動機と真実
真犯人を追及する盾原。加えて、強盗殺人事件で強盗犯が奪った大金の行方は⁉
〇宇佐岡学園・体育館
驚きを隠せない魚谷。
魚谷「‼私が……?」
教頭「魚谷先生が犯人?」
島口「で でも!あの換気口は結構高い位置にあるから アンモニアガスは届きにくいんじゃ?」
盾原「大丈夫ですよ 校舎裏の備品倉庫のところにあった学習机を台代わりにすればね」
盾原「学習机の上に立って外側の換気口から消火器を噴射したんです」
盾原「なお 魚谷先生はアンモニアガスを吸わないようトリックの準備中 ガスマスクを装着してたでしょう」
盾原「残るは証拠のみですが もうバッチリつかめてます」
魚谷「あっ あるんですか 証拠?」
盾原「もちろんです 凶器に使った消火器の行方を 辿ればね」
盾原「使い終わった消火器はホームセンターや指定取引所が引き取ってくれます」
盾原「殺害後すぐに引き取ってもらうならここから一番近いホームセンターが該当しますね」
名倉「現在 ほかの捜査員が向かってます 決定的な物証が見つかるのは時間の問題です」
魚谷「ですね……」
教頭、魚谷を詰問する。
教頭「魚谷先生!なんで中添先生を!前代未聞ですよ‼」
教頭「生徒の模範になる教育者があろうことか同僚の教師を殺害だなんて!この先学園がどれだけ叩かれるか計り知れない――」
教頭の叱責にキレる魚谷。
魚谷「うるさい‼生徒よりも自分の名誉と進退を第一にする偽善ヤロウに責め立てられる覚えはない‼」
魚谷の怒声にたじろぐ教頭。
教頭「……少し言いすぎました」
魚谷「あんなヘドが出るぐらい見苦しい夜の中添を見たら本気で殺したくなるわよ‼」
糸畑「中添先生が…夜に何を?」
魚谷「買春よ!1か月前の夜遅くにどっかの学校の女子生徒とバレないようお互い会社員に変装してラブホデート」
魚谷「ホテルを出た後 数百万円相当の高級ブランドバッグを女子生徒にプレゼントして!」
魚谷「私と付き合ってた時 そんな高額なプレゼント 1回もなかったのに‼」
魚谷に同調して呟く糸畑。
糸畑「おそらく…僕の妹もないですね ブランドなんか」
河田「ブランドバッグって よくそんな大金を」
増城(中添のヤツ!強盗をあてにしたな!)
魚谷が糸畑に向かって、
魚谷「なんで中添が私を捨てて糸畑先生の妹さんに 鞍替えしたか知ってる?」
糸畑「なんかヤバい理由でも…?」
魚谷「……妹さんが女子高生と見分けがつかないぐらいのロリ顔だったから‼」
糸畑、沈痛な表情で吐き捨てる。
糸畑「性根が腐ってる!」
ボソッと呟く三渡。
三渡「……買春を やっぱり」
魚谷、三渡の呟きに過剰に反応する。
魚谷「やっぱり⁉」
三渡に詰め寄る魚谷。
魚谷「やっぱりって三渡先生 中添の買春に気づいてたの⁉いつから⁉」
三渡「…理事長に絶縁を勧められた3週間前から」
三渡「魚谷先生の言うその女子生徒はうちと姉妹校の「 桐凪学院」に通ってて……」
三渡「 売春はもうしないから中添先生をクビにしないでって我が校の理事長に 直談判」
三渡「 挙句の果てに 女子生徒が自ら全責任を背負う覚悟も決めて もしクビにしたら買春のこと マスコミに 公にするって聞かなかったんです」
盾原「中添先生をずいぶん愛してたんですね」
魚谷「だから何⁉事実を隠蔽したことには変わらないし‼結局みんな名声と保身じゃないっ‼」
シバ、魚谷を連行しようとする。
シバ「ではあとは署の方で」
魚谷「さっさと連行して!言っとくけど罪は一切償わないから‼重い懲役刑になった方がよっぽどマシよ!」
〇宇佐岡学園・中庭
魚谷を乗せたパトカーが発車する。
中庭の別の場所に停めてあるパトカーの後部座席に瑠子、パトカーの外には盾原。
瑠子「先生?乗らないのですか」
盾原「瑠子ちゃんは先に帰ってて 俺は大金が関わってるある事案を解決しないといけないから」
〇宇佐岡学園・廊下
増城のズボンの右ポケットからバイブレーションの音。スマホを取り出した増城。
増城「メール?」
増城、メールの内容を黙読する。
増城( 井竹……大金を分け合うから来い)
思わず、笑みがこぼれる増城。
増城(マジかよ?今日は早退だ……!)
