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夜、人影に潜む  作者: 影人
第1話:放課後は夜の気配を帯びて
5/41

1‐4

「兄貴っ」

 どしゃ降りの下、ぼくは墓の前で膝をつき、両こぶしで地面をたたいた。雨でぬれたカッターシャツが、冷たく背中にはりついている。

 兄の、嫌なことに遭っても笑顔でいられる強さに、憧れていた。自分よりも強い奴に向かっていける姿勢を、すごいとすら思った。

 そんな兄の墓前で泣きくずれる自分は、なんてぶざまで、みっともないんだろう。

「ぼくも、兄貴のようになりたいよ」

 雨の冷たさに打ち震えながら、叫ぶ。

 そのとき、近くで、泥を踏む音。

「小さいな」

 一瞬。

 雨音がやんだ。

「それが、兄にたむける弟の顔か」

 胸を突き刺す鋭利な声色が、大雨の中、たしかな存在感を放つ。

「弱い自分が嫌なのなら、ひたすらに強さを求めることだな」

 ぼくは這いつくばったまま、声のしたほうを見た。

 墓石六つ分ほどへだてた右側から、一人の男の人が歩いてくる。まだ若い。二十五歳くらいだ。細い体に白衣を着こみ、片手でこうもりガサを差していた。

 顔には見覚えがある。校医の国沢岳人くにさわ・がくと先生だ。

 岳人先生は少し眉にしわを寄せ、感情を感じさせない声色でつぶやいた。

「陽之上。お前には兄と同じく――『夜』を討つ者の血が流れている」

 遠くで雷鳴が響いた。

「どういう意味ですか」

 ぼくは上体を起こし、その場にお尻をつけた。垂れた前髪が、ぺとりと鼻先につく。

 そんなぼくを岳人先生は無表情で見つめながら、やがて陽之上家の墓石の横に立った。

 目を閉じ、墓石に向かって手を合わせる。

 そして、ゆっくりと開眼した。

 改めて見ると、異様な目だ。黒目ばかりが大きく、そのくせ一点の光も宿していない。まるで白目の中心に、暗い穴が開けられているようだ。

「知りたければ、そうだな。今夜にでも学校へ来い。恐らくは、この言葉の意味もわかるだろう」

 先生はくるりときびすを返し、もと来た道を引き返していく。

「どうせじきに、夜はくる」

 立ち去る先生を呼び止めることもできないまま、ぼくはぼうぜんと空を見上げた。

 ほのかに闇に包まれた雨空は、じょじょに夜のを帯びてきていた。


挿絵(By みてみん)


 みるのさんに描いていただきました。

 主人公・陽之上明日ひのかみ・ともろうのラフ絵です。

 明日の気弱そうな雰囲気が、これ以上ないくらいでています。本当にありがとうございました。


みるのさんブログ

http://blog.goo.ne.jp/namaharu01

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