第7話 手
早朝の公園―――
美桜は遊具の上を飛び回っていた。
ジャングルジムからシーソーへ飛び移る
滑り台を駆け上がり
雲梯の上を走り抜ける
ブランコの間をすり抜け
砂場を転がる
登り棒を腕だけで登り
馬型のスプリング遊具を乗りこなした
「遅い!もっと速く!」
「はい!」
「上に飛ぶんじゃない!前に飛べ!」
「はい!」
ハァハァハァ・・・
「よし!1分休憩!」
「はい!」
この遊具巡りは3時間続いた・・・
「よーし、いいだろう。」
バタッ・・・
「ハァハァ・・・ありがとうございました・・・」
「オイオイ、何言ってるんだ。まだまだ、これからだぞ。」
「・・・はいっ!」
「ガッハッハ。良い返事だ。」
「俺が見た所、やはり腕の筋力が足りていないようだな。」
「だが、脚の方はマズマズだ。」
「それに、柔軟性もある。」
「は、はい・・・」
美桜はちょっと嬉しいようだ。
「そこでだ。今から体術をやる。」
「体術?」
「お前は、これを使え。」
ナイフ程の短い木刀を2本差し出してきた。
「これを・・・?」
「そうだ。俺は素手で構わん。」
「さあ、打ってこい。」
「はい!」
木刀で打ち込むが届かない。
「踏み込みが甘い!」
「はい!」
大きく踏み込む。
バシッ!
足を払われ転倒。
「不用意に飛び込むんじゃない!」
「はい!」
サイドステップでフェイントを入れる。
スッと間合いを詰める。
打ち込む!
ライオンは手で受け流した。
「今のは良かったぞ。続けろ。」
「はい!」
ステップ!
踏み込む!
「!!」
目の前に突然、拳が現れた!
ペタン・・・
尻餅をつく美桜。
「す、寸止め・・・」
「どうした?相手も攻撃してくるぞ。」
「は、はい!」
1時間後―――
「そうだ!良いぞ。」
「どんどん、打ってこい!」
「はい!」
緩急をつけた変幻自在のステップ。
連撃!!
チッ!
ライオンの脇腹に木刀が掠った!
ドゴッ!!
「グガッ!」
美桜の腹にライオンの拳が減り込む。
「・・・ハッ、おい!おい!」
息が出来ない
ライオンの声が遠くなる・・・
――――――
「みお・・・美桜・・美桜!」
ハッ
美桜が目を覚ました。
「私は・・・」
「トレーニング中に怪我をして、レオが運んでくれたの。」
「レオ?」
「俺だ・・・すまない。」
「あ、・・・いえ、私が油断しました。」
「違うんだ。腕の制御が効かなくて・・・」
「本当に、申し訳ないことをした。すまなかった・・・」
「いえ、そんなこと・・・」
「ねぇ、レオ。その左腕って・・・」
「ああ。義手だ。魔力で動かしている。」
「しかし最近、うまく動かせない時がある。」
「そりゃそうや!魔力の流れが狂っとるわ。」
「なっ!何だ、お前は!」
「マミー!急に出てこないでよ。びっくりするでしょ。」
「おー、スマンスマン。マミーやで。ヨロシクな。」
「マミー・・・流れが狂ってるとは?」
「レオ言うたかな?レオの出しとる魔力が、上手く回ってないんや。」
「回ってない?」
「そや。その義手、良ぉ出来とるけどな。ちょっと壊れとるかもしれん。」
「壊れてる・・・」
「ねぇレオ。その腕、見せてくれるかな?」
「見てどうする?」
「もしかしたら、治せるかもしれない。」
「・・・頼む。」
レオは左腕を差し出した。
「マミー、お願い。」
「よっしゃ。」
マミーが手をかざすと、魔力の流れが見えるようになった。
「う~ん、確かに上手く流れてないわね・・・」
「治せそうか?」
「うん。やってみるね。」
真白はレオの腕に触れた。
「インスペクション・オーラ」
レオの腕が青白く光る・・・が、一部が赤く染まっている。
「これね・・・毒素のようなものが溜まってるわ。」
「毒素?」
「うん。怪我でもした?」
「まぁ、戦闘中に小さな傷を負ったくらいだが・・・」
「小さな傷からでも雑菌や毒が入るからね。」
「そうかも知れないが・・・」
「じゃあ、治療してみるね。」
「マナドレナージュ」
光る手でレオの肩から指先までマッサージ。
1分ほど続けると、赤く染まっていた患部が奇麗になって行く・・・
「よし、いいかも。」
「どう?」
シュシュシュシュ!
「おお!腕が軽い!自在に動くぞ。」
「ホント?良かった~」
「ありがとうよ。恩に着る。」
「いいのよ。私も嬉しいし。」
「良かったですね。師範。」
「師範?ガッハッハ。俺に弟子が出来るとわな。」
「ねぇ、レオ。私たちの仲間になってくれないかな?」
「・・・すまないが、それは出来ない。」
「どうしてですか?師範。」
「・・・少し、俺の話を聞いてくれるか?」




