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完全無欠の第三王女と最強剣士は結婚したいがしたくない  作者: 斉藤りた


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25.カオスメイカー

「サンド・リヴァイアサンは隠蔽魔法を使う魔物だが、見えてたらただのデカいヘビだ。ヘビなんて、頭を切れば倒せる。」


『砂漠で見つかってしまったら、逃げるよりも遺書を急いで書け』と言われる魔物もアダムスにとってはただのヘビだ。


「違いますって!こんなデカくてツルツルしてんのに、どうやって頭を切ったのかって聞いてんすよ!」


頭に神輿を乗せたままのサンド・リヴァイアサンは一番大きな個体だったらしく、その後ろからぞろぞろと十五、六匹の一回り二回り小さな、三階建の家サイズのサンド・リヴァイアサンが出て来た。

出て来たのだが、もう既に数匹がアダムスの足元でヘビのぶつ切りになっている。


「いいか?ゆっくりやって見せるぞ。こいつらの攻撃なんて噛みつくか体当たりしかないんだ。だから、近づいてきたところを・・・」


ザシュッ


「手が届く範囲なら、尻尾でも胴体でも切れるだろ。で、あとはこうやって・・・」


ザンッ


「首を落として止めを刺したら終わりだ。尻尾からなら何度かやりゃ頭に届く。」


まるで料理でもしているかのような口ぶりに、団員たちも呆れ顔である。


「まぁ他にやりようもねぇし、やるしかないか。」


「一太刀じゃ無理だなぁ。スコット、お前イケるか?」


「二、三回切りかかりゃこのサイズならイケるんじゃねぇか?一番デカいのは流石になぁ・・・っと。危ねぇ!」


軽口をたたいていた団員たちが、三人一組(スリーマンセル)で一人ずつに斬りかかって来た兵士たちをひょいひょいっと避けて剣の柄頭の部分や素手で兵士たちを無力化していく。

だが当然相手も鍛えられた兵士な上、本気で切り殺しにかかってきているので魔物相手のようにはいかず中にはかなり手こずっている団員もいる。


「団長、コイツら斬るのもダメっすか?!殺さないようにするんで!」


「ダメだ。新入りならわかるが、お前らはもう中堅だろ。魔物でもないんだ、このくらい出来て当然だ。」


そう言うアダムスの近くには、既に十数人の兵士が横たわっている。

一人一人丁寧に同じ方向に寝かせているあたり、どれだけ余裕があるのかを物語っていた。


「じゃあせめてあのデカいのは団長がやってくださいよ?!俺ら手一杯なんだし!」


「ったく・・・俺がお前らくらいの時なんてなぁ・・・。」


「団長、その言い方はウルバヌス殿にそっくりだぞ。」


「うぐっ・・・。」


ネル爺と呼ばれるベテランの団員に言われ、言葉に詰まる。

顔を上げて周りを見渡してみると、いつの間にか兵士の数は半数ほどに、魔物の数も最初よりは少なくなっているようだ。


フェルザードには腕の立つ団員を二人と、ホルマドと頑張ってここまで付いてきた護衛の四人も一緒にいるのでそうそう危険な目には合わないだろう。

そう思って探してみると、「フハハハハ!」と叫びながら剣を振り回してるフェルザードの姿が見えた。


「アイツ、俺たちには殺すなと言っておきながら・・・ん?いや、一応急所は外してるな・・・器用なやつめ。」


そう呟くと、後ろから切り掛かってきた二人の兵士を左手一本の裏拳でまとめて殴り飛ばし、そのままもう一人を正面から殴った。

バタバタッと倒れた兵士たちをひょいひょい抱え、また並べていく。

あと半分か・・・。


ん?半分?

はた、とアダムスの動きが止まる。


こんな短時間で?

魔物の相手をしながら、あれほどいた兵士を半分も倒せるか・・・?


「だんちょー、何やってんすか!!」


すぐ後ろから声が聞こえ振り向くと、オリヴァンがすぐ後ろに立っていた。

何故か、ビショビショの姿で。


「お前、ヘンリエッタ様はどうし・・・なんでそんなに濡れてんだ?」


「どうもこうもないっすよ!!ヘンリエッタ様、疾香蝶(シッコウチョウ)だけじゃなくて、ラブ・ゴキブリまで連れてきたんすよ?!」


ラブ・ゴキブリとはその名の通り背中にハートマークを背負った、可愛くもないただのゴキブリである。

甘い香りに強く反応し急速に集まる習性を持つ。


「何とか追い払って事情を説明してたんすけど、ちょうど顔を出したカリナの近くにラブ・ゴキブリが一匹が行っちゃって、カリナが火炎魔法出して、ウルバヌスさんの服とヘンリエッタ様のドレスに火がついて、慌てて俺が水魔法出して・・・」


「あ〜わかったわかった。とにかく大変だったんだな。で、ヘンリエッタ様とジジイは?」


「それが、ビショビショになったから着替えてくるってウルバヌスさんの家に行かれたんですけど、二人で家の前を見張ってたらいつの間にか裏から居なくなってたんで、探しに来たんす。あ、ジジ、ウルバヌスさんは今着替えてます。」


「おい・・・大丈夫なんだろうな?」


「もし見かけたらすぐ連れて戻るんで教えてください。流石にこっちには来ないと思いますけど・・・。」


オリヴァンの話を聞き、遠くまで見渡すように首を伸ばし、目を凝らす。

いくらなんでもサハラード側には行ってはいないと思うが・・・。


アダムスの視線の先で、サハラードの軍の後方に構えるエンペラー・ワームの背後に数人の兵士たちが回り込んだ。

その手には、見覚えのある布が握られている。

そしてエンペラー・ワームの背後に隠れるや否や、光沢のある灰色の布を身に纏った兵士の姿が砂漠の景色に消えるように見えなくなった。


アレは、布じゃない、ローブだ。

春先の王都を襲った、あの時だ。


「・・・っ!!全員剣を抜け!隠蔽魔法のローブで近付いて来てるぞ!」


アダムスが叫んだ。

と同時に、キィン・・・!!と高い金属音が響く。

一人の団員が、何もない空間から現れた剣を受け止めている。


「っぶねぇ!!団長、遅いって!」


「馬鹿野郎!戦いの最中に警戒を怠るな!」


叫び、自身も神経を集中させる。

違和感のある空間が、そこらここらにある。

おそらくそこにローブを着た兵士が居るのだろう。

そこを叩けば・・・。


動き出そうとしたその時、背後から大きな大きな違和感が近づいてきた。

その違和感は、猛スピードでこちらに向かってくる。


「なんだっ?!一体何がっ・・・?!」


振り向くと同時に、頭上スレスレをキラキラと光る大きな塊が飛び越えて行く。

その塊と共に、聞き覚えのあるヌメッとした声が戦場に響き渡った。

魔力走行車に乗って山なりに飛んで来たヘンリエッタだ。


「わたしの王子様は~っどこかしらっ?!」

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