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夜、人影に潜む  作者: 影人
第3話:見えない心と、切れない糸
23/41

3-2

 門をくぐると、空はもう茜色に染まっていた。遠くで、ヒグラシの鳴く声がする。

「カバン、一つ持とうか」

 人気のない道を歩きながら、ぼくは隣を歩く国沢さんに提案した。

「え? ああ、いいよ、いいよ。気を遣う必要ないって」

「遣わせてよ、こんなときくらいは」

 固い表情で言い放つ。

「んー。ま、そういうことならお願いするよ。頼もしいね。さっすが、男の子だ」

「……ほっぺた、だいじょうぶ?」

 受け取ったカバンを左肩に通してから、聞く。彼女の顔を見ないまま。

「ん? ああ、ヘーキ、ヘーキ。わたし、間違ってた。自分の気持ちばっか口にして、向こうの事情なんてちっとも考えてなかった。そういうとこ、ちょっと反省かな」

「間違ってないよ」

 ぼくは前を向いたまま、低くこぼした。

「へ?」

「国沢さんは、ぼくをかばって反論してくれたんだから」

 そうだ。そもそもこれは、ぼくの責任だ。ぼくがあそこできちんと反論さえしてれば、国沢さんはたたかれずに済んだんだから。ぼくがちゃんとなにか言って、戦うべきだったんだ。

 思えば、ぼくはいつだってこうなんだ。肝心なときに尻ごみして。その結果、周りの誰かを傷つけてしまう。

「陽之上くん」

 国沢さんが回りこみ、ぼくの顔をのぞきこんだ。

「ひょっとして、なんか怒ってる?」

 許せなかった。その臆病さで、誰かを傷つける。そんな自分が、嫌で嫌でたまらなかった。

 眉間に力をこめるぼくを、国沢さんは無言でながめる。

と思ったら、「ほいさ!」ってかけ声を上げて、あずけたカバンをかすめ取ってきた。

 そして少し小走りしたところで振り返り、声を快活に張り上げる。

 はにかんだ笑顔。栗色の髪が、夕日をバックに輝いていた。

「やっぱりちょっと、走ろっか」


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