〇住宅街・道路
1台のタクシーが走行中。
〇タクシー・車内
車内の後部座席で興奮した様子の増城。
増城(とうとうやってきたな!金を受け取る時が‼)
増城(中添は殺されたがまあいい 分け前が増えるからな!)
増城(思えば長かった……県内で高レベルな偏差値の進学校に勤めて10年以上 高額な給料を期待したのにブラック学校並みの安月給)
増城(おまけに理不尽なモンペの対応や処理に振り回される日々 ふざけんな!)
増城(今の時代 生徒は優遇されてるのに俺達教師は長時間労働の日々!強盗するのも無理ねーよ!)
〇アパート・外観
古びた2階建てアパート前の路肩にタクシーが到着する。
ドアを開け、タクシーから降りる増城。アパートを見回し、
増城「井竹の部屋……」
アパート1階通路を歩く増城。「井竹」と表記されたプレートが貼ってあるドアの前でインターホンを鳴らす。
返事はなく無応答。
増城、何度もインターホンを鳴らす。
増城(早く出ろよ!自分から呼び出しといて!)
ゴトン、とドアの向こうから物音。
増城(おっ?中にいるみたいだな 何やってんだ?)
ドアレバーを握る増城。
増城(鍵 開いてる……)
〇井竹宅・室内
1Kの部屋。玄関脇にトイレのドア。
増城「井竹!俺だ‼入るぞ」
引き戸が半分開いた洋室から、うつ伏せ状態で両足が見える。
増城「寝てんのか」
靴を脱いだ増城、 三和土に上がる。洋室の引き戸を全開にする。
増城「来てやった――」
増城「って オイ⁉」
背中の刺し傷から大量の血があふれ出ている、バス運転手の 井竹 時信(38)の死体。
増城「井竹‼し 死んでる‼」
井竹の死体に恐る恐る近づく増城。
増城「殺された?以外ないよな……」
増城の後方でトイレのドアが少しだけ開き、黒い靴下が片方だけ見える。
増城「そうだ!大金は⁉まさか奪われたんじゃねーだろうな?」
トイレから出てきた闇探偵がスパナを右手に掲げ、増城の背後から近づく。
闇探偵「......」
後ろにいる闇探偵に全く気付いてない増城。
増城「ちょっと待て!まさかあの探偵‼ 図りやがったか⁉」
闇探偵、増城の後頭部めがけてスパナを振り下ろす。
〇井竹宅・室内
玄関の外から、インターホンの音と誰かの声。
声「井竹さん?井竹さーん 警察の者ですが?」
ドアを開けて玄関に入る名倉とシバ。
名倉「鍵かけないで物騒だな」
シバ、玄関から洋室を覗き込む。目を疑うような光景に大声を上げるシバ。
シバ「‼ちょっと‼」
名倉「どうした⁉シバ‼」
井竹の死体の傍らで痛そうに後頭部を押さえる増城。増城の足元に刃元から切っ先が血で真っ赤に染まった和包丁。
増城「~~ッ!クッ!」
洋室に土足で上がる名倉とシバ。
名倉「増城!お前ッ‼何やってんだ‼」
増城「――刑事⁉ち 違うんだ‼俺じゃない‼」
シバ「動機は署の方で!とにかく現行犯逮捕です‼」
シバ、増城の右手首に手錠をかける。
〇アパート・外観
両手首にタオルをかけられ、名倉とシバに連行される増城。
増城「言ってるだろ‼俺が来た時にはもう殺されてたって‼」
