特別の定義
「……で?特別ってこれか?」
「あふいっ!あふいって!ふぉれ!…ふぇ?ふぁんて?」
はふはふと、唐揚げを熱そうに頬張りながらきょとんと首を傾げる海月
俺は一つため息をつくとちらりと辺りを見渡す、まばらに駐車されている車、ポツンと設置されてある時代遅れなガシャガシャ、怪しく光り輝いている七の看板…
そう、ここは大衆に大人気、二十四時間いつでも営業のセブンでイレブンな場所である、海月はあの後学校から脱出するや否や、そのまま近くのセブンイレブンにダッシュし、唐揚げ棒を二本買ってきて一本を俺に渡した後、自分の唐揚げ棒にかぶりついたのである
「……いや、これが特別……なのか?ここの唐揚げ結構食べてなかったっけ?」
海月はちっちっちっ、と言いながら人差し指を3回振り、分かってないなーというような表情を浮かべながら、薄い胸を張り唐揚げ棒を頬張る
「ふぁっふぉうのふぁるひにふぁいふいふぁんてふぁんきーのやふこふぉふぁん!」
「なんて?」
「ふぁふぁら!」
「……ごめん、まず一旦飲み込んでくれ」
海月は手で口を隠しながらもぐもぐと唐揚げを咀嚼し、ごくんと飲み込む
「だーかーらー、学校のある日に買い食いするなんてやんきーのやることじゃん、これが特別じゃなくてなんだって言うのさ……!?」
「……いや、別に……買い食いとか割としてる人いると思うぞ……?」
「えっ……まじ?」
「まじ、校則なんて守ってる奴の方が少ないだろ」
「えー……うそだー……私はちゃんと守ってるのに……」
校則なんてものは所詮学校との口約束のようなもので、よっぽど重いものでもなければ罰せられることは少ない、特に買い食いなんて、もし仮に見つかったとしてもせいぜい軽く注意されるのが関の山だろう。海月は納得出来ないようにうーんと唸り
「……まぁいいか!守ってたからこそ今特別感味わえてるわけだしね!」
それはそうだ、もし仮に海月が買い食いをしょっちゅう行っているような人間であったら、そもそも買い食いなんてものは今日の選択肢にすら入ってこなかったであろう
今まで買い食いをしてこなかった優等生の海月であるからこそ、今日を彩るスパイスとして機能しているのである
誰かには普通の、当たり前にやっているようなことが、誰かの特別になりうる。全てに共通するような共通項はなく、あくまで本人が、本人だけが最終的な決定権を持っている
そう考えると、特別って存外難しいものだと思う、例え自分が特別だと思っていようと、相手がそう思ってくれているとは限らない
海月にとっての特別とはなんだろうか、俺は、海月の最期を彩ることが出来る特別を持っているのだろうか……?
思考の海に沈みそうになった瞬間、視界に小さな手が伸びてきて、俺の目の前でひらひらと踊る
はっとして目の前を見ると、心配そうにこちらを覗き込んでくる海月の姿があった




