落し物
「あれ?」
「どうした」
大学のパソコン室で遊んでいると、隣のパソコンに名前が書かれたUSBが刺さっているのに気づいた。
「これさ、俺の知り合いだわ。次のゼミの時にでも届けてやろう」
「次のゼミって、お前さ、次の時間だろ」
お昼休みの間だから、次は3時間目だ。
「そうだな。あまり話さないけど、まあ、大丈夫か」
「そりゃそうさ。忘れ物届けたぐらいで、キャアキャアさわぐことはないだろうさ」
友人のそんなささやきが、なんか嫌なフラグを感じさせたが、そのあたりには目をつむって、すでにPCが切れていることを確認してから、USBメモリーを抜いた。
3時間目が始まるちょっと前、すでに座っていた彼女に、俺は近付いて聞いた。
「なあ、USB忘れてたぞ。これ、お前のだろ?」
俺の方を怪訝そうに見て、それから俺の手を見てパッと輝いた。
「あ、私のだ!」
「よかったじゃない、失くしたーって言ってたけど」
「失くしてないよ。忘れただけだって」
そう言って、俺からUSBを受け取ると、再び友人との会話に花が咲いていた。
俺は黙ってその場から離れていこうとした。
だが、彼女に引き戻される。
「あ。ありがとうね」
思い出したかのように、俺に笑いかけながら言った。
「おう、また見つけたら渡すよ」
俺は約束をして、席に座った。
それから3週間ほど連続して、なぜかまたUSBが刺さっていた。
「…まただ。狙ってるのか?」
「いいんじゃね?」
俺の友達はそう言って笑っていた。
「気に入られたんだよ」
「そうかな」
「そうに決まってるだろ。ここまで連続して刺しっぱなしになってるんだし、誰も抜いてないっていうことは、お前を狙っているんだよ」
「そうかなあ」
「そうさ。さあ、もう一歩を踏み出すんだよ」
「初めは友人からだよ」
俺たちは突然の後ろからの声にびっくりした。
「やっぱりここにあった」
「聞いていたのか」
「ええ、最初からね。私は狙ってなんかないから。偶然だからね」
そう言って、USBをポケットにしまいながら、部屋から出ていった。
「…ツンデレだな」
「どこがだよ」
俺は友人のボケに突っ込みを鮮やかに返しながら、彼女の後を追ってゼミへ向かった。




