第6話 家族
街はずれの小さな一軒家―――
カイの妹、レイは寝込んでいた。
理由は分からない。
ある日突然、魂が抜かれたかのように倒れ込み
そこから寝たきりの日々。
ほとんど食事も取れず、日に日に弱っていった。
「レイ、調子はどうだ?」
「今日は良い薬があるんだ。」
「ちょっと、体を起こすぞ。」
カイはレイの体を抱き起こし、水差しに移し替えた人参汁で唇を湿らせた。
「う、う~ん・・・」
「レイ?」
「おにぃちゃん・・・」
「さぁ、飲んでみろ。」
レイはゆっくり、ゆっくり、人参汁を喉に流していく。
・・・しばらくすると、レイの頬にだんだんと赤みがさし始めた。
「どうだ?気分は。」
「うん・・・ちょっと、楽になった気がする。」
「そうか!ちょっと待ってろ。」
カイはキッチンで料理を始めた。
養霊人参を使った、温かいクリームスープ。
養霊人参を甘く煮詰めた、グラッセ。
すりおろした養霊人参入りのミートボール。
デザートに、養霊人参のキャロットケーキ。
レイはベッドから起き出し、歩いてキッチンにやって来た。
「良い匂い・・・」
「レイ!起きられたのか!?」
「お腹すいちゃった。」
「そうか。テーブルに運ぶよ。」
「何だい?良い匂いだねぇ。」
「ばっちゃん!ばっちゃんも一緒に食べてくれ。」
3人はテーブルに着くと、料理を食べ始めた。
「美味しい!お兄ぃちゃん、美味しいよ。」
「そうか、そうか。・・・良かった。」
「これは養霊人参だね!若返るねぇ・・・ヒッヒッヒ。」
「ばっちゃんの言う通りだったな。凄い人参だ。」
「だろ?それにしても、よく採って来れたねぇ。」
「あぁ。親切なヤツらが採ってきてくれたんだよ。」
「ほぅ。それはしっかりお礼しないとねぇ。」
「明日、お礼に行って来るよ。」
「お兄ぃちゃん。わたしも一緒に行く!」
「レイ・・・大丈夫なのか?」
「うん!もう全然大丈夫だよ。」
「そうか。じゃあ一緒に行こう。」
「それじゃあ、わしも行くとするかねぇ。」
「ばっちゃんも?」
「孫たちが世話になったんだ。当然さぁね。」
「わかったよ。みんなで行こう。」
翌日―――
屋敷の庭では、オルディスとアンジュが草木の手入れをしていた。
「おはようっす!」
「おお、カイ。よく来たの。」
「カイのお兄ちゃん、おはよう。」
「ちょっと紹介したいんだけど、みんな居るかい?」
「お。そうかね、そうかね。ちょっと待っておれ。」
「わたし、呼んで来る!」
「悪ぃな、アンジュちゃん。」
「カイ!もしかして・・・」
「ああ。おかげ様でな。」
「さぁ、レイ。挨拶出来るか?」
「うん。・・・みなさん、はじめまして。レイです。」
「兄がいつもお世話になっています。」
「そして、わたしのために人参を採って来てくれてありがとうございます。」
「キャ~♡可愛い♪」
「しっかりした妹さんだな。」
「みなさん、孫のためにありがとねぇ。」
「カイのおばぁちゃん?」
「そうだよ。孫たちが世話になったね。」
「いえいえ。レイちゃんが元気になって私たちもうれしいです。」
「お礼に何でもするから、遠慮なく言っとくれよ。」
「いえいえお礼なんて・・・てか、全然ボケてないじゃん。」
「おい真白!失礼だぞ。」
「カイ!アンタまた、わしをボケ老人扱いしたんだね!」
「ち、違うよ、ばっちゃん・・・ごめん。」
「ったく、アンタは・・・」
「あ~、ごめんなさい、おばぁちゃん。失礼なこと言っちゃって。」
「ヒッヒッヒ。いいんだよ。確かに少しボケていたのかもしれん。」
「え?そうなの?」
「あぁ。じゃが昨日、養霊人参を食べてから頭がスッキリしてねぇ。」
「ホント!?凄すぎ養霊人参!」
「ほっほっほ。生命力の塊じゃからの。」
「ん!?アンタ・・・オルディスかい?」
「ほっほっほ。久しいのぉ、マーサよ。」
「え?おじいちゃん知り合いなの?」
「まぁの。かれこれ70年ぶりくらいかのぉ?」
「70年!?」
「アンタ、全然変わっとらんねぇ・・・生きとったとは驚きじゃ。」
「ほっほっほ。マーサは老けたのぉ・・・」
「当たり前じゃろ!あの頃わしはまだ10代じゃぞ。」
「食堂の看板娘じゃったからのぉ。」
「看板娘?おばぁちゃん凄い!」
「マーサ目当ての冒険者も多かったんじゃ。」
「アンタはあの頃から爺さんじゃったがね。」
「え?ちょっと待って。おじいちゃん、何歳なの?」
「ほっほっほ。内緒じゃ。」
「何言ってんだい!アンタゆうに150越えとるじゃろ。」
「な・い・しょ・じゃ。」
「あの~、真白。昨日の話なんだけどよ・・・」
「カイ?」
「やっぱり俺に店、やらせてくれないかな?」
「ホント!?うれしい♪」
「いいのか?」
「もちろん!期待してるよ♡」
「ありがとな。」
「あの!真白さん。わたしも兄の店、手伝いたいです!」
「レイちゃん、大歓迎だよ~♪看板娘だね♡」
「それじゃあ、わしも看板娘やろうかねぇ。」
「おばぁちゃん??」
「ヒッヒッヒ。冗談じゃ。わしは畑でウマイ野菜作って持ってくるさね。」
「いいね~、それ♪」
「さぁ~、楽しくなってきたぞぉ~♪」
屋敷の庭に、みんなの笑顔が弾けた―――
その光景はまるで、大家族のホームパーティーのようだった。




