第11話 完成
屋敷に戻って来た真白たち―――
「みんな、ただいま~♪帰ったよ~。」
(みんな)「おかえりー。」
「先生、おかえりなさい!」
「おぉ、アンジュよ。ただいまじゃ。」
「大丈夫だった?」
「ほっほっほ。皆に助けてもらったからの。」
「何言ってるの~。おじいちゃん凄かったんだよ~。」
「真白ネェ、ホント?さすが先生!」
「師範、ただいま帰りました。」
「おう!おかえり。ご苦労だったな。」
「レオ、私たちもBランクに上がったんだよ~。」
「ガッハッハ!追いつかれちまったな。」
「えへへ~。」
「ん?どうしたんだ、ミオ。浮かない顔して。」
「師範、実は・・・」
美桜は折れた剣を取り出した。
「申し訳ありません!師範に頂いた剣を・・・」
「ガッハッハ!まだまだ修行が足りんな。」
「はい・・・」
「まぁ気にするな。ボルクに直してもらおう。」
「はい。それで、これが使えないかと思いまして。」
レオにグラニトシュランガーの銀鱗を手渡した。
「な!こ、これはアダマンタイトじゃないのか!?」
「え?あだまん・・・」
「何!今、アダマンタイトって言ったか!?」
「ボルク!」
「おお!こいつぁ、まさしくアダマンタイトじゃねえか!」
「硬すぎて加工も難しいらしいが、出来るか?ボルク。」
「ドワーフ族を舐めんじゃねぇぜ!」
「そうか。せっかくだから2本とも刃を替えよう。」
「任せときな!ただし、1週間は掛かるぜ。」
「ねぇ、おじいちゃん、美桜、ホントにいいの?」
「なんじゃ?報酬のことか?」
「うん。だって・・・」
「言うたじゃろ、生活費じゃと。それに小遣いは貰おたしの。」
「ちょっとだけじゃない。それに・・・」
「今更、一緒に住めないとでも?」
「まさか!おじいちゃんが一緒に暮らしてくれるとアンジュも喜ぶし。」
「じゃあ、なんじゃ?」
「そもそも、おじいちゃん、今どこに住んでるの?」
「街はずれの山の中で隠遁生活じゃ。」
「え、マジ?大賢者とかお屋敷に住んでそうだけど。」
「昔はの。じゃがもう引退したからのぉ。」
「そうなんだ。」
「じゃから、皆と居るのは楽しいんじゃよ。」
「そっか・・・」
「真白、私も生活費に充ててくれと言ったはずだぞ。」
「美桜・・・」
「剣の修理代分は使わせてもらうけどな。」
「それは勿論。でも仕送りとかするんじゃないの?」
「サロンで働き始めたら給料出してくれるんだろ?」
「当然!」
「仕送りはそれからでいいんだ。」
「でも・・・」
「そもそも私は高額な報酬を貰えるほど役に立っていない。」
「そんなことないよ!美桜がいなかったら、とっくにやられてるよ。」
「いや、自分の未熟さは自分が一番分かっている。」
「そんな・・・」
「真白よ、この話はもう終わりじゃ。良いな?」
「・・・うん。」
「さあ、みんな!飯にしようぜ!」
「どうぞ皆さん、食堂の方へ。」
「カイ、レイ!」
みんなは、まだ工事中の食堂で、楽しく食事をした。
そして、3カ月後―――
ようやく工事が終わった。
そして買っておいた備品の搬入。
あとは、それぞれの必要なものを郊外の『リオンモール』で買い込んだ。
工事開始から6ヵ月。
幽霊屋敷が、立派なサロンに変貌を遂げた。
1つずつ見ていきましょう。
まずは1階―――
エントランス前の庭には桜の木。
オルディスが常緑樹で形作った蝶。トピアリーと言うらしい。
蝶は変化や再生、幸運を表しているそうだ。
裏には小さなプールと道場も作った。
建物に入ると右手前にカイの食堂。
右手奥にはカイ兄妹の部屋とオルディスの部屋。
左手前にはサロンの受付。
左手奥にはサウナ付きの大浴場。
サウナには地下庭園から持ち帰ったレア鉱石『スギライト』が置かれている。
紫色のスギライトは邪気から守ってくれたり自然治癒力を促す効果があるらしい。
正面には、2階へと続く階段がある。
2階―――
リオンで見つけた蛇の置物がお出迎え。蛇は再生の象徴らしい。
右手にメインのエステサロン。
白を基調とした木製の家具で統一された待合室。
小さな窓から柔らかい光が差し込むカウンセリングルーム。
施術室にはベッドだけ。機械は必要ない。
リラクゼーションルームには地下庭園から持ち帰ったレア鉱石『ラリマー』が置かれている。
淡い水色のラリマーは精神を安定させ、負の感情を鎮めて前を向くエネルギーを与えてくれるらしい。
左手にはジムとロッカールーム。ここから直接、下の浴場に降りることも出来る。
最後に3階―――
このフロアは居住スペース。
真白、美桜、アンジュ、レオ、それぞれ個室を用意した。
アンジュには相部屋を提案したが、拒否された。
1人で勉強したいらしい。
空き部屋も4つある。
人が増えても大丈夫。
今のところは物置として使う予定だ。
元は幽霊屋敷に思えた。
しかし案外そのまま使えるものも多かった。
3階は壁紙を張り替えたくらいで十分だった。
食堂や浴場も、配管をそのまま使えたので大規模な工事はしていない。
プールや道場は新しく作ったので一番大変だったかもしれない。
それでもバルクがかなり割引してくれたので安く済んだ。
今日からここでみんなで一緒に暮らしていく。
カイが用意してくれた温かい夕飯。
みんなで食卓を囲む。
いつもよりさらに美味しく感じる。
食事を済ませ、お茶を飲んでいると真白が口を開いた。
「サロンの名前なんだけどさ。」
「『Salon de restalite』サロン・ド・リスタリテってどうかな?」
「リスタリテ?」
「再スタートって感じのrestartをもじったんだけど・・・」
「再スタートか・・・いいじゃないか。」
「ホント?レオ。」
「ああ。俺もお前らに会ってリスタートしたからな。」
「リスタリテだけどね。」
「私も真白と出会ってからリスタート出来た気がするよ。」
「美桜・・・リスタリテだけどね。」
「わたしも真白ネェとミオネェに助けてもらってリスタートしたよ?」
「アンジュ・・・リスタリテだけどね。」
「わしもアンジュが学びに来てからリスタートしたのぉ。」
「おじいちゃんも?リスタリテだけどね。」
「それなら俺たち兄妹もだな、レイ。」
「うん!リスタートしたね。」
「リスタルテ・・・」
「そういう真白はどうなんだ?」
「サロンを始めるのはリスタートってよりスタートだろ?」
「レオ・・・」
「・・・みんなに話してないことがあるんだ。」
「真白?」
「美桜とおじいちゃんとは約束してたよね、いつか話すって。」
「いいのか?」
「うん。聞いてくれるかな?」
真白は大きく息を吐くと、ゆっくり話し始めた―――




