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完全無欠の第三王女と最強剣士は結婚したいがしたくない  作者: 斉藤りた


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6.そこに耳はあるのか

アダムスが無言で目を見開き表情だけで驚いた。

よくよく見ると、その後ろに控えている副官ズやサハラードの面々、そして父親の国王陛下や兄の皇太子まで大人しくイヴェリンの話を聞いている。


「死なないと言っても老衰や自然死は別ね。記録が残ってるもの。あと次の王に譲位した後も、ね。ただ、暗殺やクーデターが起きても王と王妃が死ぬことはないわ。これは王が所有する遺物の効果だと言われてるけど・・・ま、詳しい事は興味ないから知らない。そして大臣派は同じく好戦的な第二公子を支持してて、この国王派のオージがこのまま即位しちゃったら殺せなくなるから今のうちに始末しちゃえってわけよ。」


そういうと、国王派の人差し指がフェルザードの方を向いた。

人差し指をちょいちょいと動かしながら説明する姿は子供の手遊びのようだが、話している内容は物騒である。


「ついでにウチの国内で暗殺しちゃえばオージも消せてケンカ吹っかける口実にもなってラッキーじゃん?って事。多分、今日の謁見が終わってあちらに戻るまで、暗殺者がワンサカ来るわよ。」


「一ついいか?」


はい、と大男のアダムスが顔の横に手を挙げると、その仕草が可愛く見えたのかイヴェリンが嬉しそうに答える。


「なぁに?何でも聞いてちょうだい。」


「なんでその大臣は戦争をしたがってるんだ?俺の認識ではサハラードは大断層カタクリズムの後から国交が盛んになって、良い関係を気付けていたと思うんだが・・・。」


「そう、国王派は、ね。大臣派は『魔の森の危険性が無くなったのだからルクレインの豊富な資源は我が国のものにするべきだ!』って主張してるわ。この前まで南の軍事大国もそうだったでしょ?もちろん公にではないけど、月に一度大臣派が集まってパーティをしてるから、そこでワーワー言ってるみたいよ。むさくるしいオッサンたちが半裸で、女の子たちをはべらせたパーティでね。」


想像したのか、最後は眉間にシワを寄せながらイヴェリンがオエッという顔をする。

すると、ホルマドがアダムスと同じように顔の横に手を出した。


「ひ、姫は、なぜそのような・・・我が国の情報に詳しいのでしょう?大臣だけじゃなく、国内でもごく一部しか知らない王の不死の加護まで・・・」


おそらくホルマドはイヴェリンが情報ギルド『影』のボスで、世界中の有力者の弱みとなる情報を握っている事を知らないのであろう。

逆に言えば、それだけ後ろめたいことがない、信用に値する人物という証明でもある。


「ふふん、知らないようだから教えてあげるわ。何を隠そう、この私はあの情報ギル」


「我が妃になるために決まっているであろう!」


ホルマドの後ろから飛んできた、勢いのある大声。

腕を組んだフェルザードである。

だが腕に付いた筋肉が大きいせいで、ちゃんと腕を組めていない。


「オトメゴゴロというやつだな!妃にふさわしい教養を付けようとするその姿勢、好ましいぞ!」


ワッハッハ!と大声で笑う様は豪快とも言えるが、イヴェリンの千本の氷で刺すような視線に気付かないのは鈍感というレベルではない。


「ええと、イヴェリン様、俺も良いっすか?」


アダムスの斜め後ろで手を挙げたのはオリヴァンだ。

いつの間にかイヴェリン先生のサハラード情報教室になっている。


「フェルザード殿下は、何故危険な情勢のさなかに我が国へ?その行動に危険が伴う事はご存じだったはず。隷属の首輪( ヴェルタージュ)の補償を求めて、だけではありませんよね?」


オリヴァンの細い瞳が一瞬光る。

国宝を壊されたから、というのは明らかな言いがかりだ。それだけならば書面を交わすだけで事足りる。

もちろん口実の一つであるだろうが、何か深い理由が・・・。


「先ほど言ったであろう!そこの王女を貰い受けに来たのだ!」


勢いのある声に阻まれ、答えようと開いたイヴェリンがうんざりした表情になる。

貰い受け、つまり求婚だ。

先程は襲撃者があったのでそれどころではなくなったが、改めて耳にする言葉にアダムスの身体が固まる。

説明を求めるオリヴァンの視線を受け、イヴェリンが再度口を開いた。


「アチラでは正妃を娶ってないと王になれないのよ。で、正妃、つまり皇后になるかもしれない女性にはいくつか条件があるの。まず、魔力が飛びぬけて多い事。あとは皇后にふさわしい出自の娘である事。側妃たちをまとめ、良い関係を築ける事。あと・・・見た目が飛びぬけて良い事。」


「・・・はい?」


「アチラの文化なのよ。魔力は神が美しき者に与えるギフトである、ってね。魔力の多い者の中から美しい人を選んで王族にしてたからそうなっただけなんだろうけど、王族になるには見た目が良くないとダメなんだってさ。」


「へぇ~・・・異文化ですねぇ。」


「我の知る中で、一番美しき女性は王女だからな!そして才能も家柄も申し分なく、側妃たちとうまくやれるカリスマ性もある!申し分ないであろう!」


「大ありだっつってんのよ、このぼんくら!右耳から左耳までストローで繋がってんじゃないの?!私が嫌だっつってんだから結婚なんてありえないってのよ!」


「はっはっは!王女は面白い例えをするのだな!」


フェルザードの話の通じなさに、キィ~!!とイラつきを抑えられないイヴェリン。

綺麗にセットされた頭を掻くと、固まっていたアダムスをキッと睨み、その腕に飛びついた。


「何を言っても無駄よ!私は、この人と結婚するんだから!」

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