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完全無欠の第三王女と最強剣士は結婚したいがしたくない  作者: 斉藤りた


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32.それはそう

ヒュッ、と音がした。


第一魔法騎士団の団員たちが息を呑んだ音だ。

風が止み、まるで悪戯好きな小さな魔物、時猫(ティックキャット)が時間を止めてしまったかのようにその場にいる全員が動かなくなった。


砂漠に現れた静寂。

それを破ったのはやはり本能のままに場を乱す、ルクレイン王国第二王女ヘンリエッタだ。


「あらぁ〜!アダムス君ってば、やっとイヴちゃんと結婚する気になったのね!」


ヘンリエッタの声で、第一魔法騎士団の団員たちが我に返る。

お互いの顔を見合わせ、目の前の事が現実的だと実感が湧いてきたようだ。


「う・・・うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


サハラードとルクレインの国境に、歓喜の声が響き渡った。

空に向かって、武器や鞄を投げて喜ぶ団員たち。

飛び跳ね、抱き合い、涙を見せて喜び合う。

中には縛り上げた第二太子を胴上げして喜んでいる団員たちもいる。


「っもぉ〜やっとだねぇ。しかし、色々すっ飛ばしていきなり結婚って辺り、だんちょーらしいというか何というか・・・。」


オリヴァンが上がる口角を手で隠して呟くと、パス、パス、パス、と砂の上を歩きにくそうに近付いて横に並んだカリナが顔を覗き込んだ。


「素直に喜べばいいじゃない。天邪鬼ねぇ。敬愛する二人がくっ付くんだもん、嬉しくて当たり前でしょ?」


そう言うカリナも、ひひひ!と白い歯を見せ、自分のことのように顔をほころばせている。

まるで陽だまりで向日葵が開いたような、慈愛に満ちた笑顔だ。

そんなカリナの顔を見て、オリヴァンが一度下を向き上を向くと、頭をガシガシを掻いて口を開いた。


「・・・あ〜・・・じゃあさ、だんちょーたちもやっとくっ付いたんだし、どうせなら、そろそろさ、オレらも」


「やっと孫の顔が見れそうだな!いや、ひ孫か?!」


「いってぇ!!んで、うるっさ!!」


オリヴァンの肩をガシッと掴んだウルバヌスが、耳元で叫んだ。

ほんの少し目に涙が浮かんでいるようだが、肩がジンジンと痛むオリヴァンはそれどころではない。

意を決して出そうとした言葉を思いっきり飲み込んでしまったような顔をしている。


そんなオリヴァンの気持ちなどいざ知らず、カリナがニコニコと笑いながらイヴェリンの方を見た。

きっと、イヴェリン様も嬉しくて堪らないだろう。

もしかしたら泣いてるかもしれない。・・・想像出来ないけど。


そう思いながらイヴェリンの表情をよく見ると・・・


「ん?・・・あれ?」


イヴェリンは、まだアダムスの顔を見上げて驚いた顔のまま固まっていた。

元々大きな瞳は、さらにまん丸になって夜空を照らす満月(フルムーン)のように。

朝露を閉じ込めたピンクダイヤモンドのような唇は開いたまま閉じ方を忘れたようだ。


そんなイヴェリンの顔を、耳を赤くしたアダムスがチラッと見た。

バチっと目が合い、イヴェリンの口から「ぴゃっ!」と声が漏れ身体が小さく飛び跳ねる。


それでもまだ固まったままのイヴェリンの肩を、アダムスがもう一度ぐっと抱き寄せた。

その力強さにやっと実感が湧いてきたのか、イヴェリンの顔がみるみるうちに赤くなっていく。


「フェルザード。あのな、イヴェリンは俺の事が好きで・・・いや・・・違うな・・・。」


「えぇっ?!ちっ、違わないわよ?!」


慌てたようにアダムスにしがみつく。

少し距離が近くなったイヴェリンの目を見つめ、またフェルザードの方に顔を向けた。


「俺が、イヴェリンの事が好きなんだ。だから、お前にも・・・他の誰にも、渡せない。」


「〜〜〜〜っ!!!!」


きめ細やかで透明感のあるイヴェリンの白い肌が、脈打つ血管まで透けて見えているかの如く真っ赤になっていく。


少し離れてそれを聞いている団員たちも、声にならない声を出して悶えている。


「アイツの、腹括ったら怖いもん無しな所は、バァさんに似たのかもなぁ。」


ヒゲでわかりにくいが、ウルバヌスの日焼けした頬も少し赤くなっているようだ。

亡き妻を思い出しているのか、孫の成長が嬉しいのか・・・瞳が少し潤んでいる。


アダムスの言葉を飲み込み、反芻し、理解しようと沈黙して考えていたフェルザード。

と、その背後からホルマドが近付き何かを耳打ちすると、一瞬驚いたフェルザードの顔が輝き出した。


「師匠!」


「おっ、お、おう。」


何を言われるのかと身構えていたアダムスだが、満面の笑みになったフェルザードに驚いたようだ。

だがそれはそれで何を言い出すのかわからず、また身構える。


「あいわかった。師匠は第三王女と結婚したいという事なのだな。そして、第三王女もそれを望んでいるのだ、と・・・。」


「あ、あぁ。そうだ、そういう事だ。お前も、やっとわかってくれ・・・」


「つまり、師匠は我の義弟(おとうと)になるという事だな!!」


「・・・あぁ?・・・あっ!!」


「なんと、これほど見事な神の采配はないな!」


フェルザードが両手を広げ、天を仰いだ。


「神に愛された美しく艶やかで高貴な身分の正妃と、この世のものとは思えぬ強さを持つ義弟(おとうと)、そして大きな力を正しく使える賢い義妹(いもうと)!あぁ、まるでこの世の全てが手に入ったような気分だ!!」

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