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完全無欠の第三王女と最強剣士は結婚したいがしたくない  作者: 斉藤りた


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エピローグ

沙漠の砂が熱を抱えたまま、太陽が傾き始めた頃。

戦いの熱が冷めた国境で、サハラード軍が使っていた輸送の列が動き出した。

フェルザードとヘンリエッタを乗せた先頭の荷車に続き、縛られた兵士たちを詰め込んだ車列が砂漠を走り出す。


それは馬車というより、双頭のラクダに似た魔物が牽く、砂漠走行用の荷車だった。その足は馬車よりも速い。

さらに道中、ヘンリエッタの魔法があれば、予定より早く王都へ辿り着くだろう。


「フェルザード様が王位を継がれた暁には、公式にサハラードの王都へご招待いたしましょう!アダムス殿を始め、第一魔法騎士団の皆様との縁が出来ました事は今後の両国においても大きな財産となりますからな!」


「師匠!皆の者!世話になった!」


「イヴちゃん、お父様にもよろしく言っておいてねぇ~!」


ホルマドが馬車の中で深々と頭を下げ、身を乗り出したフェルザードとヘンリエッタが大きく手を振りながら小さくなっていく。


「元気でな~!」と叫ぶ第一魔法騎士団の団員達。


「姉さん、言った事守りなさいよ!」


叫ぶイヴェリンの横で、何とも言えない表情のアダムスが腰に手を当てて仁王立ちしている。


「なぁに、アダムスってば。まだ気にしてるの?」


「いや、まぁ・・・フェルザードが義兄か・・・。」


「どうせ会う事なんてほぼないんだもの。別にいいじゃない。」


やっと実感がわいてきたイヴェリンが、うふふ、とアダムスの手を取った。

振り払われない事でアダムスの気持ちを再確認したのか、ニコニコと顔を覗き込む。


「それはそうだが・・・あ、ヘンリエッタ様に言ってたのって何だったんだ?さっき耳打ちしてただろ?」


「ああ、大したことじゃないわよ。ほら姉さんって、性欲が普通の人の数十倍はあるじゃない?」


「じゃない?と言われても知らないんだが・・・それで?」


「いくら馬鹿オージが元気でもずっと相手をし続けるのは現実的に不可能だし、かといって婚姻してるのに他の男性と関係を持つのはいくらサハラードでもアウトなのよ。」


「まあそれはそうだろうな。」


「だから、男性じゃなくて女性にしなさいって言っといたの。」


「・・・は?」


呆気にとられたアダムスを見て楽しそうに笑うと、腕を絡めて距離を縮める。

アダムスの肩に、ほんのりピンクになった頬を寄せた。


「フェルザードはもう八人側妃がいるのよ。つまり、姉さんの相手をしてくれそうな人が八人いるって事。」


「お前、それは・・・」


「もちろん、無理強いはしないと思うわよ?姉さんそっちの趣味はないそうだから。でも女性同士なら何の問題もないし、側妃が味方になれば正妃の地位が盤石になるし、女の園をまとめるのも正妃の大事な仕事だし、最良の案でしょ?姉さん、性別なんて気にしないもの。」


「・・・ん~・・・いや、しかし・・・う~ん・・・。まあイヴェリンがそう言うならそうなんだろうが・・・。」


「アダムス的には嫌なの?」


「あ~・・・まあフェルザードなら気にしないだろうからいいんだろうな。でも、俺は相手が女性でも、お前が他の誰かと関係を持つのは嫌だな。」


一瞬考えた後、ボッ!と音が出そうなほどイヴェリンの顔が赤くなった。

まさか自分に置き換えて言われるとは思っていなかったようだ。


「やっぱりそういう相手は生涯に一人だけで・・・ん?どうした。顔真っ赤だぞ。」


「ななななな何でもないわよっ!いっ、いきなり、アダムスが私の話なんてするからっ!」


「・・・はははっ、なんだお前、照れてんのか?」


「てててて照れてなんてないわよっ!馬鹿な事言わないで頂戴っ!」


「あははは!イヴェリン、お前可愛いな。」


「~~~~っ!!!」


大きな身体を屈めて顔を覗き込もうとするアダムスと、必死で真っ赤な顔を反らすイヴェリン。

クルクルと回り始めた二人を見ながら第一魔法騎士団の面々が溜息を吐いた。


「もしかして、これからあんなのを見せられ続けるのか?」「団長がああいうタイプだとは・・・。」「すげえな、甘ったるいとかを通り越して吐きそうだ。」


うんざりした声色を出すものの、その顔はみな笑っている。


「ま、念願叶ったんだし、しばらくは我慢しましょ。」


カリナが笑いをこらえながら言うと、横にいたウルバヌスが手を叩いた。


「さあお前ら!せっかく新鮮な魔物が大量に手に入ったんだ!今日明日くらいは休んで、腹いっぱい食っていけ!」


「うぉぉぉぉぉ!」


団員たちの歓声を聞き、アダムスの口元がにやりと歪む。


「よし。ついでに魔の森で訓練していくか!せっかくだしな!」


「えぇ~?!」


一斉に上がった大ブーイングに、笑い声が混じる。

皆の笑い声が、砂漠の風に乗り、国境を越え、サハラード王国とルクレイン王国を繋いでいた。








―――魔の森の奥底、最深部にあたる暗く深い場所で、かすかな気配が揺れた。

魔物たちの叫びや悲鳴が織りなす不協和音の中、その存在はわずかな声を聞き分ける。


「あの声は……」


血に濡れた口元を拭ったそれは、不敵に笑った。

あと一作でシリーズ完結予定です。

ぜひ最後までお付き合いください。

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