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# 第二話 泣いていた少女

# 第二話 泣いていた少女


夜の森。


レインは正義の剣アストラを握りながら歩いていた。


まだ信じられない。


ほんの数時間前まで、ただの村人だった自分が伝説の剣を持っているなんて。


「なあ、アストラ」


『なんだ』


「俺、本当に英雄になれるのかな」


少し不安そうに尋ねる。


すると剣は即答した。


『知らん』


「えぇ!?」


『未来は誰にも分からん』


『だが一つだけ言える』


『諦める者は絶対になれない』


レインは苦笑した。


「厳しいな」


『当然だ』


『英雄とは誰よりも傷つき、それでも前へ進む者だからな』


その言葉を聞いた時だった。


――キャアアアア!!


遠くから悲鳴が響いた。


レインの表情が変わる。


「今の声!」


『東だ!』


レインは走り出した。


---


木々をかき分けた先。


そこにいたのは一人の少女だった。


白いワンピース。


長い銀髪。


青い瞳。


まるで月明かりから生まれたような美少女。


だが今は地面に倒れ込んでいる。


そして彼女の前には――


巨大な狼型の魔物。


赤い目を光らせながら牙を剥いていた。


少女は震えている。


「た、助けて……」


レインの足は止まらなかった。


考えるより先に飛び出していた。


「その子から離れろ!!」


魔物が振り向く。


唸り声。


鋭い牙。


恐怖が全身を襲う。


正直、逃げ出したかった。


だが。


少女の涙を見てしまった。


レインは剣を構える。


「大丈夫」


少女に向かって笑った。


「君は俺が守る」


その瞬間。


少女の瞳が大きく見開かれた。


---


魔物が飛びかかる。


速い。


レインは慌てて剣を振った。


ガキィン!!


火花が散る。


腕が痺れる。


「うわっ!」


吹き飛ばされた。


地面を転がる。


痛い。


めちゃくちゃ痛い。


『立て!!』


アストラが叫ぶ。


『ここで終わるのか!』


レインは歯を食いしばる。


終われるわけがない。


まだ始まったばかりだ。


「まだ終わってない!!」


再び立ち上がる。


魔物が吠えた。


レインは真正面から駆ける。


怖い。


足が震える。


それでも前へ。


少女の笑顔を守るために。


そして――


アストラが輝いた。


『今だ!』


レインは全力で剣を振り下ろす。


眩しい光。


夜を裂く一閃。


ズバァァァン!!


魔物は光に包まれた。


そして静かに消滅する。


---


森に静寂が戻った。


レインはその場にへたり込む。


「か、勝った……」


心臓が破裂しそうだった。


すると後ろから小さな声。


「あの……」


振り向く。


少女が立っていた。


月明かりに照らされる銀髪。


本当に綺麗だった。


「助けてくれて……ありがとう」


その笑顔を見た瞬間。


レインの心臓が別の意味で跳ねた。


「えっ」


「え?」


「ええっ!?」


顔が真っ赤になる。


少女は首を傾げる。


「どうしたの?」


「い、いや!」


「なんでもない!」


アストラが呆れたように言った。


『英雄候補が情けないな』


「うるさい!」


少女は思わず笑った。


クスクスと。


その笑顔は、さっきまで泣いていた人とは思えないほど温かかった。


レインは少し見惚れる。


そして思った。


守れてよかった、と。


---


しかし。


二人はまだ知らない。


この出会いが。


世界の運命を変えることになることを。


そして少女――


**ミリア・ルーシェ**が、


大きな秘密を抱えていることを。


---


# 次回予告


## 第三話 追われる姫君


ミリアを村へ連れて帰ったレイン。


少しずつ距離を縮める二人。


しかし平和な時間は長く続かなかった。


ミリアを追う謎の黒衣の騎士たち。


そして明かされる衝撃の事実――。


「私は……王家の人間なんです」


次回、


**『追われる姫君』**


運命の歯車が動き出す!


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