第18話 ギェナコビン帝国城の者たち
毛並みが綺麗な1羽の鳩がゴシック様式の重厚な石造りで出来たギェナコビン帝国城の尖頭アーチから優雅に飛び立った。
ステンドグラスに囲まれた王座の間でラフィタビは、5000の軍隊を率いる統帥であり、ギェナコビン帝国の王であるアレースには一任されている。何もかもの決断を任すくらいの絶対的信頼を置いていた。
クオルーブンダ帝国との闘いでは20000人の軍隊に対し、5000人の軍隊で少ないにも関わらず、勝利に導いた。魔術師に炎の魔法を唱えさえ、訓練に訓練を重ねた兵士たちの強化は計り知れないものだった。ラフィタビの指導、強さ、すべてに置いて優秀であったのだ。
「アーレス王。アリテリオ帝国が崩落するのも、もうすぐですよ。我が軍も強くなりますわ。国の範囲が広まれば、自動的に軍隊も強くなりましょうぞ」
「……そうか。崩落の中にも戦争に出せる者がたくさんいるということか」
「え、ええ。そうですとも」
自分のしていることに間違いないと自信満々にしていたが、崩落の際にアリテリオ帝国の兵士たちのほとんどを焼き払ったことを忘れている。戦える兵士として残ったのは、ヨクドリアとワトスン、ケンタウロスの3人だけだ。他はすべて町の住人ばかり。果たして、強くなったと言えるのだろうか。
王座の間の柱の向こう側、プレートアーマーを身に着けたイラリオは、面白くない顔をして小さく舌うちをする。ギェナコビン帝国の階級大尉として役割を担っているのが、統帥のラフィタビのやり方に不満を持っていた。アーレス王を下に見ていることが納得できなかった。この時はまだ地雷を踏む前の出来事で、オートアミュールではない素の体の状態だ。ヨクドリアとは他人そのものである。捕虜として運ばれてきた時にヨクドリアに「おい! 黙って歩け!」と発した兵士こそがイラリオだった。
――――「いたたた……」
暗い牢屋の中、狭い空間であるにも関わらず、3人は三角形を作るように寝相が悪かった。頭を蹴とばし、鼻に足の指が入ったり、お腹を枕にする者もいた。仲が良いのか悪いのか分からない状態だ。
「はっくしょん!!」
「うっさいわ。口を塞げ。口を」
「悪い悪い……」
ワトスンとヨクドリアはまるで兄弟のような親密さだ。ケンタウロスは半分人間の半分馬のため、体が人間のあたたかい。ペットかはたまた暖房器具のように重宝されていた。
「ここ触るとあったかけーな。いいな、ここ」
「ちょ……やめろ……」
「マジでずっと触っていたい。寒さ対策」
「いい加減にしろって……」
お腹や足の部分を触られてくすぐったい思いをするケンタウロスが、ついにブチぎれた。
「本気にすんなよ。冗談だろ」
「いや、絶対俺を暖房器具にしようとした! ストーブじゃねぇ」
「俺は認める。悪かった」
「あ、ずるい」
「やっぱりな。そういうやつらだと思ったよ。人間だと思ってないな。俺を!」
「だって、馬だろ?」
「い、いや、人間なところもある。こことか!」
ケンタウロスは右人差し指を自分の顔に向ける。ヨクドリアはポカンとした顔をする。ワトスンは興味がないのか違う方向を見ていた。
「いや、興味持とうよ」
「…………」
「もういい。まったく……」
涙をほろりと出すケンタウロスがかわいそうに見える見張りの兵士は一部始終を見てから、こっそり……
「静かにしろよ?」
「「「ひ!?」」」
急に話し出す兵士に背中が震えるほどびっくりした三人だった。




