第6話 師
食堂を出ると、マミーが話し出した。
「獣人の手ぇ、気ぃ付いたか?」
「手?手がどうかした?」
「なんや、気付いとらんのかいな。」
「義手や。」
「義手?ホント?全然気付かなかった~。」
「左腕や。肩から先、全部や。」
「そうなの?見た目も本物みたいだし、ちゃんと動いてたと思うけど・・・」
「良ぇ職人が作ったんやろな。動いてるのは魔力や。」
「そっか・・・」
「でも問題はそこやない。」
「え?」
「魔力の流れがおかしいんや。」
「流れ?」
「そや。腕を動かしてる魔力が上手く流れてへんのや。」
「どういうこと?」
「原因はわからんけどな、あのままやと思った通りに動かされへんハズや。」
「治せないの?」
「俺には無理やけど、お前なら治せるんちゃうか?」
「私?でも、魔力の流れとかわからないよ。」
「それは俺が手伝ぉたる。」
「わかった。やってみるよ。」
「でも、素直に見せてくれるかなぁ・・・」
冒険者ギルド―――
アンジュは先生に連れられて冒険者ギルドに来ていた。
「お姉さん、ちょっとええかの?」
「はい。なんでしょう?」
「すまんが、ギルマスを呼んでくれんかの。」
「ギルドマスターですか?・・・ご用件は?」
「この子を冒険者登録したいんじゃがの。」
「・・・アンジュちゃん?」
「こんにちは。ミーナさん。」
「こんにちは。・・・この方はお知り合いですか?」
「はい。わたしの先生なんです。」
「先生?・・・そうですか。でもアンジュちゃん、5歳くらいよね?」
「・・・たぶん。」
「あの・・・申し訳ありませんが、未成年者は登録できないんですよ。」
「ほっほっほ。わかっておるよ。だからギルマスに頼もうと思っての。」
「いや~・・・ギルマスに頼んでも・・・」
1人の男が慌てて飛び出してきた。
「これはこれは、大賢者様。どうかされましたか?」
「大賢者?!」
「馬鹿者!君は大賢者様を知らんのかね。」
「も、申し訳ございません!」
「このお方は、世界四大賢人が1人、水の大賢者ことオルディス・アクレイン様だぞ。」
「ほっほっほ。良い良い。昔の話じゃ。」
「それでの、わしの教え子を冒険者登録してもらえるかの?」
「もちろんでございます。大賢者様のお弟子さんなら喜んで。」
「わしが、身元引受人になるからの。」
「ほら君、早くしたまえ。」
「はい!」
「出来ました!」
「早いのぉ!」
アンジュが冒険者になった!
「先生は大賢者様だったんですか?」
「ほっほっほ。今はただのおじいちゃんじゃよ。」
宿屋―――
「ねぇねぇ、これ見て~。ギルドカード。」
「え?え?なんで?」
「えへへ~。冒険者になったんだ~。」
「冒険者?|未成年では、なれないはずだが?」
「わたしの先生が、ギルマスにお願いしてくれたの。」
「へぇ、凄いじゃん。」
「いや、それは不正ではないのか?」
「え・・・」
「不正をして冒険者になって嬉しいのか?」
「ちょっと美桜、そんな言い方・・・」
「わたし・・・2人の役に立ちたくって・・・」
「アンジュ、ありがと。嬉しいよ。」
「すまない・・・頭、冷やして来る。」
「美桜・・・」
公園―――
美桜は1人、公園のベンチに座っていた。
「ハァ・・・情けない。」
「アンジュに当たってしまうなんて・・・」
「また、お前か。」
目の前にライオンが立っていた。
「・・・」
「何だ?仲間割れか?」
「フッ、よくわかるな・・・」
「ガッハッハ。良かったじゃないか。仲間を殺さずに済んで。」
「また、お前は・・・でも、そうかもな。」
「ほう、やけに素直じゃないか。」
「私は仲間の役に立っていない・・・子供にも追い抜かれそうだ。」
「焦って、子供に当たってしまったよ。」
「強くなりたいのか?」
「え?」
「強くなりたいのか、と聞いている。」
「なりたい・・・強くなって、仲間を守りたい。」
「そうか・・・ついて来い。」
「どこへ・・・」
ライオンは足音一つ立てず歩いて行く。
「は、速い・・・」
美桜は必死で追いかけた。
2人は武器屋に到着。
「おや?らっしゃい。また来たのかい?剣はまだだよ。」
「ああ、はい・・・」
「主人。そこの脇差、見せてくれ。」
「はいよ。」
店主は、刃渡り45cmくらいの短い刀を取り出した。
「これを持ってみろ。」
「あ、ああ。」
刀を手に取った瞬間、手に馴染むのを感じた。
軽く振ってみる。
シュン、シュン、シュン―――
自在に操れる。まるで手の延長のようだ。
「どうだ?」
「凄くいい。」
「そうか。」
「主人。こいつに合うバランスでミスリル鋼の脇差を2本、打ってくれ。」
「新しく打つとなると、50万WNほどになるよ?」
「ご、50万!?待ってくれ。そんな大金持ってないぞ。」
「構わん。俺が出す。」
「いや、しかし・・・」
「強くなりたいんだろ?」
「それは、そうだが・・・」
「なら、黙って受け取れ。」
「・・・ありがとう。」
「主人、何日かかる?長剣の修理は後でいいぞ。」
「そうですねぇ・・・3日ほどで」
「2日だ。」
「・・・はいよ。」
「お前は、明日の朝5時に公園に来い。」
「公園?」
「刀が出来るまで、やることがある。いいな?」
「はい。」
ライオンは音もなく去って行った―――




