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落し物

作者: 尚文産商堂
掲載日:2011/05/31

「あれ?」

「どうした」

大学のパソコン室で遊んでいると、隣のパソコンに名前が書かれたUSBが刺さっているのに気づいた。

「これさ、俺の知り合いだわ。次のゼミの時にでも届けてやろう」

「次のゼミって、お前さ、次の時間だろ」

お昼休みの間だから、次は3時間目だ。

「そうだな。あまり話さないけど、まあ、大丈夫か」

「そりゃそうさ。忘れ物届けたぐらいで、キャアキャアさわぐことはないだろうさ」

友人のそんなささやきが、なんか嫌なフラグを感じさせたが、そのあたりには目をつむって、すでにPCが切れていることを確認してから、USBメモリーを抜いた。


3時間目が始まるちょっと前、すでに座っていた彼女に、俺は近付いて聞いた。

「なあ、USB忘れてたぞ。これ、お前のだろ?」

俺の方を怪訝そうに見て、それから俺の手を見てパッと輝いた。

「あ、私のだ!」

「よかったじゃない、失くしたーって言ってたけど」

「失くしてないよ。忘れただけだって」

そう言って、俺からUSBを受け取ると、再び友人との会話に花が咲いていた。

俺は黙ってその場から離れていこうとした。

だが、彼女に引き戻される。

「あ。ありがとうね」

思い出したかのように、俺に笑いかけながら言った。

「おう、また見つけたら渡すよ」

俺は約束をして、席に座った。


それから3週間ほど連続して、なぜかまたUSBが刺さっていた。

「…まただ。狙ってるのか?」

「いいんじゃね?」

俺の友達はそう言って笑っていた。

「気に入られたんだよ」

「そうかな」

「そうに決まってるだろ。ここまで連続して刺しっぱなしになってるんだし、誰も抜いてないっていうことは、お前を狙っているんだよ」

「そうかなあ」

「そうさ。さあ、もう一歩を踏み出すんだよ」

「初めは友人からだよ」

俺たちは突然の後ろからの声にびっくりした。

「やっぱりここにあった」

「聞いていたのか」

「ええ、最初からね。私は狙ってなんかないから。偶然だからね」

そう言って、USBをポケットにしまいながら、部屋から出ていった。

「…ツンデレだな」

「どこがだよ」

俺は友人のボケに突っ込みを鮮やかに返しながら、彼女の後を追ってゼミへ向かった。

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