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完全無欠の第三王女と最強剣士は結婚したいがしたくない  作者: 斉藤りた


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27.ゴーイングマイウェイ

「ちょっとそこの出がらし太子!姉さんを離した方が身のためよ!」


アダムスたちの背後にある岩の上に立ったイヴェリンが、ビシッと第二太子を指差した。

少し高さのある岩に登っているせいで、ミニスカートの裾がひらりと風に揺れると優美な線を描く太ももが露になり、敵の兵士たちも手に紐を持ったままごくりと生唾を飲み込んでいる。


「イヴェリン!降りろ!」


「あら、なんで?別にいいじゃない、減るもんじゃないんだし。」


「ばっ、馬鹿!あ、あ・・・脚が!見えてるだろうが!降りなさい!」


「この脚線美を見せないなんて人類の偉大な功績を見せないのに等しい愚行よ。アダムスだけの脚にしてもいいけど、美しいものを見せる位は良いんじゃない?」


「何言ってるのかわからんがダメだっ!ちゃんと隠せっ!」


「はぁ~い。もう、固いんだから。」


絶体絶命のピンチのはずだが、いつも通りの二人に張り詰めていた空気が一気にぬるくなった。

ポカンとやり取りを見ていた第二太子だったが、イヴェリンが岩から飛び降りた瞬間意識が戻ってきたようだ。


「きっ、貴様!動くなっ!この王女がどうなってもいいのか!」


「どうなっても良くはないけど、動くなと言われたら動きたくなるわね。」


「なっ・・・!う、動いたら、お前のせいでこの王女が死ぬぞ!」


イヴェリンの緊張感のなさに、有利な立場のはずの第二太子が狼狽え始める。

その様子を見たオリヴァンがシリアスな顔でアダムスに小声で話しかけた。


「だんちょー・・・ちょっと考えてたんすけど・・・。」


「なんだ。言ってみろ。」


「ヘンリエッタ様って、切られてもお肉に阻まれて首は無事って可能性があるんじゃないですか?」


いつもの調子を取り戻してきたオリヴァンに「不敬だぞ」と一言返し、前を向いた。

一瞬そうかもしれない、と思った事は言わないでおこう。


「私のせいで死ぬ?・・・はんっ!馬鹿な事言ってんじゃないわよ!」


「なっ、何を・・・」


「人質に取ってるのも、剣を構えてるのも、刺すなり切るなりして殺そうとしてんのもアンタでしょうが!人殺しの責任を擦り付けようとするんじゃない!もし今姉さんが動いて死んだとしても、殺したのはアンタなんだから私のせいになる訳がないのよ!」


確かにその通りである。

ありきたりなセリフで責任転嫁をしようとしていた第二太子の顔が赤くなり、口をパクパクさせる。

と、イヴェリンの言葉に気が付いたのか絞り出すように声を出した。


「ね・・・姉さん・・・だと?」


「そうよ。そっくりじゃないの。髪色とか。」


むしろ髪色と性別以外の共通点を探す方が難しいのだが、本人にとってはそうじゃないらしい。

何を当たり前のことを、と言いたげなイヴェリンの態度に開閉していた口が完全に開いたままになってしまった。

すると、それを眺めていたイヴェリンがある事に気が付いた。


「ねえ・・・誰か、姉さんに何か命令した?」


コチラを向いたイヴェリンの顔を見てアダムスたちが少し考える。


「命令・・・?」


「あっ!だんちょーが言ってましたよ!動くな!って。」


「あ?言ってたか?」


「言っとったな。こりゃ陛下に告げ口せんといかんな。」


ウルバヌスを睨んだアダムスを見て、イヴェリンが小さくため息を吐き、睨むように上を向いた。


「姉さん。アダムスは私のだって言ったでしょ。あげないわよ。」


「き、貴様、王女の癖に・・・」


「やぁん、いいじゃない!セクシーな声なんだもの、アダムス君ってばきっとすごく上手よぉ。」


ピクリとも動かなかったヘンリエッタが、突然クネクネと身体を揺らし始めた。

思わず剣に首が触れそうになり、第二太子が慌てて剣を遠ざける。


「こ、この化け物女・・・!う、動くなと・・・!」


「う~ん、君の命令はまだまだかなぁ~?あんまり感じないわ。もうちょっとこう、下半身に響くように言ってくれないかしら?」


「な、な、な・・・」


「でもそうね、若くて可愛いから命令される方が合うのかも?大丈夫よ、私どっちでもイケるから君の癖に合わせてあげ」


「姉さん!」


叫び声に、ヘンリエッタがビクッとした。と、なぜかそれにつられて第二太子もビクッとする。

イヴェリンが本気で怒っているのを察したのだろう、イヴェリンの方を見ようとするが、目は合わせていない。


「アダムスを姉さんのプレイに巻き込まないでちょうだい。それに・・・そこに落ちてるの、私の魔力走行車よね・・・?」


「あっ・・・!あのね、あれはね、ちょっとだけ借りるつもりで、後でちゃんと返そうと思ってたんだけど・・・」


「姉さん!」


「いやぁ~ん、ごめんなさい~!イヴちゃん、そんなに怒らないでぇ~!」


「・・・後で言い訳は聞くわ。まず、そのドラゴンをどうにかしてちょうだい。」


「はぁ~い・・・。あんまり怒っちゃイヤよぉ・・・?」


巨体を揺らし、ドラゴンの掌の上でゆっくりと後ろを振り向くヘンリエッタ。

必然的に第二太子と向かい合う形になる。


「や、止めろっ!こっちを向くな、この化けも・・・」


「ドラゴンちゃん、お願い聞いてくれる?」


ヘンリエッタが、自身を乗せているドラゴンに向かって上目遣いを見せた。

その身体から甘く芳しい香りが放たれ、どこからともなく疾香蝶が飛んでくる。

香りが鼻腔に入ったドラゴンが香りを辿りヘンリエッタの目を見つめると、途端にグルルルルと呻き始めた。

ヘンリエッタがチラ、と目線を送ると、第二太子の持っていた剣を反対の手で掴み、簡単に握りつぶす。


「これでい~い?イヴちゃん。」


「そうね、それでアダムスの命令を聞いた事だけはチャラにしてあげるわ。」


一体何が起こっているのか。

何となく理解出来てはいるものの、脳が目の前の光景を拒否している。

そんなアダムスたちの顔に書いてある疑問を見たイヴェリンが、苦笑いで返した。


「姉さんは魅了魔法の使い手だって言ったでしょう?人より魔物の方が効きがいいのよ。」

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