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冷静墓守令嬢、残念スパダリ王太子に狙われる  作者:


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1/11

墓守令嬢、嫁ぎ遅れる

全11話、最終話まで完結済みです。

よろしくお願いします。

 グリムハイト子爵家は、代々王家の墓を守る一族だ。その長女、エリゼ・グリムハイト子爵令嬢は、今代の墓守として日々仕事に勤しんでいる。


 墓守の役目は、ただ墓を管理することではない。歴代王の英霊たちと対話し、彼らの知恵を継ぎ、王国の未来を導くことこそが真の務めだった。


 そんな彼女が現在抱えている問題は――


『エリゼ、お前はいつ結婚するのだ?』


 墓所に響く、歴代王たちの真剣な問いかけである。 


「必要ありません」


 エリゼはきっぱりと答えた。

 彼女は二十歳になったところ。十六から二十歳が適齢期とされている貴族令嬢としては、確かにそろそろ焦る年齢だが、婚約者もいない彼女が焦るそぶりはない。


「私は墓守です。一生、この役目を全うするだけの存在です。結婚など不要です」


 しかし、英霊たちは納得しなかった。


『いや、問題はそこではない! お前が結婚せねば後継者がいなくなる! つまり墓守が絶え、いずれ我らの墓は荒れ果てるのだぞ!』

「……場所が荒れるのは困りますね。しかし、私が結婚せずともーー」

『困るのだ! だから、お前に相応しい結婚相手を斡旋してやろう!』

「……は?」


 エリゼは無表情のまま聞き返したが、英霊たちはやる気満々だった。


『すでに候補は選定済みだ! お前には、王太子レオンハルトと結婚してもらう!イケメン、高身長、将来の国王で頭の回転も悪くなく剣術もピカイチ!我らが子孫!二十四歳で歳周りもいい!』

「…………」


 エリゼは沈黙した。まるで目の前の英霊たちが現実を認識できていないような気がしたからだ。


「……王太子殿下が、墓守の嫁を娶るわけがありません」

『違うな。我らが娶れと言えば、奴は従う!』


 エリゼはため息をついた。歴代の王たちは王国を治めた偉大な存在だが、こういう時は妙に強引である。


「……まあ、どうせ殿下が断るでしょうし、放っておきましょう」


 彼女はそう判断し、いつも通り墓の手入れを始めた。

 しかしその翌日、英霊たちの本気を、彼女は知ることになるーー。



   ◆



 一方その頃、王太子レオンハルト・フォン・アスカリアは悪夢にうなされていた。


『レオンハルト、お前に命じる。エリゼ・グリムハイトを娶れ』

「……は?」


 夢の中で、歴代の王たちが彼を取り囲んでいた。


「待て、あなた方はもう死んでいるはずだろう」

『死んでいるが、影響力はある』

「グリムハイト子爵令嬢を娶れ……? 何の冗談だ」


 レオンハルトは冷静に返した。彼にとって墓守令嬢のエリゼは、時折訪れる墓所の管理人程度の人物でしかない。


『冗談ではない。墓守がいなくなれば、王家の墓が荒れ、我らの眠りは乱される! 』

「……だから俺に結婚しろと?」 


『そうだ。エリゼは無表情で淡々としているが、悪い女ではない』

『礼儀正しいし、墓守としての責任感もある』

『クールなところも、むしろアリ寄りのアリ』

『あれぐらい落ち着いていた方が王妃に向いている』

『墓所に住み着いた猫ちゃんを見つめている時だけ表情が崩れるのが堪らない』

「待て、なんだその評価は」


『とにかく、お前はエリゼを娶れ!』

「……断ったら?」

『歴代王の我々に逆らう気か?』

「……」


 レオンハルトは頭を抱えた。


「そもそも、当の本人が俺と結婚する気がないだろう」

『だからこそ、お前が押し切るのだ!』

「無茶を言うな……」


 しかし、英霊たちは真剣だった。


『いいか、エリゼを娶らねば、お前は眠るたびにこの夢を見ることになる』

「……っ!」


 つまり、毎晩この「墓守令嬢を娶れ」コールが続くということか。


『これも王国の未来のためだ。頼んだぞ、レオンハルト』


 そして、英霊たちは消えた。

 レオンハルトは目を覚まし、額を押さえた。


「……何なんだ、これは……」


 夢の内容があまりに現実感を持ちすぎていた。


 そこへ、従者が入ってくる。


「国王陛下より、お呼び出しです。急ぎのお支度を」

「…………」


 嫌な予感がした。


 急いで向かった謁見の間では、現国王でありレオンハルトの父親でもある男が、憔悴した様子で玉座に座っていた。

 お互いに目を合わせ、言わんとすることを察した。


「……父上」

「お前も見たか、夢を」


 レオンハルトは頷き、やはりあれがただの夢ではないことを実感する。


「英霊たちは、王族の血を引く者に、たまに夢を通して助言をくれる。だが……まさか『墓守令嬢を娶れ』とはな……」


 レオンハルトは額を押さえた。


「父上、俺はどうすれば」

「決まっている」


 国王は重々しく言った。


「英霊たちの言葉には逆らえん。お前は、エリゼ・グリムハイトに求婚するのだ」

「…………」


 まさか、自分の人生でこんなことが起こるとは思わなかった。

 だが、王族として英霊たちの言葉は無視できないらしい。


「……わかりました。やりましょう」


 レオンハルトは、王太子としての威厳を取り戻し、立ち上がった。


「すぐにエリゼ・グリムハイトの元へ向かいます」



   ◆



 そしてーー

 墓所にて掃除をしていたエリゼの前に、王太子レオンハルトが現れる。


 彼はエリゼの目の前に立ち、真剣な目で言い放った。


「俺と結婚しろ」

「……は?」


 墓守令嬢と王太子の物語が今、幕を開ける――。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ、評価、リアクション、ブクマいただけると幸いです。


次話『王太子の突然の求婚(前編)』

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