P3
P3
うるさい。
ケータイのアラームがこれでもかという音量で鳴り響いていた。
7時。
暖かな布団をでて制服に着替える。腕に巻かれた血のにじむ包帯が夢でないことを語りじわじわと広がる痛みがこの快楽を忘れるなと叫んでいるように感じた。
誰もいないリビングで朝食をとり部屋に戻る。スクールバックを持ち家を出た。ヒトのやわらかいあの肉と少し硬い筋肉をこの手は求めるかのように閉じて開いてを数度繰り返した。
誰もいないバス停の前、少し離れた場所にで足を止めバスを待つ。頭の中には昨日の出来事がぐるぐると回り続けていた。
7時45分。
いつものバスに乗り込みラッシュ時間を過ごす。すいているとは言えないがぎゅうぎゅう詰めではない。いつものバス停―TB中学校前で降り校門をくぐる。朝が早いからかまだ運動部が朝練をしている。リズムのよい掛け声や足音がすぐそこをとおりすぎた。
靴を履き替え階段を上がる。正面の教室―2年1組へと足を踏み入れる。あんなことがあった後でも学校は機能するらしい。できれば行きたくなかったがそうもいかない。首と腕の包帯、尋常じゃない腹部の痛み。どうしても体育館で確認したいことがあった。
8時。
この時間は誰もいない。静かなこの雰囲気がお気に入りだ。黒板には今日の日付―12月16日、その下にはスピーチ・海碧斗と書かれている。この時点で気分は勢い良く下がった。どうせしばらくは学校内で浮くだろう。なのにこんな面倒なことをする必要があるのだろうか?誰も聞かないのに話す必要はない。そういう思考が働く。やることがあったと思いだしノートを片手に体育館へと足を運んだ。
立ち入り禁止になった体育館の前、昨日の記憶は頭の中を流れだす。震える生徒と恐怖しながらも立つ教員。男たちの顔やかけつけた警官の顔。事情聴取されたときはすべて「わからない」「覚えてない」で通した気がする。深夜に病院抜け出したのでその後がどうなったかはしらない。
ゆっくりとした手つきでノートを開いた。
§§
吐いた息は白くなり天空をさまよってから消えゆく。体育館の二階部分、白い扉に隠された階段を急ぎ足で上り体育館放送室でミキシングを行う。出されていた椅子に座り時間をまつ。この時間はすごく暇だった。
チャイムと同時に朝会が始まる。意外にも静かになっている体育館。マイクを通しスピーカーから聞こえる声。先日……から始まる校長の長い話。
教員の号令で終わりを迎えるはずだがざわめき声と足音が聞こえ静寂に包まれる体育館。端による生徒。生徒をかばうように立つ教員達。
正面に立つは男が二人。ナイフを持った男と銃を持った男。どちらも身体付きはいい方だろう。しかし碧斗は飛び出しカッターナイフで男を刺した。そして楽しそうに笑った。
警官からの問いかけには憶えていないわからないと答え病院を抜け出した。
§§
ここから先は別の物語がはじまっている。しかし昨日の記憶を探れば探るほどこの小説と似ているところがあった。受け答えや行動パターンなど。
「うわぁぁ。何これ。理想の彼女の……にメチャ似なきがする。どうせならデスノートとかほしかったわ」
完全な独り言を言ってみるがただむなしくなるだけ。教室に帰り注目を浴びる中席に着く。シャーペンを片手にルールを知るため適当に書き込んでいく。
『高田麗菜。自殺。一分後窓から飛び降りる』
と書いてみる。窓によりかかり何人かと話をしている高田は碧斗が最も嫌いな人物だ。死んだら死んだでラッキーだと思っている。しかし一分たっても飛び降りない。高田は楽しそうに話していた。
『賑やかな教室の中、クラスメイト・高田麗菜は突然窓から飛び降りた』
描き方を変えちらりと高田を見る。先ほどまでの楽しそうな表情とは一変し浮かない顔をしていた。クラスメイトとほんの少しはなし突然窓から身を投げた。女子生徒の悲鳴と他のざわめき。誰かが階段を駆け上がる音。
「俺が殺した?」
ざわめきにかき消されるような小さな声で呟く。碧斗はノートを即座にしまった。