第17話 新たなステージに降り立つ
三角の赤い屋根がいくつものそびえ立つギェナコビン帝国は燃えて跡形もなくなったアリテリオ帝国のお城よりも断然大きかった。鳩が羽根を休めにあちこち飛び交っている。城下町の商店街通りでは観光客もたくさん訪れていて、経済も盛んであることが分かった。両手後ろをロープで繋がれて、馬車の後ろを歩かされたのは、ワトスンとケンタウロス、ヨクドリアだった。アリテリオ帝国民たちは捕虜として全員捕まった。自国を守り切れなかった悔いが残る。
「このまま俺たちは殺されてしまうのか……」
「剣術があれば、生かされるんじゃないのか。結局のところ、王様が変わったってことだろ」
「ダーリオ・カゼッラ王の元でずっと死ぬまで崇敬するつもりだったんだ。あの時、守れなかったばっかりに……ちくしょー」
憔悴した体を鞭に打たれながら下を向いて、進むワトスンとケンタウロスはブツブツと呟く。その後ろをヨクドリアは静観して歩いていた。兵士になってから日が浅い。まだ王様を信じることはできていない。王様が死んでからも尚、国を滅んだことは悔しくて悲しいが、次に自分ができることを探していた。この命がある限り、何だってできる。そう考えていた。
「おい! 黙って歩け!」
ギェナコビン帝国の兵士は大きな鎧に身を包み、鋭利な槍で喝を入れる。いつか、自分も兵士のように強い装備品を付けることができるのだろうかと期待した。
「ヨクドリア、お前には無理だぞ」
「……は?」
何も言葉を発していなかったが、目の輝きを見て察したワトスンが言った。全部お見通しのようだ。
「階級が違いすぎるわ」
「……むー」
「俺でさえ、無理な領域だぞ、あれは」
「何でわかるんだよ」
「左肩に着いてる腕章だよ。Sランクの文字が見えないのか?」
「え、Sランク? ワトソンのランクは何だよ」
「お、俺は……万年、Eランクだよ」
「ぷぷぷ……」
「笑うんじゃねぇ。ケンタウロスが厳しすぎるからだ」
「お前が弱いからだぞ、ワトスン」
「ちっ……Bランクのくせに!!」
「うっさいわ!」
三人で小競り合いが始まった。なかなか収束がつかない。隣にいた兵士たちがしびれを切らしてみぞおちにパンチをくらわした。三人はそれぞれに伸びきって、担架で運ばれていく。そのまま暗く狭い牢の中にぶちこまれてしまった。
ヨクドリアが目を覚ました頃にはケンタウロスのいびきで頭痛がおさまらなかった。ワトスンは天使の寝顔のように静かに眠っている。小さな窓の外では三日月が輝いていた。遠くで狼の遠吠えが響いていた。