増城「井竹とは仲の良い友達で……信じてくれよ‼」
名倉「わめくな うっとうしい」
シバ「あなたが昨日起きた六角銀行強盗殺人事件の実行犯だというのは調べがついてます」
シバ「亡くなってしまいましたが 共犯に中添先生と井竹さんも加わってたことも」
増城(バレてやがる⁉)
増城「誰が‼俺はその時 神奈川ドームで引率を――」
名倉、正面を向いて問いかける。
名倉「途中で抜けたんだよな?探偵」
増城「ハアッ⁉」
増城も正面を向き、
増城「って お前ッ‼」
正面のパトカーの助手席ドアの傍らに盾原。
盾原「どーも」
盾原「増城先生と中添先生は強盗事件が起きる時間帯まで確かに生徒達と一緒にいました」
盾原「だけど 生徒達の自由時間に合わせて社会科見学を抜けたんですよね?」
シバ「裏は取れてます」
シバ「ドーム敷地内の公衆トイレから あなたと中添先生がスポーツウェアとサングラスで変装して出てきたのを監視カメラの映像で確認しました」
シバ「ランニングキャップもかぶってましたね」
増城「…………」
名倉の背後から大きな声。
声「名倉警部‼」
名倉、後輩刑事から報告を受ける。
刑事「大量の札束が入ったバッグを発見しました!強奪された1億2000万円分はあるかと思います」
名倉「よくやった 枚数を数えて金額を確認だ」
弁解しようとする増城。
増城「悪かった‼ 強盗の容疑は認める‼けど計画を練ったのは井竹で俺はヤツに脅迫されて従うしかなかったんだ‼」
盾原、小声でボソリと呟く。
盾原「嘘つき……」
増城「え?」
パトカーの助手席の窓ガラスに盾原、思いっきり右こぶしをぶつける。ガンと鈍い音が響く。
驚き顔の増城。
増城「⁉」
唖然とした顔のシバ。
シバ「盾原探偵……?」
盾原が冷たい笑みを浮かべ、
盾原「下手な嘘はやめましょうよ 最低な強盗犯さん?」
名倉「全部見え透いてんだよ」
先ほどの後輩刑事、名倉に再び報告。
刑事「警部!バッグの中の1億2000万ですが 確認したところ おそらく1000万は足りないかと」
増城、盾原に向かって叫ぶ。
増城「コイツが 盗ったんだよ‼」
増城「アンタらが中添の事件の捜査中 コイツは1000万の口止め料を俺に要求してきた‼」
増城「てか昨日の夕方 コイツは俺のことをすでに強盗だと見抜いてた――」
盾原「じゃあ?俺が井竹さんを殺して1000万円を横取りしたと……どう思います?」
名倉とシバに問いかける盾原。
名倉とシバの視線が合う。
名倉&シバ「…………」
小さくため息を吐く名倉。
名倉「んなわけないだろ 信憑性ないな」
シバ「悪あがきもいい加減にしてください」
増城「なんでだよッ⁉お前らそれでも警察かよ‼」
2名の警官によってパトカーの後部座席に押し込まれる増城。だが激しく抵抗するようにギャーギャーとわめく。
盾原「 欲にまみれてたくさんの人を殺して 極刑確定です」
名倉「だな」
盾原「やっぱ悪党の逃げ場は地獄しかないですね!」
盾原永海と闇探偵、どちらの推理も完璧でしたね!この物語のエピソードはまだまだ続きます!乞うご期待!




