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完全無欠の第三王女と最強剣士は結婚したいがしたくない  作者: 斉藤りた


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28.決着

「ふっ、ふざけるなよ・・・。我の、我のデザート・ドラゴンが、お前みたいな化け物に操られる訳が・・・」


「やだぁ、操ったりしないわよぉ。」


グルグルと唸るデザートドラゴンの手の上、至近距離で向かい合う第二太子とヘンリエッタ。

わなわなと震え下を向いた第二太子に、ヘンリエッタがニッコリと笑いかけた。


「操ったりなんかしたら、一人っきりでシてる事になるじゃない?相手にも意志があるからイイのよ。そうじゃなくっちゃ楽しくないもの!」


「姉さん、全部下ネタに結び付けるのやめてくれない?というか早く降りて来てよ。魅了魔法、そんなに持たないでしょ。さっさとしないと、ドラゴンが火を吹き出すわよ。」


呆れたイヴェリンの周囲には、アダムスらにサハラードの兵士たちが倒されている。

ほんの一瞬で全員の意識を奪い、彼らが手にしていた紐を使って縛り上げていた。


「だんちょー?なんでまた並べてんすか?」


「フェルザードがこいつらも弟もウチの国民だって言うから、じゃあ丁寧に扱ってやろうかと・・・。」


「並べたら丁寧なんすか・・・?」


呆れるほど緊張感のないアダムスたちの会話を聞き、第二太子が顔を上げた。

その瞳には怒りの炎が燃えさかっている。


「どいつもこいつもフェルザードフェルザードと・・・!先に生まれただけで、あんな奴は王に相応しくないはずなのに、なんでっ・・・!」


「アンタよりはまだマシだからよ。」


いつの間にか、イヴェリンがドラゴンの正面に仁王立ちしていた。

見上げているのに見下しているその顔には、王族としての誇りが垣間見える。


「国は民よ。国民が居なければ国なんてただの土地だし、貴族なんてチビデブハゲのオッサンと厚化粧と香水臭いババアの汚い集まりよ。」


「それは人によりますよ~・・・」


背後から小声でオリヴァンが反論するが、イヴェリンの言葉は止まらない。


「アンタが見るべきだったのは国民であって、貴族なんかじゃない。貴族なんて、誰がその席に座ってもいい、大事なのはその椅子だもの。そんな事も分からず軍務大臣に踊らされていい気になってたから負けるのよ。アンタの馬鹿兄貴は馬鹿だけど、常に国民を優先して考えてるし、優秀な貴族からは強く支持されてるわ。王に何が必要なのかをちゃんと理解してるからね。」


第二太子がドラゴンの身体から後ろを振り向くと、フェルザードが剣を振り回しながら戦っている。

あんな、馬鹿な民と同じ場所で同じように生きる者が、王に相応しい訳がない・・・。

他とは違う、誰とも違う・・・自分だけが特別で、王に相応しいから、高い場所から人々を見下ろすのだ・・・。


「あら、ボク大丈夫?イヴちゃんってば、言い過ぎよぉ。」


化け物と呼んだ目の前の王女の手が、そっと頬に触れる。

生まれたてのサンドワームのような指も、よく見ると愛らしい形に見えてきた。

自分を見つめるその瞳は、キラキラと光って見える。まるで、愛おしい何かのように・・・。


だが、この状況を受け入れる訳にはいかない。でも、もう、楽になりたい。けど・・・

第二太子の心と意志が揺れ動き、迷いが生じ、叫んだ。

砂漠の太陽がいくら惑わされようとも、自分の支配力の方が上だ!


「デザート・ドラゴン!全て、全て燃やし尽くしてしまえ!」


ザシュッ!


その剣士は、口を開くまで確実に砂漠の上に立っていた。

声を出した時にも、まだ足は地面と離れていなかったはずだ。

だが叫び終わる頃には、自分の目の前に飛んできていて、ドラゴンの指に足をかけたと思うと、そのまま空へと飛び上がった。


デザート・ドラゴンの首を、一刀両断するために。


「な・・・何なんだお前はっ・・・!なんで、お前みたいなのがアイツの味方にっ・・・」


言い終わらないうちに、視界が反転した。

なんだ、これは。


・・・そうか、落ちているんだ。ドラゴンが、首を刎ねられたから。

サンド・リヴァイアサンよりは低くとも、かなりの高さから頭を下に落ちていく。

一瞬体制を整えようかと考えたが、止めた。

ドラゴンは死に、兵士たちは倒され、切り札になりそうな魔物はもういない。

もう、いいや。


落ちていく中で、全てがスローモーションのように映り、思考が走る。

だが、その思考すら手放そうとした最中(さなか)に、視界を埋め尽くす何かが降って来た。


ドシーン!

ボフンッ


ドラゴンの身体が倒れる音と、砂の上に落下した音。

柔らかい何かに包まれ、痛みも衝撃もなく、落下していた浮遊感は止まった。

一体どうなったんだ・・・。

目を開けようとした時、耳にさっきの剣士の声が刺さった。


「ヘンリエッタ様!」


驚き目を開けると、自分をかばうように下敷きになった化け物、いや、第二王女の姿がある。


「おま、いや、貴女は、何故・・・」


「ふ、うふふ。やあ、ね。第二王子なら、私の弟になるかもしれないん、でしょ?だったら、お姉ちゃん、は、助けなきゃ。」


痛みをこらえるような絞り出した声に、心配かけまいとする笑顔。

第二太子が目を見開き、再び声を出そうとすると。


ドスッ


第二太子の国の後ろにアダムスが手刀を入れ、第二太子の瞳が裏返る。

そのままヘンリエッタの腹の上に倒れ込み、意識を失った。


「あっ!もう、アダムス君ってば!押し倒されるなら、意識がある男の子の方が良いんだけどっ?!」


「ヘンリエッタ様はもう倒れておられますので押し倒せません。それよりも、お怪我は・・・」


「ふん、アダムスが心配する事ないわよ。王族なんだから、身体強化魔法ぐらい落第生の姉さんでも使えるわ。」


「んもう、それでも痛いわよぉ!ほら、ここと背中とお尻、ジンジンするし多分擦りむいてるわ!ねえアダムス君、ちょっと見てくれない?」


「やめなさいって言ってんでしょ!」


寝ころんだままのヘンリエッタと意識のない第二太子、アダムスとイヴェリンがワチャワチャとしている周りで、オリヴァンやウルバヌスらが残りの兵士や魔物を片付けて行っている。


「アイツらは、あれでまだくっ付いてないのか?」


「本人たちはそう思ってるみたいっすよ~?もう時間の問題でしょうけど。でも、何か忘れてるような気が・・・。」


オリヴァンがそうつぶやいた瞬間、その忘れていた何かがデザート・ダラゴンの向こうから手を振りながらやって来た。


「師匠~!終わったぞ~!」

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