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赤面決闘!【短編】①学園最強の氷の王子を赤面させたら私の勝ちですわ!

作者: 杜英智
掲載日:2026/07/04

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

第1話 告白は、決闘の始まり


「アルベルト・フォン・グラナート様! 今日こそ私が勝ちますわ!」


昼休みの学園。


静まり返った廊下に、私の声が高らかに響いた。


公爵家の御曹司にして、生徒会長。


学園最強と名高いアルベルト様が、ゆっくりと足を止める。


「またセレナ様ですわ!」


「懲りませんわねぇ」


「だって相手はアルベルト様よ? あのカード、一枚で100ポイントですもの」


「勝てば特待生が見えてくるものね」


ひそひそと囁く女子生徒たち。


私は胸を張った。


「そういうことです!」


「今年こそ、そのカードは私がいただきます!」


「でも、アルベルト様に勝つなんて無理でしょう?」


「100ポイントだけじゃないもの。」


「お願いを一つ聞いてもらえるんだから。」


「だから皆、本気で挑むのよ。」


私は胸を張る。


「その通りです!」


「100ポイントカードも、お願いを一つ聞いていただく権利も、全部いただきますわ!」


くすくす、と笑い声が広がる。


「何連敗目ですの?」


「うっ……そ、それは数えない約束よ!」


笑われても構わない。


貧乏男爵家の我が家にとって、特待生は人生を変える大チャンス。


だから私は、学園最強のアルベルト様に何度負けても挑み続ける。


そして今日。


私は、とっておきの作戦を考えてきた。


(今までの作戦は全部失敗……。)


(だったら今回は――)


私は小さく拳を握る。


(恋する女の子になりきる!)


胸がドキドキする。


演技。


これは勝つための演技。


そう自分に言い聞かせながら、一歩ずつアルベルト様へ近づいた。


「アルベルト様」


彼は無表情のまま私を見下ろす。


相変わらず、綺麗な顔。


その黄金色の瞳と目が合った瞬間、心臓が跳ねた。


(だ、大丈夫……演技なんだから……!)


私は制服の裾をぎゅっと握り締める。


「私……」


喉が震える。


(これは決闘。)


(演技なんだから!)


「私、アルベルト様のことが……好きです」


廊下が、水を打ったように静まり返った。


「えっ……」


「告白……?」


周囲の生徒たちが息を呑む。


私は勇気を振り絞って、彼を見つめ続けた。


(赤面してくださいませ!)


その瞬間。


アルベルト様の瞳が、ほんのわずかに揺れた。


けれど次の瞬間には、いつもの冷たい表情へ戻っている。


「……すまない」


静かな声だった。


「今は、その気持ちに応えることはできない」


短くそう告げると、彼は私の横を通り過ぎる。


「今回の決闘も、私の勝ちだ」


その一言だけを残して、振り返ることなく歩き去っていった。


私はその背中を見つめたまま立ち尽くす。


「また……負けちゃった」


渾身の作戦だったのに。


「次こそは……絶対に赤面させてみせるんだから!」


悔しさをごまかすようにそう呟き、私は廊下を駆け出した。



バタン!!


静まり返った生徒会長室の扉が、凄まじい勢いで閉まる。


「ぐっ……!」


アルベルトは扉にもたれかかったまま胸を押さえ、その場に膝をついた。


「閣下!?」


慌てて駆け寄るライナー。


アルベルトの顔は耳まで真っ赤だった。


「可愛い……」


「はい?」


「可愛すぎる……!」


天井を仰ぎ、大きく息を吐く。


「『好きです』だぞ……?」


「あんな真っ直ぐ見つめられて……」


「平気でいられる男など、この世に存在するのか……?」


ライナーは呆れたようにため息をついた。


「でしたら、お受けすれば良かったのでは?」


アルベルトは力なく首を横に振る。


「違う」


「……あれは決闘だ」


「あの告白は、本心ではない」


胸の奥が少しだけ痛む。


「彼女は100ポイントが欲しいだけだ」


「俺に勝てば、特待生へ大きく近づく」


「特待生になれば、彼女はもう、俺を追いかけてくれなくなる」


ライナーは静かに主人を見つめる。


「それでも、嬉しかったのでしょう?」


「……ああ」


アルベルトは苦笑した。


「人生で一番、嬉しかった」


照れくさそうに目を伏せる。


「だが」


その表情が、少しだけ真剣になる。


「告白は」


「私からしたい」


部屋に沈黙が落ちる。


ライナーは肩をすくめ、小さく笑った。


「その状態では、いつになることやら」


アルベルトは立ち上がる。


深く息を吐くと、頬の赤みはすっと消え、いつもの冷徹で完璧な生徒会長の表情へ戻っていた。


「ライナー」


「はっ」


「セレナには誰にも負けてほしくない」


「……?」


「いや」


アルベルトは小さく首を振る。


「正確には、他の男に勝たれてほしくない」


「変なおねだりをされても困る」


ライナーは思わず額に手を当てた。


「結局、独占欲は隠せないのですね」


アルベルトは咳払いを一つすると、何事もなかったかのように書類へ目を落とす。


しかし、その手はわずかに震えていた。


その頃。


何も知らないセレナは、自室のベッドへ倒れ込んでいた。


「もうっ……!」


枕へ顔を埋める。


「次はお弁当作戦で勝ってみせるんだから!」


こうして、貧乏令嬢と鉄面皮な生徒会長の『赤面決闘』は、まだまだ終わりそうになかった。


読んでくださってありがとうございます!

イメージイラスト

挿絵(By みてみん)

セレナ・エヴァンス


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