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完全無欠の第三王女と最強剣士は結婚したいがしたくない  作者: 斉藤りた


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4.襲撃

先程のイヴェリンの言葉を綺麗に言い換えただけなのだが、その意味は十分伝わったようだ。

あの時とは違う感情が自分の中に根付いているからこそ、胸にハッキリと感じる熱。

改めてあの光景を思い出すと、新たな怒りがわいて来る。

イヴェリンが危険な目に遭ったんだ。

そっちがその責任を問うのならば、こちらもトコトン追求してやるぞ。


怒りを露にしたアダムスの気迫に、ホルマドが口を一度、二度、三度と開けて閉じた。

その表情は長々と要求を読み上げていた時の余裕の顔ではなくなっている。


「しっ、しかし!この国内で我が国の国宝が破壊されたのは事実!その賠償はどうされるおつもりか!」


無傷で取り返せば良かったのに、壊したのだから責任を取れ!と言っているのだ。

完全なるイチャモンである。


「盗まれた事も隠してたくせに、外せない首輪をどうやって壊さず持って来いってのよ。」


小さな声でイヴェリンが呟いた。

だが、素直なアダムスには効いたようだ。

アダムスの口から「ぐぅっ!」と小さな声が漏れる。


「・・・ええと、誠に申し訳ない。仕組みが分かれば外せたかもと言われれば誠にその通りで・・・。アレは自分が切ってしまったので、その責任は国ではなく完全に自分にあり、自分の全財産でどうにか出来れば・・・。」


モゴモゴと言い訳をしていると、ホルマドの目が見開かれた。


「あ、あの、隷属の首輪( ヴェルタージュ)を・・・切った?」


「え、あ、はい。えっと、どうすれば補償となるのかわかりかねますが・・・とりあえず実物を持ってきた方が良いですかね?」


初老の男性の後ろに控えていた男性達も、口を閉ざしたまま戸惑いの表情をしている。

それもそのはず、神話時代の遺物と言えば人の力では壊すどころか傷を付ける事も敵わないと言われている逸物だ。

オリヴァンとカリナが、何故か「ウチの団長はすごいだろう」と胸を張って自慢げな顔でニヤニヤし、部下にドヤ顔をさせている本人は「アレどこにやった?倉庫か?捨ててないよな?」と独り言を言いつつ焦る。


パンッ!


イヴェリンが、シルクのような光沢を放つ手袋を付けた手を叩いた。

全員の目がイヴェリンに集まる。


「面倒な建前の会話はもう結構よ。そちらの要求はわかってるけど、一応聞いてあげるわ。ハッキリ言ってご覧。」


イヴェリンの睫毛の下で大きな瞳が動き、ホルマドとフェルザードをひと睨みする。


「よ、要求など・・・!我らは我が国の宝を失った代償を求めて」


「イヴェリンとの婚姻だな!我の横に立ち正妃になるにふさわしい素質を持つ女などおらぬからな!」


ホルマドの言葉を遮り、大声で高らかに叫ぶフェルザード。

本人は叫んでいるつもりはなさそうだが、地声が大きいのだろう。隣にいたホルマドが大きなため息を吐く。


「フェルザード様・・・、交渉はワタクシにお任せ下さいとあれほど・・・」


「何を言う!我が妃に求められたのだ、答えねばならぬだろう!」


「誰が我が妃じゃ!」


イヴェリンは話の通じないフェルザードが苦手なのか、アダムスの腕を無意識に持って隠れるようにして言い返している。


最近いい雰囲気だったイヴェリンが、求婚され「我が妃」呼びされたのを目の前にしたアダムスの顔。

そんな面白そうな表情を一目見ようと、オリヴァンがアダムスの背後からそっと首を伸ばした。

その時。


ガシャーン!


「キャ〜ッ!!!」


ガッ!

ドサッ!


ほぼ同時に広間に響く大きな音。


「んななななななんじゃっ!」


カリナに押されるようにして玉座から転がり落ちた国王が、十数秒後カリナに抱えられるようにして起き上がり、顔を上げた。

目の前にはカリナの防御魔法のバリアが、第一王子も入るように大きく覆っている。


先程アダムスが城門の兵士を眺めていた窓が割れ、太い弓矢が大理石の床に突き刺さっている。

割れた窓から侵入したと思われるグレーの布を身に纏った賊と思しき四人組が床に倒れ、既に制圧されていた。

正確には、割れた窓から最初に入ってきた一人は飛ぶように移動してきたアダムスの手刀を後頭部に受け気を失い、フェルザードに近付こうとしていた一人は膝を正面から蹴られ足が逆に曲がって倒れた上に両手を踏まれて武器を持つ指を折られ。

その後ろを抜けようとしていた一人はオリヴァンに背後から後頭部に氷結魔法による氷の打撃を受け気を失い、窓から入ろうとしていた一人はイヴェリンが投げた紐でグルグル巻きに縛られ紐の先に付いていた固い石のような物が後頭部に鈍い音を出して当たり倒れた。


「お、おぉ・・・!さっ、流石我が国の誇る第一魔法騎」


「イヴェリン!おっ、お前、なんて格好してるんだっ・・・!」


アダムスが顔を真っ赤にして捕えていた男を引きずりながらイヴェリンに近付いて行く。

イヴェリンの真っ赤なドレスのスカート部分がスリットになっていたようで、真っ白な太ももが露わになっている。

きめ細やかな肌に映える黒のレースの留め具は太ももを一周するようにナイフや武器を並べ、その一つが無くなっている。


「これ、良いでしょ?さっき投げたのは中に昏倒草を練り込んだ布で包んだ飛翔の魔石で、ロープとこのドレスはダイヤモンドシープの・・・」


「こっ、こんな場所でっ!脚を出すなっ!」


手刀で倒した侵入者のグレーのローブを剥ぎ取ると、急いでイヴェリンの腰に巻き付けた。


「うふふ、やだアダムスってば。ここじゃなければいいの?」


「そういう話じゃないっ!」


上半身は豊満な胸を強調した真っ赤なドレス、下半身はグレーの布でぐるぐる巻きと珍妙な格好でニコニコしているイヴェリンから目を逸らし、アダムスが足元の侵入者たちを見下ろした。


「で、コイツらは誰だ?」

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