第二章 出会い
「僕は人間だ。」
やっとのことでそう言ったら、二人は首を振った。そしていきなりトゥイードルダムが自分の手の甲を爪で切った。いきなり何をと思ったが、トゥイードルダムの手の甲につけられた傷から流れ落ちる血に、僕は釘付けになった。なんと不思議な事にトゥイードルダムの血は銀色に淡く光っていた。
「銀色に淡く光る血がバンパイアの証だ。」
「君の指を少し切ってもいいかい?」
トゥイードルディーに聞かれて、僕はうんと頷いて右手を差し出した。血を見せる事で人間だと証明できるのなら、たやすいことだ。
それを受けて、トゥイードルディーは僕の右の中指を少し爪で引っ掻いた。するとそこから出てきた血は、銀色に淡く光っていた。
「どうして!?」
「これで分かってくれたかい?」
手の甲の血を拭いながらトゥイードルダムは言った。僕は驚きと混乱で頭が真っ白になった。僕がバンパイア?あの人間の血を吸うバンパイアだって?でも血が……血……そうだ。僕は血を一度も飲んでいない。バンパイアならば血を飲まないと死ぬのではないか。
いちるの望みをかけて二人に聞く。だが、あっさりと否定されてしまった。
「いや、飲んでいる。血を飲んだ記憶も忘れてしまったのだろう。」
トゥイードルダムに手を貸してと言われて貸すと、血を拭ってくれた。
「僕等と一緒にウールヴルに来てくれるかい?」
トゥイードルディーが願うようにこちらを見ていた。トゥイードルダムも心から心配してこちらを見ている。
「あの、僕、二人の親友とはぐれてしまって、捜しているところなんだ。」
「協力するよ。」
何故か緊張した面持ちでトゥイードルダムは言った。
「本当?」
トゥイードルディーは安心させようと、僕の頭を撫でた。
「言ったでしょう。僕等はアリスの師匠だってさ。弟子が困っているのに、放っておくわけないでしょう。」
「ウールヴルに行こう。仲間も協力してくれる。」
ここがどこだか分からない。何を忘れているのかも分からない。だけど、トゥイードルダムとトゥイードルディーは信用してもいいと思った。本気で心配してくれているのがひしひしと伝わってくるからだ。それにくわえて、バンパイアが映画などに出てくるような、よくある存在じゃなかったのもある。
「うん」
「僕の事はディーって呼んで。」
「僕もダムって呼んで。」
「分かった。よろしくねディーとダム。」