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完全無欠の第三王女と最強剣士は結婚したいがしたくない  作者: 斉藤りた


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2.呼ばれてないけど飛び出して

細く括れた形の良い腰に左手を当て、右手を挑発するように斜め上に向けてイヴェリンが啖呵を切った。


国賓を迎えるとあって今回は第一魔法騎士団の正装の鎧ではなく深紅の豪華なドレス姿だ。

デコルテを見せつけるように開いた胸元は深い谷間を露わにし、ふんわりと広がったドレスには美しい刺繍が施されている。


「ぶっ、無礼な!王女と言えど女性の身分、このような場に口を挟むなど・・・!」


「無礼なのはどちらよ。ここはうちの国。そして私は王女様でもあり第一魔法騎士団の副団長。ウチでは女だろうがどちらの身分でも口を挟んでも問題ないの。で、その私に対して失礼な口を利いたアナタはどこの国の王族なのかしら?」


「わっ!ワタクシめはこの・・」


「あら、そうよね、失礼しました。そんな口を利けるんだもの、王族なんてちっぽけなもんじゃないわよねぇ。で、どの神話のカミサマなのかしら?」


「んなっ・・・!んなっ・・・!」


「ンナンナ神様?初めて聞いたわ。」


「イヴェリン、止めてさしあげろ。」


流石に可哀そうになったアダムスが口を挟むと、返事の代わりにベーと舌を出した。

イヴェリンが話を聞いていなかった自分の代わりに要約した相手の話をわかりやすく要約し、ついでに相手を挑発して意識を逸らしてくれたのだろう。

半分くらいは本気でバカにしているのかもしれないが。


「我が副団長が失礼いたしました。しかしながら、自分のような無学な身ではその償い方などわかりかね・・・」


「団長、イヴェリン様が言ったお宝って、隷属の首輪( ヴェルタージュ)の事っすよ。」


イヴェリンの反対側、左斜め後ろから副官であるオリヴァン・グレイスが小声で耳打ちしてきた。

隷属の首輪( ヴェルタージュ)

春先に起こった事件で使われた、神話時代の遺物だ。

首に付けると死ぬまで外れる事はなく、本人の意思とは関係なく装着した相手の奴隷となる首輪。


「あ?・・・あっ!あ~・・・あれか・・・。」


やっと思い出し、国王が何故自分に聞いたのかようやく理解したようだ。

王都に魔物を多数出現させるという大事件の首謀者である前情報ギルドのメンバーが隣国から盗んできた隷属の首輪( ヴェルタージュ)を、犯人の一人である伯爵家の次男坊がイヴェリンを自分に服従させようとしたのだ。

しかも、魔物が首都を蹂躙している隙に王族を殺害し隷属させたイヴェリンを引き連れ自身が王となろうと目論むという、卑怯と凶悪と無謀をかき混ぜたような犯罪計画だった。


カンッ!


首都から北にそびえる万年雪の山脈から掘り出された王城の大理石に、小気味良いハイヒールの音が鳴り響く。


「いやだわ、責任をウチに押し付けようとされてますけど、そちらがちゃんと管理していなかったせいでこの私がその首輪の犠牲者になる所でしたのよ?一時は恐ろしい凶悪犯にかけられたあの首輪の感触、今も夢に見るほどですの・・・。未遂とは言え、貴国の盗品で他国の王族を隷属化させた、なんて事になったら、責任はどちらになっていたのかしら?」


「なっ・・・!お、王女が・・・?!」


自身も助けてもらった身なのだが、それすら交渉の材料にしている。

平謝りで賠償の減額でも懇願してくるものだと思っていた初老の男性は、ぐぬぬ・・・と言葉を探しているようだ。

おそらく発見されたが魔物との戦いで壊れた、程度の情報で乗り込んできたのだろう。

だが被害者が王女となるとまた話が変わって来る。


と、その時。


バサッ!ゴン!


「やはり、お主しかおらぬな!」


担がれている薄い布のかかった神輿から、勢いよく男性が飛び出してきて床に着地した。

正確に言えば布を捲った両手を上げたままのポーズで神輿から飛び出し、さらに片脚を曲げて着地した為左膝を強打し一瞬「グッ」とくぐもった声が聞こえた気がするが、無かった事にしたようだ。


立ち上がった褐色の肌の男性は、アダムスと同じほどの背丈、つまり、一般的な男性の身長よりも頭一個半ほど高い。

ゆるやかなウェーブを描く艶のある黒髪は爽やかな柑橘の香りを纏い、その下には凛々しい眉毛と自信に満ち溢れた瞳が輝いている。

にっこりと笑った口からは白い歯が覗き、その肉体は権力者とは思えないほど立派に鍛え上げられている。

控えめに言っても、見目麗しき非凡な美青年である。


「ヒャ~かっこよ~・・・」


王国で一番の可愛い物好きを公言している副官のカリナがイヴェリンの後ろで呟き、同じくアダムスの副官であるオリヴァンが細い目を見開いて瞳だけをそちらへ動かした。

愛らしさのない人物に対してカリナが驚嘆するほどだ。

広間の入り口に控える侍女からは桃色のため息が聞こえてくる。


「フェッ、フェルザード様!御出でになられる際はこのホルマドが声をおかけしますからとあれほど・・・」


「ホルマドよ。我に命じるのか?」


「とっ、とんでもございません!差し出がましい真似を・・・。」


平身低頭、頭を大理石に擦りつけるホルマドと呼ばれた初老男性。

その後頭部を満足げに眺めると、顔を上げてイヴェリンに向かって大きな声で宣言した。


「我はサハラード王国大公子、フェルザード・サハラード十三世だ!王女よ、待たせたな!」

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