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第14話 暗雲の空より来るものたち

 木製の大きな扉をヨクドリアは今日も筋肉痛でムキムキの体で開けた。何度も繰り返す兵士の集団訓練。いつ如何なる時もすぐに戦闘に立ち向かえるようにと指導する講師のケンタウロスには、大量の汗が吹き荒れていた。気合もいつもの倍以上、いつ寝ているのかというくらいの意気込みだ。ふとヨクドリアは、不思議に思う。前よりも増して、訓練時間が早まり、濃密になっている。これはもしかするとひょっとしてと、顎に手をあてて考える。


 すると、城内のアナウンスとサイレンが同時に鳴り、何を話しているのか分からない。その声を聞くか聞かぬかの前に訓練場が次々と空から落ちてくる爆弾によって、崩れ落ち、人々を恐怖に陥れた。あちこちで炎が沸き上がる。突然の出来事にヨクドリアの足がびくついて、動きを止めた。


「おい!!! 何をしている! 逃げろ!!」


 数メートル先にいたケンタウロスが、ヨクドリアの後ろ首根っこをつかんで、走り出す。声よりも体が先に動くタイプのようで、背中にヨクドリアの体を乗せた。半分が馬の姿のケンタウロスは、人間よりも早く走る。炎と爆撃の勢いもするするとよけていく。他の兵士たちは、既に息絶えている者もいる。目を塞ぎたくなる思いだ。


 出口に向かって必死に逃げようとするケンタウロスにヨクドリアは必死で体にしがみつく。そこへ、別部屋にいたワトスンが立ちはばかる。


「悪い! 俺に任せろ。ケンタウロスはダーリオ・カゼッラ王の元へ急げ。命が危ない!!」

「わかってる。こいつも大事な任務を任されてる。死なすなよ!?」

「当たり前だ」


 ワトスンはケンタウロスの背中からボンッと投げ出されたヨクドリアの体をガシッと抱きかかえた。まさか、投げ出されるとは思ってもみなかったため、体がバキバキになった。筋肉痛もここに来て、痛みが激しい。ヨクドリア本人も空中を飛ぶとは驚いていた。


「ぼんやりしてる暇ないぞ。行くぞ!」


 ケンタウロスは炎が立ち込める王座の間に果敢に進んでいく。しっかりと見届けたワトスンは、こっちに逃げるぞと誘導する。外に出ると暗雲が立ち込める空ではたくさんの飛空艇たちが飛び交っている。周りには火の粉が飛び散っている。炎もあちこちで広がって、体中熱くなる。


「ささっと来いよ! 死にたいのか?!」


 ワトスンは慌てて、手を大きく振ってヨクドリアを呼び寄せる。城門の下は大きな川が流れていた。炎で責められてもいいようにお城を川で囲うように設計されている。バシャンと豪快な音を立てて、下に落ちるワトスンに少し不安を覚えたが、後ろには炎が襲ってくる。急がないといけないことはわかっていた。鼻をぎゅっとつまんで、川に飛び込んだ。口を大きく膨らませて、すいすいと平泳ぎでワトソンが泳ぐ方向に向かって行った。川では爆弾でやられた兵士の遺体がたくさん浮かんでいたが、目をつぶって見ないふりをした。


 精神が平静を保てなくなっている。こんな状態でも家族は無事かと自分のことより他人を気にしてしまうヨクドリアだった。

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