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完全無欠の第三王女と最強剣士は結婚したいがしたくない  作者: 斉藤りた


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17.噂を信じちゃいけないよ

アダムスは迷わなかった。


走り去った方向はわかっていたが、地平線まで見えている街道に人影はなく、うっすらとある細い獣道や木立や岩場で見えない所にも人の気配はない。

だが、アダムスは街道の分かれ道まで来ると一度立ち止まって辺りを見渡し、躊躇なく道のない方へと向かって走り出した。

頭で考えたわけでも、予想していたわけでもない。


こっちにイヴェリンがいる。


そう感じたままに、確信をもって走り出した。

十数分ほど走った先に見えてきたのは、木々の集まり、森と呼んでも差し支えないほど大きなオアシスだ。


「ここか・・・?」


スピードを緩め、ゆっくりと木々の間へと入って行く。

荒野にいるとは思えない清涼な空気と瑞々しい植物の香り。小鳥のさえずりや葉のこすれる優しい音色が耳をくすぐっている。

まるで木の精霊(ドライアド)の住処に迷い込んでしまったかのようだ。


すると、視界に木漏れ日を受けて煌めく湖が入った。

その湖のほとりに、いつも見ている気高い白金色の髪の毛が見えた。


「イヴェ・・・ッ!」


ガシッ!


進もうとしたアダムスの腕が、何者かに力強く掴まれた。

が、条件反射でその腕を掴み返し、グルンと投げて地面に組み伏せる。


「痛い痛い!団長ぉ、なんでぇ・・・?」


「あっ、カリナ!す、すまん、忘れてた!」


「なんですかもぉ~・・・忘れてたって・・・ひどぉ~。」


「いや、イヴェリンしか見えてなかったんだ。」


「・・・そういう甘いセリフは本人に言ってくださいよ・・・。」


「そんな事より、イヴェリンのあれは何してるんだ?」


二人の視線が木々の先にいるイヴェリンに向けられる。


「ここからだと見えにくいですよね。もうちょっとこっちに・・・あ、ほら見えた。」


カリナに促されて少し場所を変ると、イヴェリンの膝に大きなものが横たわっている。


「あれは・・・馬?いや、ユニコーンか?!」


ユニコーン。

魔物ではなく人を害する事のない幻獣に分類され、その外見は馬の頭に螺旋状に巻かれた長く真っ直ぐな角があるのが特徴だ。

その角は長い時をかけて魔力を凝縮したもので、人にとっては様々な薬効をもたらす万能薬となり、魔物にとっては爆発的な力を得られるエネルギーの塊となる。


だが非常に希少な幻獣でその生態は未だ謎が多くどこでどのように現れるのかもわからないので、目にするだけで幸運が訪れると言われているほどの生き物である。

ちなみに王都の雑貨屋ではユニコーンをモチーフにした小物が流行っており、幸運を呼ぶアイテムとして女性を中心に根強い人気がある。


そんなユニコーンがイヴェリンの膝で横たわり気持ち良さそうに目を細め、木々の隙間から漏れた光が湖のほとりを照らし、幻想的な雰囲気を醸し出している。


「何でこんな場所にユニコーンが居るんだ?」


「さぁ?イヴェリン様の事だしなんか考えがあるんでしょうけど、害はなさそうだから見守ってます。」


「・・・なんで見守ってるんだ?近くに行けばいいじゃねえか。」


「いや、だってユニコーンですよ?!近寄って逃げられてもショックだし、逃げられなくても恥ずかしいし・・・。」


最後の方はモゴモゴと口の中で喋りながら、胸の前で合わせた両手の指を無意味に動かしている。


「お前、何言ってるんだ?」


「え、だって、ユニコーンって・・・ひ、非処女が近づくと逃げるって言うじゃないですか!」


「・・・お前、何言ってるんだ?」


ユニコーンの通説としてよく言われているのがユニコーンは処女好きだという説である。

だが噂は噂。

生息地も何も分かっていない幻獣の、人間に対する好みなどわかるわけがない。


「馬鹿馬鹿しい、行くぞ。」


「あっ!待ってください!せめて、イヴェリン様がいいよって言って、ユニコーンがどっかに行くまで!」


「何でだよ!別にいいじゃねえか、逃げないんだったら一緒なんだし。」


「い、イヤですよぉ!」


「お前が未婚なんてわかり切ってるのに何がダメなんだよ。結婚してねぇ奴はわざわざ言わないだけで皆んな同じだろ。」


「・・・はえ?」


キョトンとしたカリナの様子に、同じくキョトンとした様子のアダムス。

つまり、もしも噂が正しかったとしても未婚ならば皆等しく未経験なのだから、今さら恥ずかしがるようなことでもないだろう、と言っているのだ。


「・・・そうでした、団長はそういうお人でしたね、ガッチガチの純情人間ですもんね・・・わかりましたよ!でも、他の人にはユニコーンの事は言わないで下さいねぇっ?!」


半ばやけくそになったカリナが、ガサゴソと音を立てながら草をかき分け歩き出す。

ちょっと涙目に見えるカリナの様子を訝しみながらも、アダムスがそれに続く。


「イヴェリン様ぁっ?!デリカシーのない団長が来ましたよぉっ!」


カリナの大声に驚いたユニコーンが、イヴェリンの膝から飛び起きた。

そのまま二人を警戒しつつ後ろに数歩下がったかと思うと、クルリと身体を翻し一目散に駆けて逃げてしまった。


「あっ、もう、カリナってば!もっと採取したかったのに!」


「文句は団長に言ってください!女性の恥じらいってもんをわかってないんですから!イヴェリン様が叩き込んで下さいよ!」


「無理よ。諦めなさい、アダムスなんだから。」


女性二人から冷ややかな視線を受けて思わず怯むが、引っかかった言葉について問いかける。


「採取って、何の事だ?」


「ユニコーンの角よ。何とか先端は取れたけど、もっと根本の方も折ろうとしてたのに。」


「角?何に使うんだ?」


イヴェリンがニンマリと笑い、その顔に見覚えのあるアダムスは嫌な予感がする。


「薬を作るのよ!とびっきり強力でリバウンドのない、痩せ薬をね!!」

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