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「そういうことだから、今日は部活、ちょっと遅れるね」
ぐうぜん通りかかった岳人先生に、国沢さんは事情を説明した。
「わかった。俺もいまから、しばらく用事で部屋を空ける。合いカギは失くすなよ」
言って先生は、ふと森永さんを見た。その両目を、わずかに見開く。
ぼくの耳はそのとき、かすかに、彼が息を呑む音をひろった。
なんだ? 先生はなにに動揺してるんだろう。
「おっけー。じゃあみんな、行こう!」
お兄さんの異変に、国沢さんは気づいていない。百メートル走十秒台をたたき出した健脚で、長い廊下を一気に駆け抜けていく。
「おいっ――」
先生が呼び止めたときには、彼女の姿はもう、角の向こう側に消えていた。
ぼくと修野くん、森永さんも、あわててあとを追いかける。
「学級委員のくせに、廊下を走るな。バカタレが」
あきれきった先生の声が、耳の奥にこびりついた。




