第1話 鋼の義手と義足を持つ救済者
レンガの家が立ち並ぶに石畳の街には、群衆が噴水広場に集まっていた。
小上がりのステージには十字架が建てられていた。木材を十字に組み、罪人を磔にするときに用いるものだ。
磔にされた男は両手に左右に開かれ、足もとから火をかけて殺されようとしている。それを群衆はただ見つめることしかできなかった。
政府に逆らえば、同じように処刑されてしまう。ざわざわと騒がしくなる広場へ、ある1人の青年が勇気を振り絞って前に出る。
名前も知らない男に町の長老は止めようとするが、止めきれなかった。
鋼の素材でできた機械を両手両足につけている。義足だろう。
はたから見たら、ロボットと言われてもおかしくない。
まだ機械も発達していない時代に存在するのは、浮いて見える。
軽やかにジャンプをして、磔にされた男を救おうとする。
「何をしている?!」
1人の鎧をまとった兵士が槍を突き出した。さっと飛んで避けた。
太陽の光に鋼が反射して、顔が見えない。
青年の腕の中には磔にされていた男を抱えていた。
「待て!」
「追いかけられるなら追いかけてみろっての」
「あんた、誰なんだ」
磔にされた体中、傷だらけのヨクドリアは抱えられながら、問う。
鋼の義手と義足をつけたロボットの男の名前は
「イラリオだ。今は逃げることが先決だ。けがしてるだろ。つかまってろ」
イラリオは、負傷したヨクドリアを脇に抱えたまま、高くジャンプして、追いかけて来るたくさんの兵士たちから逃げきった。罪人として磔にされて、助かっていいのかと不安になるヨクドリアだった。
ヨクドリアが磔にされた十字架の下は炎が巻きあがっていて、誰もいない十字架が燃えて倒れていた。群衆は見るものが無くなったとそれぞれ散らばって移動した。