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「まさかな……」
碧斗は教室から自分以外がいなくなるの待ちそっとノートを取り出した。
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伊吹梨乃、存在消失。代わって井上瑠奈の存在出現。
桜田亜澄、存在消失。代わって佐野真奈美の存在出現。
大沢瑞樹、存在消失。代わって大野隼人の存在出現。
飯田沙希、存在消失。代わって井端光の存在出現。
大本心葉、存在消失。代わって岡本真の存在出現。
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ずらずらと並べられた言葉。いや、名前。代わって以降の名前は確かにクラスメイトだ一ページにずらりと並べられ規則正しく書かれた文章。
「マジかよ」
笑おうにも笑えず微かな足音が耳に入り碧斗はノートを机に放り込む。すばやく自分の席に戻り寝ているふりをした。
「いや~ホント忘れ物」
扉があき誰かが入ってくる。声からして誠次だろう。碧斗はそっと顔をあげ今起きたというようにあくびをした。
「誠次か……。何やってんだ?」
少しわざとらしくなり微かに声が震えていた。
「うん、ちょっと忘れ物。海斗こそ何やってんだ?」
「いつの間にか寝てたんだよ」
碧斗は苦笑をつくる。誠次がケラケラと笑った。
「笑うなよ!」
いつものようなノリに戻ったと碧斗はほんの少し安堵する。
「あーそうそう。暇なら今日家こない?」
碧斗は一瞬警戒した。いつもの問いなのに違う意図を感じたからだ。
「そうだな。そのまま行く」
それでも断るのは不自然だと思い、出来る限りいつも通りの振る舞いで頷く。鞄を持ち教室を出た。
「おしいなぁ。もろいなぁ」
一人なことを確認し呟く。携帯電話を閉じうっすらと笑みを浮かべた。
もっとも、わかるわけないんだけど。
心の中で呟き嘲笑うようにノートを焼却炉に入れた。
いつものように部屋へあがる。相も変わらず奇麗な部屋でゴミ一つ落ちていない。
「ほんと変わんねーな」
ふと碧斗は呟く。
「母さんが片付けてるからな」
少し自慢げに言う誠次に心中苦笑しつつ適当に腰かけた。不意に扉があき猫が入ってくる。誠次がイライラしながらもヘットホンを置き猫に背を差し伸べた。
「くんなって言っただろ?ゴンザレス。海斗のところにでも行ってろ」
「全力で断るわ」
碧斗がうんざりとした表情で言う。誠次の表情が一変し、笑顔になった。
「あれー?碧斗くんは猫嫌い?」
「うるせー。あと、猫の名前変わった?」
誠次からやや離れつつ問う。
「猫自体が変わったんだよ!いいだろー、ゴンザレスっていうんだ」
「あぁ、最悪なネーミングセンスだ」
碧斗はあきれた表情を見せなんとか話題をそらしていく。
「な!悪くないって!……」
必死に反論を始める誠次にあきれつつ、碧斗は思う。
話題そらす方向間違えたわ。
「あー、はいはい。悪かったね」
やや棒読みながら言い、小さく肩を竦めた。
「あぁ、そうそう海斗。ちょっとまじめな話しよ」
誠次の言葉で部屋の空気がピリピリしたものに変わる。そう、誠次の抱えた猫が逃げ出すほど。