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「あぁ、そうそう海斗。ちょっとまじめな話しよ」
誠二の言葉で部屋の空気がピリピリしたものに変わる。そう、誠二の抱えた猫が逃げ出すほど。
「マジメな話って?」
碧斗は誠次からのきりだしに驚きつつも真剣な表情を見せる。
「知ってんだろ?ノートのことを」
誠次が鋭い声で淡々と言う。碧斗は背筋に寒気が走った。
怖い。
それしか言葉が出てこない。笑っているようで笑っていないいつもと違う誠次の表情に困惑する。
「ああ。知ってる」
「俺のノートを見たんだろ?」
「あぁ、見た」
碧斗の脳裏に人の名前がずらずらとかかれたあのページが思い浮かぶ。誠次が顔をそらした。
「悪かったよ。それだけ言いたかったんだ」
碧斗も顔をそらす。
お前は人を消したんだぞ!
そう言いたくても言えなかった。自分も一人殺した。その事実は消せないのだから。
「なぁ、月葉が……高田月葉が話してるとき黙ってたのは影響を受けてなくて細かい設定を聴くためだったのか?」
「そうだ」
誠次は簡単に認める。碧斗は認めてほしくなかった。完全に日常が、友情が、崩壊する音を聞いてしまった。
「今日は……もう帰るよ」
誠次とは目をあわせず部屋を出ていく。走るように家を出た。
§§
これと同じ性能を海碧斗も持つ。
§§
誠次は一人になった部屋でそっとノートを開く。ノートを持つ手に力が込められた。
「くそ!やられた!……もっと早く手を打つべきだった」
手に持ったそのノートを破く。できるだけ小さく、ぼろぼろになるように。
「どこまでルール知ってんのかしらねーけど……」
目の前にある机を全力で殴る。大きな音がした。
§§
海碧斗と桜田誠次のすれ違いが起きた翌日、学校は休みであり生徒登校はない。また、教員は体育館の鍵を開けのちに自殺を決行せよ。生徒たちは全ての人間との接触をたち、自室から出ることを拒め。
§§
7時。
鳴り響くアラームにより目を覚まし、腹部などに巻かれた包帯をとった。うっすらと傷跡は残っているものの、そのまま制服に着替える。誰もいないリビングで朝食をとり部屋に戻った。スクールバックを持ち家を出る。誰もいないバス停の前、少し離れた場所にで足を止めバスを待つ。
7時47分。
少し遅れてきたいつものバスに乗り込みラッシュ時間を過ごす。すいているとは言えないがぎゅうぎゅう詰めではない。10分ほどゆられいつものバス停―TB中学校前で降り校門をくぐる。いつも聞こえるはずの運動部の掛け声が聞こえずふと時計を見た。
8時05分。
朝会があるわけではないので焦ることはなく、静かすぎる校舎内を不安に思いながら歩く。教室には誰もいない。黒板に大きく書かれた文字。
体育館 ノート
碧斗は鞄からノートを取り出し体育館に走る。階段を駆け下り冷たい扉をあける。そこには二人の影。碧斗は焦りを見せた。
「月葉!誠次!」
無意識のうちに二人の名を呼ぶ。誠次は今まで見たことがない表情で、月葉を睨んでいた。