にだけ来たわ」
私が真実を言うと、幸也はとても悔しそうに「またやられた」、「ゆるさねえ」等ぶつぶつと小言を言っている。
「しかたないわね、じゃあ私と帰る?」
帰る方向は同じ、途中までなら一緒に帰ることができる。
それに私は生徒会にいるだけあって、部員のことは、今まで一緒にいた風夜と、部活の話でよく合う冬しかしらず、幸也のことは、それほど多くは知らない。
・・・これはいい機会かもしれない。
「ほんとですか! ぜひお願いします!」
「ほら、行くわよ」
「はい!」
帰路を歩いて数十分がたった頃。
「・・・ねえ! 何か話すこととかないの?」
「えっ、そんなこと言われても困りますよ」
いつものほほんとしている幸也にしては珍しく、焦ってるようだった。
風夜達といるときはいつも楽しそうに次から次へと言葉が出てくるのに、私と一緒の時は全然離さない。
数十分もこのままだと、さすがに気まずい。
「そうですね・・・・・・」
片手を顎に当て、珍しくまじめに話すことを考え始める幸也。
私はその横で眠るクロの背中を優しく撫でる。
「・・・あ、胸大きいですね!」
「ふ・ざ・け・な・い・で!」
「あ、はい、すいません!」
幸也は私が蹴り構えを取ると即座に謝り、再び考え直したようだ。
「・・・にしてもあれですね、こいつさっきから騒いでるのに、全く起きませんね?」
人語とのように言う幸也に「騒がしいのは誰のせいよ」と突っ込みたいところだけど、せっかくまともな会話をし始めたのに、空気を壊したくないから、突っ込むのはやめた。
「そうね、ずっと捨てられて、寂しい思いしてたから、きっと誰かの腕に抱かれ安心したんだと思うわ」
「くうー! 羨ましい! 俺もクロ見たいな子犬になりてえ!」
そういって幸也は雄たけびなのか悲しみからの叫びなのかわからない声を上げた。
「・・・どうしてよ」
「そりゃあ、子犬になれば、毎回先輩の着替え見れたり、先輩の柔らかい腕と、程よく実った――」
「そのナニ蹴るわよ!」
私は幸也のお尻に一発入れてやった。
「いや、もう蹴ってます!」
「・・・はあ、まったく」
もうため息しか出ない。
・・・このセクハラ男、風夜とは大違いよ。
「でも先輩、ほんとクロにデレデレですね」
「デレデレじゃなくて、可愛がってるって言ってちょうだい」
話していると時間が立つのがはやく、あっと言う間に互いの帰路の別れ道にまで来てしまった。
「それじゃあ、私こっちだから」
「はい、それじゃあまた明日!」
私に蹴られたにも関わらず、幸也は嬉しそうに口笛を吹きながら歩いていく。
「・・・・・・幸也!」
私はまだ背中の見えている幸也に向かって名前を叫んだ。
「あなた、クロのような子犬になりたいって、そういったわよね?」
「え・・・あ、はい」
幸也の反応から察するに、冗談だったようだ。
でもこの胸のもやもやを晴らしたい。
さっき幸也と話てから、抱き始めたこの胸のもやもや。
・・・・・・これはきっと――
「私は、今の幸也が一番好きよ!」
「・・・え。」
幸也は呆気に取られていた。
私としては、友達以上、恋人未満という感じなのだが、自分の本心は違う・・・たぶん。
きっと本心は――。
「か、勘違いしないで! とと、友達としてよ!」
「はは、ですよね。まあ、俺もですけどっ!」
そういって、私と幸也はそれぞれの帰路を歩いていった。
ごめんなさい、次回投稿遅れます。




