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完全無欠の第三王女と最強剣士は結婚したいがしたくない  作者: 斉藤りた


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3.ルクレイン王国皇太子

「待ってないわよっ!」


「ふははは!良いな!この我を前にしても尚その態度。その気位の高さは変わっておらぬようで安心したぞ。」


「初対面だと思いますわ、これからも会う事なんて無いでしょうけど!」


「うむ、その気高さたるや、素晴らしい!まさに理想的だな!」


イヴェリンの刺々しい対応を、豪快に笑い飛ばすフェルザードと名乗る王子。

第一魔法騎士団の面々は連れている護衛の力量からその主の位を想定していたが、驚いたのは玉座に座っていた国王陛下だ。


「ふぇっ、フェルザード殿下!まさか貴殿が来られるとは・・・!」


ホルマドと呼ばれた年配の男性が国王に目配せをし頷くと、国王の顔が強張る。

アダムスは何か事情があるのだろうと察し、後ろに立っている副官二人はイヴェリンと隣国の王子のやり取りを面白そうに眺めている。


「美しさに磨きをかけてくれたようで何よりだ!もっと早くに迎えに来れなくて悪かったな!」


「何か悪い事があるとしたらアナタが来た事よ。お迎えはそちらの箱の中ですから、さっさと入ってそのまま帰国下さいな。」


「ああ!王女よ、共に我が国に帰ろうぞ!」


「行かないっつってんのよ、この唐変木!その耳は何のために付いてんのよ!話を聞きなさい!」


イヴェリンが押されている様子を物珍しそうに見ていたオリヴァンが、カリナに小声で話しかけた。


「イヴェリン様、お知り合いっぽい感じ?」


「曲がりなりにも王女サマなんだし、国同士の付き合いはあるんじゃない?でも見た感じイヴェリン様は超嫌そうだけど。こんなイヴェリン様なかなか見れないし、面白~い。」


アダムスの目の前では子供のような言い争い、背後ではコソコソと話す副官ズ。

立場的には後ろから注意すべきか、と考えていると、国王の隣、アダムス達が立つ方とは反対側に立っていた人物の低い声が広間に響いた。


「やめなさい、イヴェリン、フェルザード殿下。」


腹の底に響くような重低音。

心臓を掴んで揺らされるような低い声には魔力が乗っており、魔力に耐性のない一般市民ならば意識を飛ばしてしまうほどの威力を持つ。

だが、もちろんこの場にいる者には効かないし、隣で国王陛下がプルプルと震えているのも気のせいである。


声の主はルクレイン王国第一王子、つまり皇太子で次期国王、そしてイヴェリンの兄でもあるヌアレス・ルクレインだ。

凛々しい眉の下には平等の神の使いと呼ばれる青白い炎と同じ色をしたサファイアブルーの瞳。

通った鼻筋の下には、キリッと引き締まった薄い唇が横一文字に結ばれている。

誰も喜怒哀楽を見た事がないと言われるほど無表情だが、それが男らしくてさらに良い!と城下では女性だけではなく男性からも人気の高い王子である。


イヴェリンや国王陛下の残り少ない頭髪と同じプラチナブロンドの短髪に、アダムスと並んでも引けを取らない巨体。

分厚い胸板は皇太子の正装のシャツのボタンを弾け飛ばしそうなほど分厚く、二の腕は袖を破ってしまいそうなほど太い。

寡黙で口数は少ないが、その存在感だけは人並み外れている。

ちなみに既に公爵家の幼馴染と結婚しており、三歳の双子の王女と、今秋に王子が誕生する予定だ。


ヌアレスに注意された二人は、魔力の声の影響か注意された恥ずかしさからか、口をへの字に曲げて押し黙った。


「ホルマド殿、愚昧が失礼した。」


「はっ、いえ、こちらこそ我が国の大公子が失礼いたしました・・・。」


友好国の皇太子に頭を下げられ、また慌てて床に頭を擦りつけるホルマド。

いつもなら「はんっ!床とオデコがまだ離れたくないってさ!お似合いよ!」などと言ってきそうなイヴェリンも、口を尖らせてそっぽを向いたままだ。

簡潔にその場を収めたヌアレスが主導権を父親に返そうと視線で表すと、困った顔の国王がアダムスに目配せを・・・正確に言うと、助けを求めるようにチラチラと目線を送った。

そうか、そういえば隷属の首輪( ヴェルタージュ)に対する国としての対応を、自分ならどうする?と陛下に聞かれたのだった。


「あくまで私の見解ではありますが・・・。盗みを働いた該当の者は、既に我が国から周辺諸国へ指名手配として通達済みの犯罪者です。指名手配をした時点で、もはや国として保護すべき我が国の民とは言えません。それでも尚、盗まれた責任をと求められるのでしたら・・・こちらとしても申し上げざるを得ません。」


一度言葉を区切ると、顔を上げていたホルマドを正面から見据えた。

アダムスの脳裏に、隷属の首輪( ヴェルタージュ)を付けられ、こちらを不安げに見ていたイヴェリンの姿が浮かぶ。

瞳に、心に、強い火が灯る。


「我が国の王女殿下、我が魔法騎士団の副団長で自分の大切な部下であるイヴェリン王女が、そちらの国宝によって危険な目に遭ったのです。この責任をこちらも追及すべきでしょうか、と。」

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